
ロングドライブで実感するフォルクスワーゲンの魅力
いま自動車の世界では、パワートレインの電動化が急務であり、もちろんフォルクスワーゲンも積極的に取り組んでいる。実際、電動化の代表であるBEV(電気自動車)に加えて、プラグインハイブリッド車やマイルドハイブリッドシステム搭載車のラインナップが増えてきているのだ。
【画像20枚】滋賀の美しい景色にしっくりと溶け込むフォルクスワーゲン2台の様子を見る
そこで今回は最新の電動化モデルとして、BEVのID.4 Proと、フルモデルチェンジで3代目となったティグアンのなかから、マイルドハイブリッドシステムを採用するティグアンeTSIをドライブに連れ出すことにした。
旅の目的地に選んだのは滋賀。広さ日本一の琵琶湖を有するこの地には、風光明媚な場所や歴史に残る街など、訪れてみたいポイントがたくさんある。そんなエリアを巡るには、自由気ままに動きまわれるクルマが一番! ということで、滋賀の魅力を満喫する二泊三日の旅に出かけるとしよう。
1日目。高速道路を使って、まずは東京から琵琶湖にほど近い名神高速・彦根インターを目指す。距離にしてざっと400㎞だが、アウトバーンのあるドイツで生まれた2台だけに、ロングドライブはお手のものだ。

Volkswagen Tiguan eTSI R-Line ■全長×全幅×全高=4540×1860×1655mm■ホイールベース=2680mm■車両重量=1640kg■エンジン種類=直4DOHC16V+ターボ■排気量=1497cc■最高出力=150ps(110kW)/5000-6000rpm■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1500-3500rpm■トランスミッション=7速DCT■サスペンション形式(F:R)=ストラット:4リンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク■タイヤサイズ(F:R)=255/40R20:255/40R20■車両本体価格(税込)=5,889,000円
- 1.5Lの直4ターボエンジンにモーターを組み合わせたMHEVシステムを搭載。高燃費とあらゆる速度域からの素早いレスポンスを両立。
- アダプティブシャシーコントロール「DCC Pro」により、コーナリング中も安定かつ素直な挙動を示す新型ティグアン。おかげでワインディングが非常に楽しい。
さっそくティグアンの運転席に陣取ると、すこし高めのアイポイントのおかげで、いつも以上に流れる風景が楽しめる。しかもこの新型では乗り心地の良さが際だっていた。全高の高いSUVというと、走行時に前後の揺れが目立つことがあるが、このティグアンではそうした動きがきっちりと抑え込まれ、背の高さを忘れるほどに落ち着きがある。路面や走行状況に応じてきめ細かくダンピングを調節するアダプティブシャシーコントロール〝DCC Pro〟の成せる技だ。そのうえ高速走行時の直進性に定評のあるフォルクスワーゲン車だけに、ステアリングを握るドライバーは疲れ知らずだ。
自動で車速や車間距離を調節するアダプティブクルーズコントロール〝ACC〟や、これに車線維持機能を加えた〝トラベルアシスト〟は、加減速やステアリングのアシストが自然で、ドライバーの負担はさらに軽減されるから、ロングドライブには好都合である。
ティグアンeTSIには1.5Lの直列4気筒ガソリンターボエフンジンが搭載され、これ単体でも高速道路を爽快に加速する実力を持つが、マイルドハイブリッドシステムを構成する電気モーターがアシストすることで、思いのほか力強い加速を味わえる。その一方で、巡航時などには4気筒のうちの2気筒を休止したり、また、アクセルペダルから足を離したときにはエンジンを完全に停止させることによって、燃費を稼いでいるのも見どころのひとつ。実際、高速走行時の燃費は区間によっては21km/Lを上回り、東京〜彦根間の平均燃費も18.5km/Lに達するなど、環境にもお財布にもやさしいのが新型ティグアンなのだ。
長い航続距離と充電網の拡充がBEV普及の追い風に
一方、ID.4 Proは、モーターによる力強い加速や走行時の高い静粛性により、心地よい移動を約束してくれるのがうれしいところ。ACCやトラベルアシストがドライバーの負担を軽減してくれるのはティグアンと同様である。

Volkswagen ID.4 Pro ■全長×全幅×全高=4585×1850×1640mm■ホイールベース=2770mm■車両重量=2140kg■モーター種類=交流同期電動機■モーター最高出力=204ps(150kW)/4621-8000rpm■モーター最大トルク=310Nm(31.6kg-m)/0-4621rpm■サスペンション形式(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム■タイヤサイズ(F:R)=235/50R20:255/45/R20■車両本体価格(税込)=6,488,000円
「でもEVは航続距離が短く、ロングドライブには不向きでは?」と心配するかもしれないが、ID.4 Proの航続距離は618kmと余裕があり、出力90kW超の急速充電にも対応するため、高速道路の移動も安心。この日は昼頃に新東名の浜松サービスエリアに到着。この時点でバッテリー残量は28%、走行可能距離は126kmだったが、30分の食事中に行った充電でバッテリー残量は75%、走行可能距離も342kmと、当日の移動に十分なまでに回復している。
- シンプルなデザインでまとめられたID.4のインテリア。素材には人工皮革とマイクロフリースを使用し、環境にも配慮している。
- 高速道路のSAをはじめ、充電網が整備されたおかげでBEVでの長距離移動も以前ほど神経質になる必要はほとんどなくなった。
彦根インターで高速を降り、しばらく走ると、琵琶湖が見えてきた。薄雲のおかげで対岸の山脈が霞み、まるで海を見ているようだ。しばらくして日が傾き、美しい夕景に釘付けになった。
すっかり日が暮れたところで、普通充電器のあるホテルに移動。到着時、ID.4 Proのバッテリーは16%まで減っていたが、通常の倍の出力となる6kWで充電したおかげで、翌朝には100%まで回復。これで2日目も思う存分ドライブが楽しめそうだ。
この日は高島市マキノにあるメタセコイア並木の紅葉を駆けぬけたあと、比叡山ドライブウェイに足を伸ばす。大津市から比叡山頂を結ぶ8.1kmのワインディングロードは上り勾配がきつい部分もあるが、ティグアンのエンジンは低回転からトルクが豊かで、しかも、モーターアシストの恩恵もあり、アクセルペダルを一所懸命踏み込まなくても軽々と坂を登っていく。カーブでは前述のDCCProがロールを抑えてくれるので、気持ち良くコーナーを走りぬけられた。気持ち良さではID.4の走りも甲乙がつけがたく、モーターによる力強い加速と後輪駆動によるハンドリングの良さが、ドライブをさらに楽しくしてくれた。
3日目は早起きをして、歴史ある街並みが魅力の近江八幡市へ。まだ動きはじめる前の街を走るには、ID.4の静かさがうれしい。しばらく街をぶらぶらしたあと、名残惜しいが東京に戻ることに。琵琶湖の壮大な佇まい、美しく色づいた木々、比叡山から見た街と湖、そして、歴史を身近に感じた瞬間を心に刻んだ今回の旅を、私はきっと忘れないだろう。
- 立ち寄りポイント①メタセコイア並木……滋賀県北西部、高島市マキノ町にある全長2.4kmに渡るメタセコイアの並木道。今回訪れた12月上旬はちょうど紅葉の時期で、約500本のメタセコイアが織りなす美しい木々のトンネルは圧巻。
- 立ち寄りポイント②延暦寺&比叡山ドライブウェイ……天台宗総本山として世界遺産にも指定される比叡山延暦寺。
- 山頂展望台から眼下に望む琵琶湖のスケール感に圧倒される。アクセスには比叡山ドライブウェイを使用すると便利だ。
- 立ち寄りポイント③八幡堀……かつて安土・桃山時代に、八幡山城の城下町として近江商人とともに発展した、町の一大動脈。堀の周辺には桜や花菖蒲が植えられており、四季折々の風景を楽しめる。
- 立ち寄りポイント④琵琶湖……日本最大の面積を誇る湖。その豊かな水資源は古くから関西地域の水源として活用されるにとどまらず、商業・文化の発展にも寄与。人々のくらしに寄り添った湖だ。
- 旅の醍醐味は観光地だけでなく、ご当地ならではのグルメも見逃せないポイントだろう。今回食したのは鰻の白焼き。他にも近江牛やビワマスなど、滋賀県には魅力的なグルメが多数存在する。