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【最新モデル10番勝負!/JUDGE 06】ハンドリング性能で選ぶ電動RWDクーペSUV【ボルボC40×アウディQ4】

電動コンパクトSUVが後輪駆動を選ぶ理由

ボルボ初となるBEV専用モデルC40リチャージと、アウディQ4 e-tronの共通点をひとつ述べるとすれば、それは両者がRWD(後輪駆動)のEVだということだ。ちなみにC40はこれまでその駆動方式を4WDとFWDとしてきたが、これが’24年モデルからは4WDとRWDの組み合わせとなり、日本仕様は後者となった。

両車が後輪駆動を選んだ理由は、我々が思い描くような動的質感の向上というよりは、電費の深刻さだろう。つまりRWDなら登り坂でも、FWDに比べロスなくトラクションが稼げる。高速巡航時の直進性や、低ミュー路における回生ブレーキの作動はFWDの方が特性的に有利だが、現代の電子制御技術とモーターをもってすれば十分に安定化が図れるというのがその腹づもりだろう。過去に後輪駆動の経験があるとはいえ北欧のボルボでさえRWDを選ぶのだから、現状ベーシックなBEVにとって、「いかに電費を稼ぐか?」が大命題なのだ。そしてそんな視点から両者を見ると、2台のキャラがよく見えてくる。

ボルボC40は、導入当初はAWDのみ、その後FWDが追加されたが、今回の’24年モデルではRWDのみのラインナップへと一本化された。シートはBEVモデルのみに採用されているウール素材(オプション)となっている。荷室容量は標準状態で413L。最大1205Lまで拡大することが可能。滑らかなルーフラインのクーペフォルムはスタイリッシュだ。

最初に走らせたボルボC40は、見た目のスタイリッシュさに反して、その乗り味にはギラついた派手さが一切ない、実直なBEVだった。キーさえあればスターターボタンを押すことなしに走り出せるその身軽さと、滑らかなモーターの出足には、これからの時代のベーシックが感じ取れた。

アップライトなシートから見下ろす視界は良好で、それなりに大きなボディでも、モーターが街中をストレスなく走らせてくれる。 

2トンをわずかに超えるボディに238ps/418Nmの出力は、はっきり言って平凡だ。料金所からのダッシュや高速での合流で歯がゆさを感じるほどではないにしても、胸の空くような加速ではない。だがリニアな蹴り出しとちょうどよい速さは、ボルボの優しいキャラと絶妙にマッチしている。

いっぽう気になるのは速度を乗せていったときのコーナリングで、グラスルーフの影響はあるにせよ、いわゆるBEVらしい低重心な安定性が得られていなかった。端的に言えばロールスピードが速く、ボルボらしいしなやかさに欠ける。またパイロットアシストの制御も探りを入れてくるような操舵介入が多く、全体的にまだ後輪駆動をモノに出来ていない感じがした。

’22年10月の発売以来、戦略的な価格設定もあり好調なセールスを記録しているQ4 e-tron。丸みを帯びた塊感あるフォルムは、コンパクトSUVながら存在感溢れるものだ。コクピットはヘキサゴンシェイプのスタアリングやエアアウトレット等、Q4ならではのデザインが採用されている。荷室容量は標準状態で535L、最大1460Lまで拡大が可能だ。

しかし驚いたのはそれ以上に、アウディQ4のセッティングが定まっていなかったことだ。街中での乗り心地はしっとりどっしりとかなりプレミアムなのだが、この快適さが高速領域まで保てない。フロントサスのバウンスが抑えきれず、速度が上がるほどにピッチングが大きくなって行く。操舵支援との相性もあまりよくない。

その出力は204ps/310NmとC40よりさらに低いから、パワーがシャシーに影響を及ぼしている印象はない。むしろ大きいのは2.1トンの車重で、これをしなやかな足周りのまま落ち着かせたいなら、少なくとも可変ダンパーを奢る必要があると思えた。もしくは同族であるフォルクスワーゲンID.4のように、ガッシリと足周りを固めた方がよいと思う。

両者ともにBEVならではのフラットなプラットフォームのおかげで、フロント2座に余裕を持たせてもリアシートの居住性は高い。またその航続距離もC40が590km、Q4が594kmと、7掛けで考えてもリアリティのある航続距離を達成しながら、700万円台という現実的な価格を実現している。おまけに好みはあれど、どちらも超イケメン。かつてのようにスピードが正義ではない現代で、この2台は本当に魅力的なポジショニングにいると言える。だとしたらあとは、この乗り味を最初にまとめきった方が勝ちだ。現状はボルボが、半歩リードしている。

フォト=望月浩彦

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