国内試乗

【国内試乗】「ジャガー Iペイス」ジャガー初のフルバッテリーBEVで孟秋の九州を駆け抜ける!

ジャガー初のフルバッテリー電気自動車、Iペイスで九州を走ってみませんか? という嬉しいお誘いをいただいた。走行ルートは熊本~福岡の往復。道中には阿蘇山を見ながらのワインディングとサーキット走行が用意されていた。

BEVであってもジャガーライドは健在である

ジャガーIペイスの試乗会が九州で開催されたのとちょうど同じ頃、東京ではメルセデス・ベンツがEQCの試乗会をやっていたし、欧州ではポルシェがタイカンをメディアに乗せていた。いよいよ電気自動車(=BEVやEV)が、私たちの日常に本格的に入り込んでくる時代が到来した。しかし”到来”したからといってすぐに”普及”するとは限らない。現時点では、BEVは開発よりも普及のほうがずっと難しい局面を迎えている。

日本の急速充電規格「CHAdeMO」に対応しているので、全国どこでも充電が可能。0%から80%までバッテリーを充電する際、50kWの場合は約85分、0%から100%まで充電する際、最大7kWのAC普通充電の場合は約12.6時間で充電が可能となる。

この難題は、マクロ的観点では電気の作り方、ミクロ的観点では充電時間のふたつとなる。そもそも地球温暖化対策やCO2排出量削減などが目的で、国や地域が規制を強化し、メーカーはこれに対応するべくHVやPHEVやBEVの開発を進めてきた。電動化されたクルマを動かすためにさらに多くの電力が必要となるが、そのためにCO2を排出してしまっては本末転倒であり、自然エネルギーを活用した発電が期待されるものの、安定性などの問題から(特に日本では)いまだに広く伝播していない。

明るくモダンで広々としたインテリアには、タッチスクリーンで操作可能なインフォテインメントシステム「Touch Pro Duo」をジャガーとして初採用。室内に加工されたエンジン音のサウンドを響かせるアクティブ・サウンド・デザインといったユニークな機能も搭載。

BEVの充電時間はざっくりと急速充電で約60分、普通充電で約12時間が一般的目安となっている。5分足らずで満タンになる内燃機と比べると、依然として利便性は高くない。今回の試乗会でも、運営スタッフは福岡市内の急速充電スポットを行ったり来たりしながら、夜を徹して10数台ものIペイスの充電に奔走してくださった。
こうしたBEVを取り巻くあれやこれやをいったん置いといて、ジャガーIペイスというクルマの力量をあらためてはかってみた。試乗ルートは熊本空港と福岡市内の往復と、嬉しいことに道中にはサーキット走行も用意されていた。

優れたパッケージであれば、クルマは面白く楽しくなる

試乗車には22インチと20インチのタイヤを履いた仕様があったが、オプションのエアサスペンションも装着されていたので、22インチでも一般道の乗り心地は悪くない。20インチよりばね下の重さは明確に感じるものの、許容範囲に収まる乗り心地を示す。高速道路では交通の流れへの順応や追い越しなどで、瞬発力のあるパワートレインのほうが使い勝手がいい。その点、BEV特有の素早いトルクの立ち上がりと、それを4輪に瞬時に伝えてしっかりとしたトラクションを確保する4WDシステムにより、動力性能の面でストレスがまったく溜まらない。そもそも内燃機搭載車でも、ジャガーは全般的にパワートレインのレスポンスがよく、BEVになってもその部分に関しては大きく変わらない。

Iペイスは90kWhリチウムイオンバッテリーを搭載し、WLTCモードで438kmという航続距離を実現。前後2基のモーターでフロントとリアのホイールをそれぞれ駆動させるAWDシステムを採用する。各モーターは路面状況に合わせて瞬時に4輪すべてに正確なトルクを配分してくれる。

ジャガーのハンドリングもまたレスポンスに優れるもので、操舵初期から繊細に反応するゲインの高さが特徴のひとつ。いっぽうで、場面によっては接地感が若干足りず、ナーバスな運転を余儀なくされることもある。これを乗りこなすのがジャガーの魅力だと捉える方もいるので、欠点と呼べるほどではない。Iペイスでサーキットを走ると、それが大幅に軽減されていると実感する。ヨー慣性モーメントは小さく接地感は高く、ナーバスな部分は影を潜め、安心してドライブできるのである。

先進のダブルウイッシュボーン式フロントサスペンション、インテグラルリンク式リアサスペンションを備え、サーキットでも俊敏なハンドリングと卓越した乗り心地を提供する。

Iペイスは重心が低く前後のオーバーハングが短く重量配分も適正になっていて、これが正確で俊敏で安定したハンドリングを実現しているのだけれど、いずれも優れた操縦性を成立させるに不可欠な要件である。詰まるところ、パワートレインが内燃機であろうとBEVであろうと、物理の神様に逆らわない優れたパッケージであれば、クルマは面白く楽しくなるのである。

【Specification】JAGUAR I-PACE HSE/ジャガー Iペイス
■全長×全幅×全高=4695×1895×1565mm
■ホイールベース=2990mm
■車両重量=2230kg
■バッテリー種類=リチウムイオン
■バッテリー総電圧=388.8V
■バッテリー総電力量=90kw
■最高出力=400ps(294kw)/4250-5000
■最大トルク=696Nm(70.9kg-m)/1000-4000
■航続距離=438km
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:インテグラルリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/50R20:245/50R20
■車両本体価格(税込)=11,830,000円

お問い合わせ
ジャガー・ランドローバー・ジャパン 0120-050-689

フォト=ジャガー・ランドローバー・ジャパン ル・ボラン2019年12月号より転載

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