ニューモデル

変わったのか、変わらないのか。輸入車No.1の最前線に迫る!「メルセデス・ベンツ G580 with EQテクノロジー」

1月にジャパンプレミアを果たしたEクラスから始まった2024年のメルセデスYEAR。今年も終盤に差し掛かった10月末、GクラスのBEV、G580 with EQテクノロジーが国内市場に投入された。一般的には、このモデルが持つ熱狂的なカリスマ性に熱視線が注がれるが、本質はG580が示したプレミアムブランドとしての真価やBEVの在り方にあるのではないだろうか? 

自動車としての進化は目を見張るものがある

“ゲレンデヴァーゲン”の愛称で知られるメルセデス・ベンツGクラスといえば1969年にオーストリアのシュタイア・ダイムラー・プフと提携を結んだメルセデス・ベンツが開発。1979年にNATOに正式採用されるとともに民生用も発表され、基本構造を変えることなく作り続けられてきた、本格的小型オフローダーのベストセラーのひとつである。

2018年にはW463という型式番号こそ変わらないものの、新設計のラダーフレームシャシー、フロントにダブルウイッシュボーン式サスペンションなどが刷新され、約170kg軽量化されたボディ、9速ATの採用などを行なったフルモデルチェンジを敢行し、3代目へと進化。併せてインテリアも最新のデジタルデバイスを備えた上質な空間にアップデートされ、世界中で大量のバックオーダーを抱える大ヒットを記録したのは記憶に新しい。

エアアウトレットや助手席側のグリップハンドルなどGクラス伝統のデザインを踏襲しながら、デフロック等の走行機能切り替えスイッチ周辺にはGターンやGステアリングの起動スイッチもレイアウトされた専用デザインを採用。最新世代のMBUXやマルチファンクションステアリングホイール、Burmester®3Dサラウンドサウンドシステム、温冷機能付カップホルダー(前席)などが装備され、先進性と利便性も大幅に向上。

新たに型式番号がW465に改められたG580 with EQテクノロジーは、3代目GクラスをBEV化したものだ。

とはいえマッシブでスクエアなボディは見慣れたGクラスそのもの。リアに背負ったデザインボックス以外、既存のICEモデルと見分けるのは難しいほどだ。

しかしよく見ていくとウインドーシールドのフラッシュサーフェイス化、一段上がってウェッジシェイプとなったボンネットフード、ホイールハウス内のタービュランスを整流するリアフェンダーのエアスリット、ドア開閉時の圧力を抜くCピラーのエアアウトレット、フルフラットになったアンダートレイなど、ドラッグの低減を狙ったG580 with EQテクノロジーならではの空力処理が施されているのがわかる。

変わらないために、変わり続ける。それが答えだ。

ちなみにこのエディション1はICEモデルと同じデザインのグリルとなっているが、2025年の第一四半期からは、電飾が内蔵されたブラックのパネルラジエターグリルもオプションで設定される予定だそうだ。

また単体で57kgに抑えられた板厚26mmのアンダーフロアは、エアフローの改善だけでなく、5cm角の板を当てて持ち上げられるほか、10トンの重みに耐えられるほどの剛性と、強度を誇ることでラダーフレームの内側に敷き詰められたリチウムイオンバッテリーを保護。しかもバッテリーとフロアの間に1.5cmのクリアランスを設けることで、衝撃を受けてもバッテリーにダメージが及ぶのを防ぐ配慮もなされている。

エンジン車(W465)のフロントフードはフラットとなるが、G580はフロントウィンドーに向かって傾斜したフロントフードが採用され、黒いルーフモールもG463(’18年〜)よりも丸みを帯びた形状へと刷新。これによりボンネットからウィンドー、そしてルーフへの気流が整えられ、空気抵抗が抑えられるとともに室内の静粛性も高められている。

ちなみにリチウムイオンバッテリーの最大容量は116kWh。216個のセルを収めた12のモジュールで構成され、強化されたラダーフレームの内側に2段重ねで搭載することで、重量バランスのほか、車体の低重心化、車体剛性の強化にも貢献しているという。もちろん、防水処理もしっかりとしており、最大渡河深度がG450dの700mmを上回る850mmを記録するのもEQテクノロジーのトピックのひとつである。

インテリアはバッテリー搭載によってフロアが1・5cmほど高くなっているということだが、実際に乗ってみてもその差は感じられないし、室内容量にもほとんど影響はない。

では何が違うのか? それは言うまでもなく、その中に仕込まれたパワーユニットだ。

リアビューカメラの位置はリアウィンドー上部、スペアタイヤカバー下部と変遷し、最新モデルはリアナンバープレート上部に設置。運転中にウィンドーウォッシャーを使うと、同時に前後カメラも噴射による洗浄が行なわれクリアな視界が確保される。

前後アクスルに2基ずつ計4基搭載される永久磁石同期モーターは、1基あたり最大出力147ps、最大トルク291Nmを発生。それぞれ4つのホイールを駆動し、システム最大で、AMG G63の585ps/850Nmを上回る587psのパワーと1164Nmのトルクを発生する。

また各モーターに2段ギアを組み込み、ローレンジモードでは最終減速比を2:1とすることで、急勾配走行時のトルクを強化。トルクベクタリングを用いた仮想デフロック機構を備え、オン、オフ問わず最大のトラクションを生み出すことが可能となっている。その機能を最大限に活かしたのが、オフロードなどの未舗装路で最大2回転まで旋回できるGターンと、後輪を中心として大幅に回転半径を縮小できるGステアリングだ。

強化されたラダーフレームの内側に2段重ねで116kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。これは車体の低重心化や車体剛性の強化にも貢献し、完璧なシーリングにより激しいオフロード走行や渡河走行をもこなす。

しかしそれはG580 with EQテクノロジーのアピールのひとつに過ぎないとも言える。何しろその本質は、メルセデス・ベンツの誇る最新のBEV技術を内包し、それを最大限に活かすアップデートを施しながらも、“Gクラスらしく”あり続ける普遍性にこそあると思うからだ。

WORK SHOP

Gクラス・プロダクトマネージャー トニ・メンテル氏

トニ・メンテル氏による搭載バッテリーや空力性能についてのワークショップが行なわれた。メンテル氏は「(仮に)外気温40-50℃でバッテリーが高温状態のまま0℃の川に入った場合、バッテリーは温度差から収縮しようとします。また川底には石や岩が転がり下から容赦なく衝撃が与えられ、渡河中はボディもよじれるため、同時にバッテリーボックスもよじれることとなります。テストではあえてこの状況を作り出し、40,50回連続で行ないましたが、メルセデスが保証するバッテリークオリティは保たれていました。そこで私たちは8年間で16万kmのバッテリー保証を行なうこととしました」と語り、G580のバッテリーへの信頼と自信をのぞかせた。

新設計のボンネットやルーフモールにより空力性能は向上し、「先代(G463)の100km/hと新型(G465)の130km/hの時のノイズレベルは同等」とメンテル氏。

フォト=岡村昌宏(CROSSOVER)、佐藤亮太 ル・ボラン2025年1月号から転載

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