
2018年に発売されたJL型ラングラー。現行輸入車の本格オフローダーの中では、ライバル不在であったが、ついに新型ディフェンダーという好敵手が出現。秋雨が降りしきるある朝、富士山の麓に広がる未舗装路へと繰り出し撮影を敢行。そしてオンロードを中心に2台の個性を探った!
新型ディフェンダーの新解釈が精彩を放つ!
ランドローバー・ディフェンダーとジープ・ラングラーには驚くほどよく似た点とまったく異なる点の双方がある。
似ているのはどちらもオフロード性能にかけては数あるSUVのなかで最高峰に位置していること。そして長い歴史を有していることも共通点として挙げられる。
しかし、半世紀を優に超す歳月を経て、現在の2台はまったく異なる地平上に立っている。それを端的に述べれば、ラングラーは長い伝統のうえに改良を重ねて現行モデルに辿り着いたが、ディフェンダーは今回のモデルチェンジで立ち位置そのものを現代流に再解釈。従来型から受け継いだのはその思想だけで、メカニズムもデザインも完全に刷新されている。

JEEP WRANGLER UNLIMITED RUBICON/オフロードタイヤとは群を抜いて相性が良い。装着タイヤはBFグッドリッチ・マッドテレインT/A KM3(LT255/75R17)。ロードクリアランスは27.4cm、最大渡河水深は約76cmとなる。
たとえばラングラーは現行型もラダーフレーム+前後リジッドアクスルという基本構成を踏襲。ギア比のハイとローを選択するトランスファー切り替えやデフロックはマニュアルで操作する。
一方、ディフェンダーのボディ構成はラダーフレームからアルミモノコックへ一気に進化。トランスファー切り替えはプッシュスイッチで操作するほか、デフロックにいたっては個別に設定できず、路面ごとに用意されたモード切り替えに連動する形式。つまり、2台の間にはMTとDCTほどの違いがあるのだ。
だからといって、ディフェンダーがすべての面でラングラーを上回っているわけではなく、たとえばクロカンのスペシャリストであれば使い慣れたラングラーのシステムを好むケースだってあるだろう。つまり、ラングラーとディフェンダーの違いは優劣ではなく、思想が異なっているのである。
そうした違いは当然のことながら乗り味にも現れている。F:ダブルウイッシュボーン、R:マルチリンクの4輪独立懸架を採用するディフェンダーは、やや硬めの乗り心地ながら足回りがバタつくこともなく、ボディが強固なこともあって驚くほど快適。対するラングラーは、前後ともコイル+リジッド式ながらハーシュネスはディフェンダー並みに軽く、ゴツゴツ感はごく弱い。これには本格的なオフロード用タイヤを履いていたことも関係しているはず。いっぽうでタイヤが大きくストロークする状況で足下がばたつくのは致し方ないところ。その症状は軽いとはいえ、快適性はディフェンダーが一枚上手だ。
オンロードにおけるディフェンダーのハンドリングはクロカン4WDのネガをまるで感じさせないほど完成度が高い。ステアリングの切り始めから正確な反応を示してくれるし、レスポンスの遅れも認められない。さらに驚くべきはステアリングインフォメーションが豊富なことで、おかげで雨のワインディングロードを攻めても不安とは思わなかった。
一方のラングラーも意外なほどの健闘を示し、絶対的なコーナリングスピードはディフェンダーと遜色がなかった。ただし、前述のとおりオフロードタイヤを履いている影響でコーナー進入時にトレッドがよれる感触があり、コーナリングの姿勢が落ち着くまでにはわずかな時間を要した。もっとも、リジッドアクスルを採用しながら、ステアリングの正確さと乗り心地をここまで高い次元でバランスさせたことは驚異的としかいいようがない。80年近いジープの歴史は伊達ではないのだ。
手動によるオフロード設定が“ 本気”を物語る
「前後輪ディファレンシャルロック」と「電子制御式フロントスウェイバーディスコネクトシステム」のスイッチ、専用ダクト付きボンネットなどがルビコンの専用ディテール。荷室容量は通常時で533L、後席を倒した状態で1044L(※FCAイタリア公表数値)。
2台を乗り比べて分かった“本物”へのアプローチの差
ディフェンダーは直4の2Lガソリンターボを積むが、その動力性能には舌を巻くしかなかった。2.2トンの車重をものともせず、どんな急坂でも楽々と登っていくさまは圧巻。しかもターボラグを感じさせないうえにパワーのリニリティが高いので実に扱い易い。高速燃費がおよそ10km/Lだったことを含め、まったく不満を覚えなかった。
ただし、動力性能ではラングラーがディフェンダーを凌ぐ。ラングラーに積まれるV6の3.6Lガソリンエンジンの最大トルクは347Nmで、ディフェンダーの400Nmには一歩及ばないのに、ディフェンダーよりも200kg近く軽い車重が効いているのか、スロットルペダルを踏んだ瞬間にグイと背中を押されるような加速感を味わえる。しかも高速燃費は12~13km/Lをマーク。ディフェンダーを完全に突き放してみせたのである。

LAND ROVER DEFENDER110 SE/オフロードからストリートまで乗りこなす。装着タイヤはグッドイヤー・ラングラー・オールテレインアドベンチャー(255/60R20)。オフロードを得意としながら舗装路の乗り心地も上質だ。ロードクリアランスは29.1cm。
さて、ここまで細々と2台を比較してきたが、率直にいってディフェンダーとラングラーのどちらを買うかで迷う向きはいないだろう。ラングラーはいかにもアメリカ的で大らか。操作系もずいぶん現代風になったとはいえ、まだまだマニュアル式のよさを残している。デザインもアメリカ風にワイルド。基本的にはロールケージで組んだ上屋のうえにルーフを被せた構造なので、雨の日はドアを開けた瞬間、水が車内に流れ込んでくることもあるので要注意。もっとも、そんなところを楽しめるくらいの気概がなければジープに惹かれることもないだろう。たとえていえば、ラングラーは分厚いデニムで作ったジーンズのようだ。
いっぽうのディフェンダーはデザイン面でワイルドなテイストもあるが、クォリティや機械としての洗練さはオンロード主体の最新SUVとまったく互角。ファッションでいえば、最新の機能素材で作られたハイブランドのスポーツカジュアルにも似ている。
今回の試乗はオンロードを中心に行ったが、2台のオフロード性能は一般的な使い方をする人にとってはとても使えこなせないほど圧倒的。その意味でいえば、どちらを選んでも間違いはないはず。最後はアメリカンとブリティッシュのどちらが好みかで勝負が決まりそうな気がする。
多様なオプション装着が可能なのも魅力
インパネにはワイド画面を備える最新インフォテインメントシステム「Pivi Pro」が搭載される。試乗車はオプションのエクスプローラーパックを装着し、ボディーカラーはタスマンブルー。荷室容量は5シーターの場合、通常時で857Lとなる。
【Specification】LAND ROVER DEFENDER110 SE
■全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
■ホイールベース=3020mm
■車両重量=2240kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1997cc
■最高出力=300ps(221kW)/5500rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ=255/70R 18:255/70R 18
■車両本体価格(税込)=7,320,000円
お問い合わせ
ジャガー・ランドローバー・ジャパン 0120-18-5568
【Specification】JEEP WRANGLER UNLIMITED RUBICON
■全長×全幅×全高=4870×1895×1850mm
■ホイールベース=3010mm
■車両重量=2050kg
■エンジン種類/排気量=V6 DOHC24V/3604cc
■最高出力=284ps(209kW)/6400rpm
■最大トルク=347Nm(35.4kg-m)/4100rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=コイルリジット:コイルリジット
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=LT255/75R17:LT255/75R17
■車両本体価格(税込)=6,120,000円
お問い合わせ
FCAジャパン 0120-712-812
【Another Choice】MERCEDES-BENZ G-Class/メルセデス・ベンツ Gクラス
現在の主戦場は街だがクロカン性能は健在
英米の雄とともに忘れることができないのがGクラス。こちらも一昨年のモデルチェンジで洗練度を高めたが、伝説的なクロカン性能は健在。3つのデフロックと抜群のパワーでどんな悪路もガツガツと走りきってみせる。