
RBエンジンを初搭載した豪華サルーン
元祖ハイオーナーカーと言われる日産ローレル。その名称がハイソカーへと転じた1980年代半ば~後半のローレルは、5代目のC32型系にあたる。C32型ローレルは1984年にデビュー、基本設計を共用するR31型スカイラインより1年近く早い登場であった。ボディ形式は先代同様に4ドアのセダンとハードトップの2種類のみ。ただし、先代C31型系が欧州調のクリーンなスタイルであったのに対し、C32は直線基調の押し出しの強い風貌であった。
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搭載されるエンジンは、それまでのL型6気筒に代わり、新設計のRB型。1980、1990年代の日産2~2.5L車を支えたRB型だが、その初登場はこのローレルということになる。C32ローレルに搭載されたのは2L OHCのRB20E。このほか、Y30型セドリック/グロリアなどですでに世に出ていたV6 2LターボのVG20ETもあり、また1.8L 4気筒のCA18やディーゼルのLD28なども用意された。サスペンションは前ストラット/後4リンクが基本だが、ハードトップの上級モデルではリアがセミトレーリングアームとなる。
前述のように押し出しを重視し、豪華なイメージを強調したC32ローレルだが、何をもって「豪華」とするか、そのイメージがすでに時代とはズレつつあったようで、豪華・高級というよりは野暮ったさとして受け止める向きの方が多かったようだ。2年目のマイナーチェンジではノーズをスラント気味にするなどして軌道修正を図っている。また、このときRBエンジンのツインカムターボであるRB20DET搭載モデルが新設された(V6ターボもそのまま存続)。
このマイナーチェンジは当時なかなか好評であったが、ローレル復活を印象付けるには次のC33型まで待つ必要があった。とはいえ、その独特な個性に惹きつけられる人は少なくないようで、今となっては特に前期型の方が、ある層の国産旧車ファンには強い人気があるようだ。また、今では常識となった装備である、電動格納式ドアミラーを世界で初めて採用したのがこのC32ローレル前期型ということで、その面での再評価もされているようである。
シートの質感と色あい・発色を再現
プラモデルの世界では、当時のエルエスがリリースした1/24スケール・キットが唯一のモデル化である。再現されているのはハードトップのV6ターボで、このキットは金型を引き継いだマイクロエースがリリースしており、しばらく再販が途切れているようだが、現在でも入手はわりと容易だ。ここでお見せしているのは、このローレルのキットを、特にインテリアにこだわってフィニッシュした作品である。
ハイソカーといえば思い浮かぶのは、ワインレッドやダークブルーのベルベットを多用したインテリアだ。その質感や色調、発色を模型で再現するのはなかなか至難の業だが、この作例ではその解決策をひとつ示すことができたと言えよう。これについては工程写真のキャプションをお読み頂きたい。またこのキットでは、なぜかダッシュボード中央の空調パネル周りの表現が何もなく、つるりとのっぺらぼうなのだが、こうした部分の対処もご紹介している。
- 前後グリルともランプ内側に麦球を内蔵する仕組みのため、レンズ内側のパーツ形状がいちじるしくリアリティを損ねている。
- 麦球用の開口部を枠いっぱいまで削り拡げた上で裏をプラ板で塞いだ。メッキ仕上げはハセガワのミラーフィニッシュで。
- フロントグリルはメッキパーツではない。ミラーフィニッシュを貼り込んで仕上げた。
- ライトレンズは前後とも端部が分厚く、外側からもその厚みが見えるので、彫刻刀などで削って磨いておく。
- 作業中の様子。
- これだけ差が出た(写真左が加工後)。
- クリアパーツが透明度に欠けることもあり、サイドウィンドウは全開状態に改めた。ボディにウィンドウを仮止めし、切り取る部分をケガく。前後ウィンドウを傷つけないようテープで保護して横窓を切り離した。
- なぜかツルッとした造形のダッシュボード。よくよく見ると、空調関連のモールドが全く無いことに気付く。仕方がないのでこのディテールを新造する。
- まずは、小さなスケールをガイドにしてスジ彫りツールでケガいていく。写真のように金属製のスケールをテープで部品に貼り付けて行なうと良い。
- なんとか彫り込めたところ。
- 下段の操作パネルは一段くぼんだ形となっているので、筋彫りした内側を、キサゲを使って1mmほど掘り下げる。
- カットしたプラ板を貼り付けて、資料を参考にシルバーなどでそれらしく塗り分ける。
- 吹き出し口のほうはスリット状に筋彫りをし、ブラックで塗装。
- 表面をザラつかせるにも色々と方法があるが、瞬着パテのパウダーを使う方法はかなり有効だ。部品が楽に収まるサイズのケースを用意、中にパウダーを適量入れ、
- リターダーを加えて乾燥をおそくしたプライマーを、部品がしっとり濡れる程度に吹き、この容器の中に入れて(部品には持ち手を付けて宙に浮かせること)シェイクすると、植毛風の表面になる。
- フラットベースを加えた白やクリアーを吹いて定着させておく。
- 樹脂の部分の色や、シートの生地の色(を明暗に分けたもの)をそれぞれ調色する。作例では、艦底色にマルーンを混ぜたものをダッシュや内張りの色、マルーンにマゼンタと白を少量加えたものをシートの基本色とした。
- GSIクレオスの「色ノ源」などを使って彩度を上げた色を塗ると、ベルベットらしさが増す。
- シートの縫い目に沿って先に影を付けておき、
- 一番明るい色から全体に吹き付け、
- 次にシートの生地の色をまだらに吹き付ける。
- 実物を観察するとよくわかるが、ベルベットは奥まったところでも白く光っていたりするので、「凹んだところを暗く」という固定観念に囚われすぎないよう注意。さらに、暗い部分の色(マルーンの原色)を少しずつ吹き付ける。
- インテリアはシャシーに直接組み付ける構成なので、フロアには裏面のモールドがそのまま浮き出ている。
- フロッキーシートをカーペットとして貼り込み、
- ドアパネル下部と同じ塗料を吹きつけて仕上げた。
- 切り取ったサイドウィンドウから三角形に切り出し、
- ドア内張り上部に取りつけて、窓を開けた状態を再現。
- 天張りにもフロッキーシートを使用。