






































乗らずぎらいのアナタにこそ
フォルクスワーゲンにおいて「ビートル」に並ぶ名車“ワーゲンバス”こと「タイプ2」をモデルにしたフル電動ミニバン「ID.Buzz」が、ついに国内でもデビュー。普段はミニバンにほとんど乗らない筆者が、この電動ワーゲンバスに試乗した際の率直なインプレッションをお届けしよう。
【写真38枚】ミニバン乗らずギライにこそ乗ってほしい! フォルクスワーゲンID.BUZZの詳細を見る
ミニバンはクルマ好きの終着点……かもしれないが
クルマ好きを公言している人でもなんとなく避けがちなミニバンジャンル。英国の某有名自動車番組の司会者が「人は結婚と育児を経験しミニバンに乗って死ぬ」なんて評したくらい、筆者にとってもマイカー選びでミニバンは無意識のうちに選択肢から外して考えていた。その考えを少し改めてもいいと思えたのが、このID.Buzzである。ここでは筆者がID.Buzzを初めてのミニバンとして選んでもいいと思えた、3つの「惹かれポイント」を紹介したいと思う。
惹かれポイント1:キュートでポップなデザイン
まずはそのデザインに惹かれた。ご存じの通りID.Buzzは1950年に量産が開始されたフォルクスワーゲンにおけるマスターピースのひとつ「タイプ2」をオマージュしたデザインを持つ。
2トーンカラーのポップなカラーリングや、フロントフェイスの大きなVWロゴなど、かつてのタイプ2のデザインをうまく現代的に昇華している。かつて国産車にも、このようにクラシックな雰囲気を纏った“パイクカー”なるジャンルが存在したが、このID.Buzzも現代におけるパイクカーのひとつといえるかもしれない。
しかもこのデザイン、かわいいだけではなく機能面でも優れている。電気自動車における航続距離を左右する要因として空気抵抗があげられるが、このID.Buzzはこれだけの全面投影面積を持ちながらCd値は0.285という値(欧州値)を実現しているのだ。
惹かれポイント2:ミニバンならではのユーティリティ
ミニバンの実用性の高さは言うまでもないことだが、このID.Buzzも漏れなく高いユーティリティを備えている。
車内に乗り込んでの第一印象はその広さもさることながら、シンプルでありながらもチープではなく、ちょっとこ洒落たリビングのような雰囲気が好ましい。今回日本に導入されるID.Buzzは通常のホイールベース(2990mm)と、ロングホイールベース(3240mm)の2タイプが用意される。前者は2+2+2の6人乗り、後者は2+3+2の7人乗りだ。
今回どちらのタイプも試乗することができたが、ノーマルホイールベースでも3列目まで十分な広さを持つ。むしろノーマルホイールベースは2列目もウォークスルーになっているので乗り降りの際の利便性が高いかもしれないと感じた。
一方のロングホイールベースモデルは脱着可能な3列目シートを備え、最大2469Lの広大なラゲッジルームが出現する。シートはフルフラットにもなり、アウトドアやキャンプなど、様々な用途を考えるだけでも楽しい。
そして地味ながらも良い! と思えたのが各座席にUSBポートとエアコンの吹き出し口が設置されている点だ。ロングドライブ中ではパッセンジャーが暇つぶしにスマートフォンやタブレットで動画を観る、というシチュエーションが少なくないが、3列目まで電池残量を気にせずにエンターテイメントに集中できる。エアコンも昨今の異常ともいえる暑さの中では、各々が涼風に当たれるという場面は非常にありがたいはずだ。
どちらにせよ現状国内のピュアEVにおいて6人以上が乗車可能なのはこのID.Buzzだけなので、それだけでも十分なセールスポイントと言えるだろう。
惹かれポイント3:侮れないドライバビリティ
そしてID.Buzzを選びたいと思えた最後の理由はドライバビリティだ。ノーマルホイールベース、ロングホイールベースどちらも車重2.5トンを超えるヘビー級でありながら、その車重を微塵も感じさせない軽やかなフィーリングでドライブを楽しめる。
パワートレインにはどちらのモデルも最高出力210kW(286ps)、最大トルク560Nmを発生するモーターを後輪に備え、どの速度域からでも力強い加速を味わえるほか、ホイールベース間に収まる大容量バッテリーのおかげで、低重心化と優れた前後重量配分を実現。コーナリングでも不快なロールやピッチングが抑えられ、まるでセダンに乗っているかのようなオンザレール感だ。
乗り心地も良く、特に2列目シートはEVならではの静かなパワートレインのおかげで静粛性にも優れ、ワンランク上の移動空間だ。3列目は後輪の直上ということもあり、多少コツコツとしたアタリが感じられる場面もあったが、そもそもの車内空間が広いためロングドライブでもストレスなく過ごせるだろう。
* * *
以上がミニバン乗らず嫌いの筆者がID.Buzzを「欲しい」と思った3つのポイントだ。個性的なデザインにミニバンらしい利便性、そして何よりその体躯を感じさせない軽やかなドライブフィーリング。特に3つ目のドライバビリティは通常のミニバンから想像されるものから、いい意味で肩透かしを食らうので気になっている方はぜひ一度ディーラーなどで試乗していただきたい。これまではある種“妥協の産物”と勝手に思ってしまっていたミニバンを、積極的に選びたくなる魅力がID.Buzzには詰まっているのである。
【写真38枚】ミニバン乗らずギライにこそ乗ってほしい! フォルクスワーゲンID.BUZZの詳細を見る
【Specification】フォルクスワーゲンID.Buzz Pro
■車両本体価格(税込)=8,889,000円
■全長×全幅×全高=4715×1985×1925mm
■ホイールベース=2990mm
■車両重量=2550kg
■モーター種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=286ps(210kW)/0-3581rpm
■モーター最大トルク=560Nm(57.1kg-m)/2100-5500rpm
■バッテリー容量=84kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=524km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:4リンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ドラム
■タイヤ=前/後:235/50R19/255/50R19
【Specification】フォルクスワーゲンID.Buzz Pro Long Wheelbase
■車両本体価格(税込)=9,979,000円
■全長×全幅×全高=4965×1985×1925mm
■ホイールベース=3240mm
■車両重量=2720kg
■モーター種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=286ps(210kW)/0-3581rpm
■モーター最大トルク=560Nm(57.1kg-m)/2100-5500rpm
■バッテリー容量=91kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=554km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:4リンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ドラム
■タイヤ=前/後:235/50R20/265/50R20