2018年に発売されたJL型ラングラー。現行輸入車の本格オフローダーの中では、ライバル不在であったが、ついに新型ディフェンダーという好敵手が出現。秋雨が降りしきるある朝、富士山の麓に広がる未舗装路へと繰り出し撮影を敢行。そしてオンロードを中心に2台の個性を探った!
新型ディフェンダーの新解釈が精彩を放つ!
ランドローバー・ディフェンダーとジープ・ラングラーには驚くほどよく似た点とまったく異なる点の双方がある。
似ているのはどちらもオフロード性能にかけては数あるSUVのなかで最高峰に位置していること。そして長い歴史を有していることも共通点として挙げられる。
しかし、半世紀を優に超す歳月を経て、現在の2台はまったく異なる地平上に立っている。それを端的に述べれば、ラングラーは長い伝統のうえに改良を重ねて現行モデルに辿り着いたが、ディフェンダーは今回のモデルチェンジで立ち位置そのものを現代流に再解釈。従来型から受け継いだのはその思想だけで、メカニズムもデザインも完全に刷新されている。
たとえばラングラーは現行型もラダーフレーム+前後リジッドアクスルという基本構成を踏襲。ギア比のハイとローを選択するトランスファー切り替えやデフロックはマニュアルで操作する。
一方、ディフェンダーのボディ構成はラダーフレームからアルミモノコックへ一気に進化。トランスファー切り替えはプッシュスイッチで操作するほか、デフロックにいたっては個別に設定できず、路面ごとに用意されたモード切り替えに連動する形式。つまり、2台の間にはMTとDCTほどの違いがあるのだ。
だからといって、ディフェンダーがすべての面でラングラーを上回っているわけではなく、たとえばクロカンのスペシャリストであれば使い慣れたラングラーのシステムを好むケースだってあるだろう。つまり、ラングラーとディフェンダーの違いは優劣ではなく、思想が異なっているのである。
そうした違いは当然のことながら乗り味にも現れている。F:ダブルウイッシュボーン、R:マルチリンクの4輪独立懸架を採用するディフェンダーは、やや硬めの乗り心地ながら足回りがバタつくこともなく、ボディが強固なこともあって驚くほど快適。対するラングラーは、前後ともコイル+リジッド式ながらハーシュネスはディフェンダー並みに軽く、ゴツゴツ感はごく弱い。これには本格的なオフロード用タイヤを履いていたことも関係しているはず。いっぽうでタイヤが大きくストロークする状況で足下がばたつくのは致し方ないところ。その症状は軽いとはいえ、快適性はディフェンダーが一枚上手だ。
オンロードにおけるディフェンダーのハンドリングはクロカン4WDのネガをまるで感じさせないほど完成度が高い。ステアリングの切り始めから正確な反応を示してくれるし、レスポンスの遅れも認められない。さらに驚くべきはステアリングインフォメーションが豊富なことで、おかげで雨のワインディングロードを攻めても不安とは思わなかった。
一方のラングラーも意外なほどの健闘を示し、絶対的なコーナリングスピードはディフェンダーと遜色がなかった。ただし、前述のとおりオフロードタイヤを履いている影響でコーナー進入時にトレッドがよれる感触があり、コーナリングの姿勢が落ち着くまでにはわずかな時間を要した。もっとも、リジッドアクスルを採用しながら、ステアリングの正確さと乗り心地をここまで高い次元でバランスさせたことは驚異的としかいいようがない。80年近いジープの歴史は伊達ではないのだ。
手動によるオフロード設定が“ 本気”を物語る
「前後輪ディファレンシャルロック」と「電子制御式フロントスウェイバーディスコネクトシステム」のスイッチ、専用ダクト付きボンネットなどがルビコンの専用ディテール。荷室容量は通常時で533L、後席を倒した状態で1044L(※FCAイタリア公表数値)。