試乗記

【比較試乗】「メルセデス・ベンツGLS vs BMW X7」7シーターはSUVの時代へ

実用然とした高級7シーターといえば、国産ミニバンの独壇場であったが、独プレミアムツートップのフラッグシップSUVがその常識を覆そうとしている。本格的な3列目シートを携えた上で、高い居住性やシートアクセス性を実現したGLSとX7は、 7シーターの新潮流を生み出した。

最上位SUVで生まれた新たなガチライバル

ラグジュアリークラスのクルマといえば、高いプレステージ性が自慢のサルーンが真っ先に思い浮かぶが、自らステアリングを握り、仕事もプライベートもアクティブに生きる人には、プレミアムブランドが世に送り出すSUVの方がより魅力を感じるのではないだろうか。しかもラグジュアリーサルーンとは異なり、ラグジュアリーSUVには3列シートを備えるモデルもあり、大切な家族や仲間と楽しい時間を過ごすには打ってつけのクルマといえる。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC

メルセデス・ベンツやBMWも、それぞれのSUVラインナップにプレステージ性を究めたモデルを用意している。メルセデス・ベンツGLSとBMW X7だ。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/3L直6ディーゼルエンジン「OM656」を搭載。

GLSは、メルセデスのSUVであることを示す「GL」に、クラスを表す「S」を組み合わせた名前からのわかるように、同社のSUVのフラッグシップモデルだ。この3月に発売されたばかりの最新型は、「GL」として登場した初代から数えて3代目にあたり、全長5207mmの堂々たるサイズのボディに、Sensual Purityというデザインコンセプトに則った面を強調したデザインや、12.3インチワイドディスプレイを2つ横に並べた先進的なデザインのコクピットなど、最新のメルセデス・デザインを前面に押し出すことで、強い存在感を放っている。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE

一方のX7は、BMWのSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)の新たなフラッグシップモデルとして2018年にデビューし、2019年に日本に上陸している。5165mmの全長は、GLSよりもわずかに短いものの、水平なラインが際立つボディや、巨大な縦型のキドニーグリルなどのおかげで、GLSを凌ぐ存在感だ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/3L直6ディーゼルエンジン「B57D30A」を搭載。

いずれも3列シートを標準装備し、直列6気筒ディーゼルターボとV8ガソリンターボを用意しているが、今回はディーゼル仕様のGLS400d 4MATICとX7 xDrive 35dを引っ張りだし、その走りやパッケージングを検証することにする。

7シーターであっても上質で力強い走りを披露

まずはGLSのコクピットへ。ドライバーの眼前に広がる大型のディスプレイや、タッチコントロール機能が備わるステアリングホイールなどは、いまはすっかりおなじみだが、センターコンソールに並ぶ4個の四角いエアベントや素材の美しさが際立つウッドパネルなど、いたるところにフラッグシップモデルらしい上質さが感じられる。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC

搭載されるエンジンは、最高出力330ps、最大トルク700Nmを誇る3L直列6気筒ディーゼルターボで、9速オートマチックを介して4輪を駆動する。さすがにこのクラスのSUVともなると車両重量は2.5トンを超え、このGLSは2590kgにも及ぶ。しかし、わずか1200rpmから最大トルクを発揮するこのエンジンは発進から余裕ある加速を見せ、常用する低回転域でも良好なレスポンスのおかげで、その車重を忘れさせてくれる。一方、必要とあらば4500rpmあたりまで力強く回転数を上げるなど、スポーティな一面も兼ね備えている。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/48V電気システムを動力源に使用したアクティブサスペンション「E-ACTIVE BODY CONTROL」はオプションで装備可能。

一般道では多少ロール方向の揺れが気になることがあるが、乗り心地はマイルドで、速度が上がればフラット感はまずまずだ。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC

X7のコクピットは、GLSほど吹っ切れていないものの、セレクトレバーやスタート・ストップスイッチなどに使われるクリスタルや、ツートーンのレザーシートなど、ラグジャリーSUVとしての演出は、なかなか見事だ。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/2列目は3人掛けのベンチシートで、スライドは左右独立で、一番後ろなら足が組めるほど余裕がある。

X7のエンジンも3L直列6気筒ディーゼルターボだが、最高出力265ps、最大トルク620Nmの数字はGLSに比べて少し控えめである。車両重量は2500kgとGLSよりも軽く、こちらも発進からスムーズな加速を見せてくれるし、アクセルペダルを深く踏み込めば強力なトルクが4000rpm超まで続く。ただ、直接乗り比べるとGLSのほうがより力強い印象だ。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/GLSの3列目は左右独立のシート。3列目は前席下に爪先がすっぽり入り楽な姿勢が取れる。

一方、動きの軽快さはX7のほうが上手で、高速走行時のフラットさやコーナーでの安定感はBMWの面目躍如といったところだ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE

パッケージングは、ボディサイズに余裕がある分、GLS、X7ともに2列目はもちろん、3列目でも大人がさほど窮屈せずに座れるだけのスペースが確保される。厚みのあるクッションのおかげで座り心地もまずまずだ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/オプションの「エグゼクティブ・ドライブ・プロフェッショナル」を装備すればスタビライザーを可変制御でき、快適性が向上する。

より広いのがGLSで、2列目はスライド位置によっては足が組めるほどニールームが確保される。3列目は前席の下に爪先がすっぽり入る分、ラクな姿勢が取れる。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE

一方、X7の2列目は標準の3人掛けベンチシートに加えて、オプションで 「コンフォートシート」と呼ばれるセパレートシート仕様を選ぶことが可能だ。試乗車はそのコンフォートシートで、ゆったりと座ることができるうえ、3列目へアクセスするために、2列目を操作する必要がないのは便利だ。乗車定員は1名減って6名になるものの、その使い勝手の良さはとても魅力的だ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/2列目シートは標準のベンチシートに加えて、オプションでセパレートタイプの「コンフォートシート」を選ぶことが可能。ラグジュアリーな雰囲気が堪能できるうえ、3列目へのアクセスも楽。乗車定員は1名減るがおすすめのオプション。

ラゲッジスペースは、3列目シート使用時こそさほど広くはないが、シートを収納することでより大きな収納スペースが手に入る。ここでもGLSのほうが奥行き、幅ともに余裕がある。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/3列目シート

スペースを優先させるならGLS、3列目を使う機会が多いならX7のコンフォートシート仕様、という選び方もあるだろうが、どちらもラグジュアリークラスにふさわしい上質さと力強い走りが楽しめるのは確か、コンパクトカーの世界だけでなく、ラグジュアリークラスにもSUVの人気は広がりそうだ。

【Specification】MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC/3列目のシートを使用している状態でも約55cmの奥行きが確保され、3列目を倒せば約120cmまで拡大が可能。横幅も120cmと、X7に比べて10cmほど余裕があり、より広いラゲッジスペースを必要とする人には嬉しい。

MERCEDES-BENZ GLS 400d 4MATIC

■全長×全幅×全高=5207×1956×1823mm
■ホイールベース=3135mm
■車両重量=2590kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ターボ/2924cc
■最高出力=330ps(243kW)/3600-4000rpm
■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/1200-3000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=:Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=275/50R20:275/50R20
■車両本体価格(税込)=12,630,000円
お問い合わせ
メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610

【Specification】BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE/上下分割式のテールゲートを採用。下の部分を倒すことでフロアとの段差は解消可能。3列目のシートを使用している状態では荷室の奥行きは45cmと短めだが、3列目を倒すことで約115cmまで拡大可能だ。

BMW X7 xDrive35d DESIGN PURE EXCELLENCE

■全長×全幅×全高=5165×2000×1835mm
■ホイールベース=3105mm
■車両重量=2440kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ターボ/2992cc
■最高出力=265ps(195kw)/4000rpm
■最大トルク=620Nm(63.2kg-m)/2000-2500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=285/45R21: 285/45R21
■車両本体価格(税込)=12,350,000円
お問い合わせ
BMWジャパン 0120-269-437

フォト=安井宏充/H.Yasui (Weekend.) ルボラン2020年8月号より転載

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