いるべき場所はサーキット
駆動形式は4WDであるものの、ドライブフィールはFRに近く、前輪にもトラクションがかかっている様子が感じられるのはコーナーの脱出時や中速域からの加速時などだった。
せっかく「ニュルブルクリンク北コース市販車最速」にして「ランボルギーニV12史上最高出力」であり「Jota(イオタ)」の「J」を冠したアヴェンタドールSVJに乗っているのに、「走らせている」というよりは「動かしている」という悶々とした気持ちのまま高速道路に吸い込まれていったら、状況が一変した。
6.5L V12自然吸気ユニットは、最高出力770ps/最大トルク720Nmを発揮。0→100km/h加速は2.8秒、最高速度は350km/hオーバーというハイパフォーマンスを発揮する。
速度を上げていくにつれ、ドライバーの入力に対するクルマの反応はまさに打てば響く様相になり、重さよりも軽さが前面に出てきて、それまでは別々の動きだった加減速や操舵やシフトチェンジが溶け合ってひとつの連続的所作へと変貌したのである。
カーボンとアルカンターラでスポーティに仕立てられるコクピット。TFTディスプレイ内にはランボルギーニが特許を有するALA(アクティブ・エアロダイナミクス・システム)機能のステータスが表示される。
何よりも驚いたのはハンドリングの妙だ。ステアリングの操舵角よりもはるかに大きく鋭くクルマがイン側へ向かって切り込んでいく。後輪操舵のおかげであることに疑う余地はないのだけれど、カーブの曲率を問わずほとんどの場面でほぼニュートラルステアを保つ。それでも旋回中に挙動がちょっと安定していないと思ったら、ステアリングではなくスロットルペダルのコントロールでいとも簡単に修正できる。また、ロール剛性が極めて高いから、路面にぴたりと張り付いた姿勢は直進時でも旋回時でもほとんど変わらない。それでも乗り心地は悪くなく(「ストラーダ」を選択時)、プッシュロッド式サスペンションがきちんと動いている様子は窺える。
リアタイヤは355/25ZR21という超扁平サイズ。フロントは255/30ZR20でピレリPゼロコルサを履く。
市街地から高速道路へと舞台を変えたアヴェンタドールSVJは、まるで硬くなっていた筋肉がストレッチなどの軽い運動により徐々にほぐされていき、しなやかで力強い動きができるアスリートのようだった。そしてこのアスリートはとんでもない俊足の持ち主でもある。クルマは抜群の安定感を示しているからちっとも怖くないはずなのに、血の気が一気に引くような猛烈な加速を示すので、空恐ろしくなって思わずすぐにスロットルペダルを戻してしまった。
「ALA2.0」はフロントのスプリッターや前後のフラップを状況に応じて電子制御することで、最適なダウンフォースや空気の流れを導き出す。
このクルマがいるべき場所は日本の公道ではなくサーキットである。おかげで、電子制御式空力システム「ALA2.0」の効果がほとんど感じられなかったのが残念でならない。