国内試乗

【国内試乗】「BMW X7」最上級のもてなしは、セダンからSUVの時代!?

最上位SUVであっても「走り」へと誘いかける

X7は、乗り心地のしなやかさにも驚かされる。4輪エアサスペンションを標準装備し、オプションのエグゼクティブ・ドライブ・プロフェッショナルを組み合わせていたためもある。カメラにより路面状態を検出し、ダンパーの減衰力などを最適制御する機能だ。

路面を横断する大きなうねり通過時は、サスペンションは入力をフワッといなしてくれる。そのままでは縦揺れが残りそうだが、次の瞬間にはスッとボディの動きを抑え込んでしまう。衝撃といえるような強い入力に対しても、最終的にはボディが振動を減衰する。
エグゼクティブ・ドライブ・プロフェッショナルにはスタビライザーの機能を可変制御するアクティブ・スタビライザーが含まれるので、直進状態では効きを最小化にして左右輪の干渉を回避。片輪ずつ不連続に入力があっても、ボディの横揺れが発生しにくい。座面が高いだけに横揺れの影響が大きくなりがちだが、そうした不快感とは無縁でいられる。こうした快適性は、7シリーズを超えBMWでは史上最高レベルだ。

大型サイズのキドニーグリルと、地面と水平な切れ長のヘッドライトが逞しさを演出。

それでいて、スポーティな一面も備える。ダンパーやスタビライザーの可変制御により、コーナー進入時は手応えがスッキリと軽めなステアリングを切り込むのと向きの変わり具合が完全に一致する正確な応答性を実現。その際のロール感はほとんどないが、サスペンションのしなやかなストロークは保たれたままなのでコーナリング中に荒れた路面を通過しても余計な姿勢変化は起きない。

ラゲッジ容量は、3列目シートを使用した状態で326L、3列目シートバックを倒した状態で750L、そして2列目シートまで倒せば最大で2120Lまで拡張する。

さすがに、コーナー脱出時に早めのタイミングでアクセルを踏み込むと狙った走行ラインよりも外側にふくらむことはある。ただ、挙動の変化が分かりやすいため自然な感覚でアクセルを戻して、少しステアリングを切り足せば元の走行ラインに復帰可能だ。アクセル操作を誤らなければ、コーナーが連続する場面でステアリングを切り返しても反応が遅れることがない。2440kgの車重を忘れるほど、コーナリングは軽やかだ。

xDrive35dが積む3Lの直列6気筒ターボディーゼルも、スポーティに走りたいという期待に応えてくれる。メーター表示をトルクモニターに切り替えると2000rpmを超えるとアクセルを踏み込めば即座に最大トルクの620Nmが発揮されることが分かり、迫力ある加速を開始。そのままアクセルを踏み続ければ265psを発揮する4000rpmを超えてもパワーの頭打ち感がなく、ガソリンエンジンのような快音を響かせながら5000rpmに迫る勢いで伸びやかに加速する。

そこまでエンジンを引っ張らなくても、最大トルクの発生回転数がやや高めなので日常的な場面でアクセルを踏み足す程度でも力強さの盛り上がりが実感できる。それだけに、場面が許せば自らの意思でスポーティな走りが楽しみたくなる。X7でも、BMWらしく巧みな誘いかけがあるのだ。

スタンダードモデル以外、シート表皮にはメリノレザーが標準装備。セカンドシートは6人乗り仕様ならキャプテンシート、7人乗りならベンチシートが選べる。

その一方で、周囲の流れに合わせて走る場面ならアクセルの踏み加減はペダルに足を乗せる程度で十分だ。トルクモニターによると1500rpmで300Nmを超えているので、力強さがあふれ出すほどではないにせよ余裕は確かめられる。高速道路では、100km/hで8速1300rpmしか回っていない。エンジンは優れた静粛性を保ち、大柄なボディが空気の壁を盛大に切り裂いている割には風切り音も気にならない。

BMWのXモデルでは最後発にして頂点に位置づけられるX7、競合モデルに対するアドバンテージも予想以上の大きかった。X7と立場を脅かすのは、もはやロールス・ロイスのカリナンくらいということになりそうだ。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2020年1月号より転載
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