清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 88 SEASON.9:快適性と安全性を究めた最上の“S”、ドライバーズカーとして躍動する“7”
メルセデス・ベンツ S560 4MATIC LONG vs BMW M760Li xDrive/Test02:ウェット旋回ブレーキテスト
●テストの「方法」と「狙い」:ドライ路面からウェット路面に100km/h(±2%)で進入、半径40Rのカーブをフルブレーキングしながら曲がる。路面はハイドロプレーニングよりもウェットグリップが問われる水深5mmに設定。ABSやタイヤを含めたクルマの総合的なブレーキ性能と、シャシーの旋回性能(ラインが外に膨らむクルマは危険)をみる。
メルセデス・ベンツ S560 4マチック ロング VS BMW M760Li Xドライブ (ウェット旋回ブレーキ)
タイヤコンデション
MERCEDES-BENZ S560 4MATIC LONG
乗り心地を重視し、18インチ/50扁平のコンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5を採用。タイヤ交換時、ユーザー的には経済的にありがたいし、快適性にも大きく貢献している。取材車両は8分山の状態。
BMW M760Li xDrive

スポーティなブリヂストン・ポテンザS001の20インチを履く。610ps/800Nmのパワーを受け止めるため、リアにはワイドトレッドの20扁平をセットする。6分山だったため、ウェットではやや不利であった。
ウェットでも揺るがない旋回性能&制動距離40m台を記録した“S”

MERCEDES-BENZ S560 4MATIC LONG
●制動距離:47.0m ★★★★★
長年のテストを通じて、ウェット旋回ブレーキは欧州車が得意としてきたテストであり、日本車は不得意としてきた項目だ。安定性と操縦性がウェット路面でも、高度にバランスよく機能する必要があり、さすがに2.2トンを超えるSクラスに大きな期待をしていなかったが、1回目のテストからポルシェ並みのストッピングパワーを示したのは衝撃的だった。しかも操舵の正確性はスポーツカーを凌駕し、正確無比のライントレース性は実に見事で、故意にステアリングを切り込むとグイグイとノーズが内側に入る。AWDであってもアンダーステアが少なく、Sクラスの想像を超えた進化に驚いた。
BMW M760Li xDrive
●制動距離:51.5m ★★★★☆
V12エンジンのためSクラスよりも車重が重く、タイヤ溝がSクラスの7mmに対して5mm程度だったが、ネガティブな要素を差し引いても結果は悪くなかった。ABSや電子制御AWDの緻密さだけでなく、ボディやサスペンションの基本性能も高いと感じた。きめ細かいブレーキの液圧の配分に加えて、タイヤが持っている能力を見事に使いきっている。Sクラスよりもホイールベースは長いが、ステアリングのレスポンスはかなりシャープで、大きな車体を感じさせない俊敏性を持っていた。電動化に加えて、今後自動運転の時代になるからこそ、シャシーの基本性能の重要性は増していくだろう。
