
別記事のラングラーとは異なるコースが作られたゲレンデでテスト。グランドチェロキーは、日本仕様にはトレイルホーク・グレードの設定がないため、「リミテッド」を投入し、コンパスはマッドテレインタイヤの装着が間に合わなく、他の3台よりも難易度の低いコースでテストした。
プレミアムなグラチェロも類稀な走破性を発揮
原初のウィリス・ジープの血を引くラングラーが今日のジープの精神的中核といえる。一方その脇を固める7スロットルグリルを持つ一連のモデルたちは、今日のジープをクロスオーバーSUVの一大ブランドとして完成させる重責を担っている。グランドチェロキーとチェロキー、コンパス、そして末っ子のレネゲードである。
ジープ一族のラグジュアリーな長兄といえばグランドチェロキーである。現行型は2度マイナーチェンジを受け、熟成しきっている。
だが驚くべきはBMW X5やメルセデス・ベンツGLEといったライバルがひしめき合う激戦区で“グラチェロ”がトップの販売台数を記録している点だろう。その人気を証明するように据置型ローンの3年後の上限金額(つまり残存価値だ)も55%に達している。「アメ車もいいけど下取りが……」というお決まりのエクスキューズがもはや通用しないのである。

JEEP GRAND CHEROKEE LIMITED/搭載する「クォドラトラックII 4×4」は、センサーがタイヤのスリップを検知すると、トラクションを保持しているアクスルに対して発生トルクの100%を即座に伝達する。
試乗したグランドチェロキーはリミテッドだった。今回の試乗車で唯一「トレイルレイテッド」のバッヂが付かないモデルだったが、それでもオフロードのための装備はひと通り揃っている。クォドラトラックⅡ4×4システムはもちろんだが、エアサス装備なので車高を可変できるし、4WD LOWモードやヒルディセントコントロール(HDC)もセレクテレインシステムに含まれている。
試乗ステージが夏のスキー場というと爽やかに聞こえるが、言うなれば雑草が生い茂った急斜面に過ぎない。おそらくクルマも無傷ではいられないはずだが、言い出しっぺのFCAジャパンのポンタス・ヘグストロム社長自身がラングラーのナンバープレートをへし曲げて帰ってきたのを見て、少しホッとさせられた。しかし、今回は数日前から降り続く豪雨により水分たっぷり。コース設定をしたプロが「ちょっと不安」と漏らすほどのコンディションだったのだ。
グランドチェロキーに乗り込むと、インテリアは都会的で精緻な印象が強く、オフロードへのコースインは多少気が引けた。だがダートの登坂路に入ってみると、ボディサイズを感じさせない見切りの良さに感心させられた。小石交じりの上りはオンロードと同じくセレクテレインシステムをAUTOにしているだけで走破できた。だがいよいよ山頂に到着して下を見下ろすと、自分のドラテクで何とかなる気がしなかったので、車高を上げ、4WD LOWとHDCに頼ることにした。車体後方からパンッパンッとリアのブレーキをつまむ音がして、それでも時おりズズッと車体が滑って斜めになりそうになる。フットブレーキではリアの制動だけ効かせるようなことはできないので、今回はまさにHDCの独断場ということになる。
最もラグジュアリーなグランドチェロキーで何とかコースを走破できたので少し自信がついた、というか「ジープ本物じゃねぇか!」と唸らされたのである。
ジープ全てに共通するのは本物を追求していること
グランドチェロキーの次はチェロキーだった。グレードはトレイルホークなので、当然そのフロントフェンダー上にはトレイルレイテッドのバッジが付いている。トレイルホーク専用の無塗装のバンパーやオーバーフェンダーのおかげでオフロードタイヤとのマッチングもいい。今回のコースに欠かせないHDCや4WD LOCK(リアデフロック機構)、アンダーガードの数々もチェロキーではトレイルホークのみの装備となる。
現行のチェロキーは2013年デビューで、決して新しいとは言えない。けれど今から2年前に行なわれたマイナーチェンジの際、それまで少し若向きで丸みを帯びていたフロントマスクをグランドチェロキー風の貫禄のあるものに変えたことで、今日でも瑞々しさが保たれている。
またこの時の改変により、3.2L・V6エンジンが最新のダウンサイジングユニットである2Lターボに交代。9速ATやオンデマンドの4駆システムと融合することでオンロードにおける伸びやかな走りも手に入れている。ちなみに別体の副変速機は付いておらず、9速ギアの1速目のレシオだけがガツンと低く、ローモード専用となる。つまり普段は2速発進となる実に賢いシステムを採用しているのだ。

JEEP CHEROKEE TRAILHAWK/「ジープ・アクティブドライブロック」を搭載。2速パワートランスファーユニット(PTU)が備わり、4×4 ローレンジ(減速比2.92対1)と優秀なトルクマネジメントを実現。
件の直滑降では4WD LOW、4WD LOCK、HDCというセレクテレインをフル動員して挑んだ。だが重量級のグラチェロと違い、下りで少しペースを上げたくなるくらいチェロキーの走りには余裕があった。草原の下りでカウンターステアを当てる喜び! そんな想像もしないドライビングファンを提供してくれたのである。
優等生的なスタイリングのチェロキーと比べると、イタリア系の末っ子、レネゲード・トレイルホークは全身から溢れ出る遊び心を隠そうとしない。兄弟の中で最もコンパクトなこのクルマでオフロードに分け入ると、さらに険しい道はないかと探したくなる。図抜けたオフロードの走破性はラングラーに近いのだ。例えば今回の直滑降を逆に上れと言われたら、それが可能なのはレネゲードだけだろう。
性格的にもサイズ的にもチェロキーとレネゲードのちょうど中間、それこそコンパスというクルマの存在理由だと思う。だがオフロードに立ち向かう場合、トレイルホークだけが4WDモデルであることは理解しておくべきだろう。9速ATで横置きパワートレインはレネゲードのそれに近いがエンジンは2.4Lの自然吸気なので、1.4Lターボのレネゲードより走りに落ち着きが感じられた。おそらくオフロードでも自然吸気のパワー特性は有利に働くはず。

JEEP COMPASS TRAILHAWK/搭載する「ジープ・アクティブドライブ4×4システム」は、リアアクスル分離機能付きで、オンロードでは前輪駆動のみで走行でき燃費性能も高い。車両の傾きも自動で調整する。
オフロード由来のモデルは一部の熱狂的なファンに支えられているイメージが強い。だがジープはとっくにそのマイナーな殻を破っている。何しろ今年の上半期、日本市場における輸入車のマーケットシェア率でFCAジャパンは10%越えを達成したのだ。その原動力がジープであることは言うまでもない。だが今回、タフなオフロードコースでその走破性を試して分かったのは、どのモデルも市場をよく見て導入されているというより、本物のジープとして作り込まれているという点だった。自らの精神に忠実、それが今日のジープ人気を支えているのである。
【Specification】JEEP GRAND CHEROKEE LIMITED
■全長×全幅×全高=4835×1935×1805mm
■ホイールベース=2915mm
■車両重量=2200kg
■エンジン種類/排気量=V6 DOHC24V/3604cc
■最高出力=290ps(213kW)/6400rpm
■最大トルク=347Nm(35.4kg-m)/4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=265/60R18:265/60R18
■車両本体価格(税込)=6,590,000円
【Specification】JEEP CHEROKEE TRAILHAWK
■全長×全幅×全高=4665×1905×1740mm
■ホイールベース=2720mm
■車両重量=1910kg
■エンジン種類/排気量=直4 DOHC16V+ターボ/1995cc
■最高出力=272ps(200kW)/5250rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/3000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=マクファーソン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=ディスク:ディスク
■タイヤサイズ=245/65R17:245/65R17
■車両本体価格(税込)=4,990,000円
【Specification】JEEP COMPASS TRAILHAWK
■全長×全幅×全高=4410×1810×1665mm
■ホイールベース=2635mm
■車両重量=1630kg
■エンジン種類/排気量=直4 DOHC16V/2359cc
■最高出力=175ps(129kW)/6400rpm
■最大トルク=229Nm(23.4kg-m)/3900rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=マクファーソン:マクファーソン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=225/60R17:225/60R17
■車両本体価格(税込)=4,220,000円
【Specification】JEEP RENEGADE TRAILHAWK
■全長×全幅×全高=4255×1805×1725mm
■ホイールベース=2570mm
■車両重量=1570kg
■エンジン種類/排気量=直4 DOHC16V+ターボ/1331cc
■最高出力=179ps(132kW)/5750rpm
■最大トルク=270Nm(27.5kg-m)/1850rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=マクファーソン:マクファーソン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=215/60R17:215/60R17
■車両本体価格(税込)=3,870,000円
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FCAジャパン 0120-712-812