その昔、SUVといえば4WDでヘビーデューティなイメージ=大きいクルマだったが、いまや、その人気はコンパクトクラスにも派生し、次々と個性的なモデルが登場している。本格的なオフロード性能はなくとも、その代わりにコンパクトならではの魅力が満載ですから!
頼もしいし、楽しいドイツの最新ニューカマー=Tクロス
あらためて、クルマっていいなあと思う今日この頃である。だって、いま電車やバスのなかでカラせきひとつしようものなら、一斉にガン見されますから。その点、クルマは自分だけの空間を占有して、どこへでも走って行ける。なかでもSUVは、より自由に使えて、より自由に走れる。さらにそのなかでもいちばんお手頃で現実的なのがコンパクトSUVである。
Tクロスはこのクラスの最新ニューカマーだ。ポロ級のSUV。ティグアンと違って4WDはない。かつてクロスポロというクルマがあったが、今度はすっかり別モデルとして独立した。それだけSUVの地位が上がったということだろう。国内発売は2020年1月だが発表はその2カ月前。ディーラーにまだクルマはなかったのに、その間1800台もの受注があったという。待たれていたクルマなのだ。
乗るとたしかにポロとは別物である。開閉時のドアの重みからしてプレミアム感が高い。プレーンなところが魅力のポロに対して、けっこうな高級感も備えるのがTクロスである。
パワートレインはポロと同じ999cc3気筒ターボ+7段DSG。100kg以上重くなった車重(1270kg)に対処して、出力とトルクは1-2割増強されている。街中ではターボがグイッと力強くスピードに乗せてくれる。一方、4000rpm以上回すと、3気筒らしい軽やかなビートが小気味よく、気持ちいい。
フラットな舗装路での乗り心地は実になめらかだが、荒れた路面だと多少の突き上げもくる。しかしサスペンションのフトコロは深く、大入力になればなるほど強い。デコボコやうねりの多いワインディングロードをハイペースで走ると、頼もしいし、楽しい。高速道路でのスタビリティも高い。
ひとつだけ気になったのは、テールゲートだ。閉めるとき、160cmくらいの人だと内側の持ち手に手が届かない。それを除くと、すべてに偏差値の高いコンパクトSUVである。しかも試乗車の“1st”は299万円。この価格でこのクォリティのSUVを提供できるのは、さすがフォルクスワーゲンである。ポロを買いに来たお客さんをだいぶ奪いそうだ。