Garage Life

親の思い入れも引き継いでフルリノベーションした、現代和風ガレージハウス。【ガレージライフ】

住み手の生活を理解して細かいところまで考えることで、今まで不便だった生活のクオリティを高めるリノベーション。

ガレージのある家の設計経験のある建築家が、残したかった美しい外観と銅板の屋根を活かしてリノベしたO邸は、静岡県浜松市にリノベーションされたガレージハウス。2019年にスタートしたプロジェクトは、設計プランニングに約1年、工事に約1年を費やしてOさんの希望をすべて取り入れ、引き渡しとなった。リノベーションのスケールの大きさに編集部も驚いたが、聞けばOさんの父親が住んでいた家を相続したという事情もあり、躯体を生かしたリノベーションをしたいと相談を「高橋貴大一級建築事務所」に依頼したのが、2019年10月のことだった。

築36年の現代和風の邸宅は、もともとOさんのご両親が暮らしていた銅板屋根が使用されていた木造2階建ての住宅。思い入れのあるこの家を引き継いでほしいということで、躯体を活かしてリノベーションすることが命題となった。Oさんは東京で暮らしていたこともあり、住まいとしてはこの家で3軒目となるため、希望をかなえてもらえる建築家を探していたところ、知人の建てたガレージのある家を見て、とある建築家と知り合うことになる。クルマが好きな建築家に依頼することでガレージを使いやすくしたかったほか、細かなことまで要望を伝達。特に古い家のため断熱性能も、耐震性能も劣っているため今回のリノベーションですべて改善することが大きな目的にもなった。

【写真15枚】築36年の現代和風の邸宅が見事なガレージハウスに! 

そのため、設計には約1年かけて改良できる方法を模索した。そこで高橋さんは、旧家の躯体をほぼ見直し、布基礎であった床は防湿層押えコンクリートで改良。耐震構造はダンパーで補強して、壁は移設して補強するなどして広くなるように設計。サッシにはトリプルガラス+アルゴンガスを採用するなど、断熱効果を上げるようにしている。これもこれまでの経験からのアイディアであり、「もしかしたら新築にしたほうがコストは安いかも」と確認しながらも、相続した家を生かす方法を考えている。

そして、広さを得たことで天井高からどうしても圧迫感が出てしまうため、梁下いっぱいに天井を上げて開放感が出るよう、リビング、ダイニング、キッチンをプランニング。壁面には自然素材の珪藻土を採用するなどあらゆるところを改良している。また天井には木目のレッドシダー、床面には大理石を設えるなど要望も取り入れた。またご主人が要望したサウナのある浴室や、奥様のご要望の輸入壁紙やカーテン、トレーニングジムや書斎なども、フルオーダーでO夫妻の希望をかなえている。

またガレージは旧家でもあったがサイズが小さく使い勝手が悪かったため増築して幅を130cm、長さを100cm延長してガレージドアには「三和シャッター」の「威風動々」を採用。旧家屋にあった先祖代々の古物が収納できるスペースも、併せて増築している。その結果、新築以上のコストがかかってしまったが、満足のいくガレージハウスが2021年11月に竣工となったという。ガーデンスペースなどこれから手を入れる場所もあるが、O夫妻にとってはこれから50年快適に暮らすことができる家を手に入れている。

父親の意思を引き継いだ美しい外観と銅板の屋根のガレージハウスは、建築家と出会いリノベーションすることでO夫妻の希望を叶えることになった。敷地面積611平米に建てられた木造2階建てガレージハウス。時間はかかったってしまったが、じっくり打ち合わせをすることで納得のいく家となった。O夫妻いわく、「2人のライフスタイルを理解してもらえる建築家に出会えたことで、失敗したことは何もない」という。まさに機能美を追求して、耐震性能まで改善ができたことで安心して家族5人で暮らしていくガレージのある家を手に入れている。

◆Planning Data
 施 主:Oさん
 所在地:静岡県
 構 造:木造2階建て
 敷地面積/延床面積:611.08平米/313.75平米
 ガレージ面積:26.085平米
 外装/内装:吹付塗装/珪藻土、クロス他
 車 両:2020年式 アウディ・A1
 設 計:高橋貴大一級建築士事務所

◆Comment from an Architect:高橋貴大一級建築士事務所 高橋貴大さん
私自身もクルマが好きで、世界的なカーデザイナーの事務所で働いていました。今回、時間をかけて打ち合わせ、変更をしながら納得いただけるガレージハウスを目指しました。その結果いいものができたと自負しています。今後、手を入れることで時間とともにより進化していくことでしょう。期待に応えられてよかった案件でした。

高橋貴大一級建築士事務所 静岡県浜松市中区曳馬3-5-8 Phone: 053-465-3616

『ガレージのある家 Vol.49』掲載

photo / Takahiro TAKAHASHI(高橋貴大)  text / Jun ISHIHRA(石原 淳)

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