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【長距離テスト】実燃費20.1km/L! トヨタ「クラウン エステート」PHEV、「ライバル不在」の実力を徹底検証

トヨタ・クラウンエステート Z(HEV)
トヨタ・クラウンエステート RS(PHEV)
トヨタ・クラウンエステート RS(PHEV)
トヨタ・クラウンエステート RS(PHEV)
トヨタ・クラウンエステート RS(PHEV)
トヨタ・クラウンエステート RS(PHEV)
トヨタ・クラウンエステート Z(HEV)
トヨタ・クラウンエステート Z(HEV)
トヨタ・クラウンエステート Z(HEV)

待望の復活。クラウンシリーズを締めくくる「エステート」の実力

現行型16代目クラウンで最後に登場した「クラウン エステート」に長距離試乗を行った。注目はPHEVモデル(RS)が記録した20.1km/Lという驚異的な実燃費だ。SUVへと大胆に姿を変え、待望の復活を遂げた国産唯一の上級ワゴンは、810万円(税込)という価格に見合う価値を備えているのか。走り、使い勝手、そして静粛性まで、その実力を徹底的に検証する。

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RS」で1100km、「Z」で300kmの長距離テスト

いまやSUVが乗用車にとってのデフォルト、基本形と思えるまでになってきたが、トヨタブランドにおけるオーナーカーのトップレンジを担ってきた「クラウン」も、2022年のモデルチェンジで、それまでの典型的セダンからSUV方向に寄せたクロスオーバーとして、その名も「クラウン クロスオーバー」となって発売された。

同時にハッチゲートを持つショートボディの「クラウン スポーツ」とワゴン形状の「クラウン エステート」の3モデルに加えて、それらとはまったく別の、FCV(燃料電池車)の「ミライ」のプラットフォームをベースに開発された新たな「クラウン セダン」も発表され、順次発売されることとなった。

クラウンとしてこの3プラス1ともいうべき4タイプを用意できてしまうところがトヨタの底力とも言うべきところで、現実的にも、このクラスにおける直接的なライバルは不在といった状態にまでなってきている。

トヨタ・クラウンエステート Z(HEV)

トヨタ・クラウンエステート Z(HEV)

このうち、「エステート」は最後発として2025年3月に発売された。「クロスオーバー」の発売から3年近くも要したのは、認証不正の発覚などから開発体制の見直しを図る必要に迫られたこともある。ただ、その間にはクロスオーバーは改良が施され、欧州でも売られるスポーツが発売されていることから、パワートレイン系やシャシー周りなど、それなりに熟成が進んでいることも期待できる。

ちなみに、16世代にわたるクラウンシリーズにおけるワゴンボディの復活は、ゼロ・クラウンと呼ばれた12代目のさらに1世代前の11代目以来となるが、ワゴン市場が縮小している中での敢えての投入は、近年のトヨタのチャレンジ精神が見て取れるところだ。

全長4930mm、全幅1880mm。堂々たる体躯と伸びやかなフォルム

かつてのセダンをベースとしたワゴンとは違い、新しい「クラウン エステート」はそもそも車高が高く、「クロスオーバー」よりさらにSUVとしての印象が強い。遠目で見る分には、しっかりワゴンらしいプロポーションに映るが、近づくとデカくて背が高いことを実感する。このあたりデザインの妙というべきか、巧みではある。

基本的な成り立ちとして、北米向け「カムリ」などで圧倒的な生産数を誇るFF用のGA-Kプラットフォームをベースとするのは「クロスオーバー」や「スポーツ」と同じで、ホイールベースも「クロスオーバー」と共通の2850mmである。

こうして、「セダン」を除きFFプラットフォームをベースとする新生クラウン3モデルではあるが、全モデルが後輪側をモーターで駆動するAWD仕様となる。ここが、縦置きエンジンによる後輪駆動ベースから横置きエンジンの前輪駆動ベースへと変えられたクラウン3モデルの動的特性を語る上で重要なポイントとなってくる。

「エステート」のボディサイズは、全長4930mm×全幅1880mm×全高1625mmと、「クロスオーバー」に対しては車幅が40mm広く、全高が85mm高い。トレッド数値は前後共に「クロスオーバー」(21インチホイール装着仕様)と共通のため、ボディパネル側面のボリュームが増したことになり、外板そのものからして全くの別物だ。さらに「クロスオーバー」とは前後オーバーハングのバランスを変えており、視覚的にもワゴンらしい後方の伸びやかさを得ている。

最近のトヨタにとっての標準エンジンはHEV(ハイブリッド)と言ってもいいと思うが、クラウン3モデルも、全車が4気筒エンジンをベースとしたHEVである。ただし基本として3タイプあり、「エステート」では2.5L自然吸気のTHS2と、同じエンジンをベースとしたPHEVが搭載されている。

この展開は「スポーツ」とも同じだが、「クロスオーバー」にはPHEVは選べず、代わりに2.4Lターボ+6速ATの高性能版HEVが設定される。中でも「エステート」のグレードとパワートレインの展開は明快で、「RS」が2.5LのPHEV、「Z」が2.5LのHEVとなり、この2モデルのみ。今回はRSで計約1100kmほどを、Zでは約300kmの試乗をしている。

考え抜かれたユーティリティ、クラウン史上最も遊べる一台

まず運転席に乗り込む際に、これはやはりSUVだと意識させられるのは、シートの着座位置が高く、腰を落とすというよりも脚を伸ばして乗り込む感じになること。クラウン3モデルの中でも「エステート」の着座位置はもっとも高いこともあり、小柄な方にとっては乗降があまりラクではないかもしれない。

乗り込むと、先に発売されている「クロスオーバー」や「スポーツ」と同じスクエアな造形イメージのインパネが目の前に広がる。新生クラウンにとって、このインパネ周りやドアトリムといった内装のクオリティは評価が分かれるところともなっており、「エステート」のRSでは価格も810万円(税込)と、ドイツのプレミアムブランドも視野に入ってくる域に近づいただけに、上質感といった面ではやや物足りなさを感じさせる。一方で、物理スイッチを整然と並べて、一般的にはわかりやすく使いやすいと思われることや、よく練られた縦置き形状のスマホ用「おくだけ充電」や、その周囲の物置き場など、見た目と実用性の狭間で苦労していることも窺わせる。

ワゴンであるからには当然荷室の使い勝手が問われるが、ここは実際に色々な使い方をしてみないとわからないことが多い。それでも、クラウン エステートの荷室は、タイヤハウス部の出っ張りが少なく形状も工夫されていること、後席を使用した状態でも奥行きがあること、さらに後席を倒した状態での床面もフラットに保たれ、前席シートバックのギリギリまで床面を伸ばすための、トヨタ初というラゲッジルーム拡張ボードを使えばほぼ2mの荷室長(フロア)を確保できるなど、ワゴンとしての機能をしっかり追求したのだろうことは見てとれるものになっている。

加えて、テールゲートを開けて、そのフロア後端に座れる引き出し式デッキチェアや、ちょっとした物を載せたり肘置きにもなるデッキテーブルまでを備えるなど、なかなかのこだわりぶりだ。

高速道路もほぼEV走行。2.5L PHEVの実力は本物か

走りはRS(PHEV)を主体に述べさせてもらうが、エンジンはHEVのZとは基本は同じ2.5Lを搭載しながら最高出力177ps(Zは190ps)、最大トルク219Nm(同236Nm)とHEV仕様より僅かに抑えられたチューニングで、組み合わされるフロントモーター、リアモーターはHEVと同一出力。フロントモーターが「クロスオーバー」、「スポーツ」のHEVに対しては5割超えの出力向上となっているのは、HEVをPHEVと同じ仕様にしたということになる。理由は、車重の増加に対応したというのがトヨタの説明だ。

その車重はRSが2080kgとZよりも190kg重く、常識的に考えて動力性能ではHEVのZのほうが優位ということになる。

現実的には一番大きな違いは、当然ながらEVとして走行できる距離と速度域の差で、18.1kWhの駆動用バッテリー容量を持つPHEVは、メーター表示上でバッテリー容量が0になるまで、基本としてEV走行を続ける。その航続距離はWLTCでは89kmだ。

日常域でEV走行となるのはどのPHEVでも当たり前だが、箱根ターンパイクなどの登坂路で、試しにアクセル全開にしてもエンジンは始動せずモーターのみで駆動していく。高速道路でも同様で、制限速度上限の120km/h以内の巡航域などでも、バッテリー残量が0を示すまではEV走行のみに徹して、バッテリー残量0を示した瞬間にはじめてエンジンが始動する。

トヨタ・クラウンエステート RS(PHEV)

トヨタ・クラウンエステート RS(PHEV)

今回の試乗における一例として、夜9時過ぎに東北自動車道上り蓮田SAの急速充電器で100%まで充電し、東北道、首都高と走り芝公園で降りて麻布経由で世田谷まで一般道で戻るという走行距離65kmの区間において、平均車速48km/h、EV走行比率100%、電費5.1km/kWh、バッテリー残量7%とメーター表示でのデータが得られている。電費から推定されるバッテリー残量に乖離があるのが気になるが、ともかくこの間、高速走行でもエンジンは一度も始動しないままに走りきった。

ちなみに、この時は都内から山形(尾花沢)まで出かけた際の復路で、宿泊先に普通充電器の備えがなかったが、充電性能のチェックも兼ねて往復間に3度の急速充電を行ったことで、無給油で戻ってきている。

さらに、その翌日の箱根への往復に備えて急速充電を行い、バッテリー残量73%まで回復の上で出かけた。その際にバッテリー残量0となるまでEVとして走行できたのは約41kmだった。この場合もその間に一度もエンジンは始動していない。こうしてEVとHEVとしての走行を合わせた約1100kmにおける平均燃費は20.1km/Lという極めて優秀な数値が得られたのだった。

静粛性と乗り心地、残された課題とは

参考までに、一般道とワインディングの走行比率が多かったZの平均燃費は15.1km/Lだった。このクラス、サイズとしては十分に優秀だと思えるし、いずれもがレギュラーガソリンが指定であるところも好ましい。

EVとして走行時、前後のモーターはHEVとも共通のため、特に急加速といった際の速さに感心するほどではないが、スムーズさと、なにより静かさが100km/hを超える領域まで保たれるのは強みとも言える。

というのも、搭載される2.5L 4気筒エンジンは、クラウンのような上級車に載せるものとしては、振動騒音面において物足りなさも感じさせるからだ。中高回転域でうるさいということではなく、エンジンが始動した途端、1000rpmほどの領域からでもエンジン音は耳につくものであることや、同時にフロアから伝わる振動が生じるのは気になる。

HEVのZでは、当然として日常的にエンジンが始動することが多くなるから余計になのだが、動的な質の中でいえば、このパワートレイン系のNV領域だけがアンバランスに感じさせることもあり、どうにも「もったいないな」の思いが残るのだった。

後輪操舵「DRS」と4WDE-Four」がもたらす上質な走り

走りの印象としては、まず発進時はリアからのモーターによる駆動力を必ず与える制御になっているので、僅かながらも押し出し感を伴ったスムーズな動き出しとなる。ここはE-Fourを採用している強みのひとつ。

フロントモーターの最高出力134kWに対してリアモーターは40kWに過ぎないのだが、発進時はもちろんとして、コーナリングにおける操舵角やアクセルワークに応じた駆動力を制御することで、ライントレース性や安定性を向上させることにもなっている。

当然として、雪路などでの発進性や安定性にも効果は大きい。制御の在り方に細かい点で注文したい点は残るにしても、「エステート」に限らず「セダン」を除くクラウン3モデルでは、どれを選んでも黙ってAWD(E-Four)仕様であることは大きなメリットだ。

もうひとつの特徴に、リアサスペンションに「クロスオーバー」「スポーツ」と同様にDRS(後輪操舵システム)を備えていることがあり、最小回転半径5.5mというボディサイズやホイールベースに対して、高い小回り性能を得られていることはまず実感できる。

またハンドリングにおいて、選択された走行モードごとに、回頭感重視であったり安定性のバランス重視、特に後席の快適性を重視したリアコンフォートモードは、70km/h以上では操舵時に後輪を前輪と同相に大きめにステアさせることで、乗員の横揺れを小さく抑えるといった制御を行う(と説明されている)が、高速道路走行時に後席に座っていた乗員に聞く限りでは「よくわからない」とのことであった。

むしろ、ドライバーからすると、車線変更では平行移動的に横Gの発生が弱くなる感覚は伴い、同時にロールも抑えられた感があるので、効果はあるものと感じられている。

光る美点と、さらなる熟成への期待

さらに、レーンキープアシスト(トヨタにおける呼称はレーントレーシングアシスト)の制御が秀逸で、過剰な修正やセンタリングは抑制されており自然な感覚でドライバーの修正を受け入れること、またトヨタ車が得意としてこなかった直進性においても、落ち着いて真っ直ぐに走る感覚が得られており、高速走行時のリラックスしたドライビングができるものとなっていた。

乗り心地に関しては、路面からの大きめの入力に対してはAVS(電子制御サスペンション)の効果もあり、しっかりと、それでいて優しく受け止めるのは好ましいが、一方で小さな凹凸やザラザラした路面の感覚を拾いあげてフロアに伝えてくるのが気になる。21インチの大径タイヤも、銘柄的に判断しても奢っている感じだし、それなりに策は施しているのだろうが、足周り系、パワートレイン系ともにNVに関しては、より手を入れてほしい。

そこは今後のさらなる熟成への願望として、多目的に使えそうな国産唯一の上級(SUV)ワゴンの存在意義は大きいし、しかも数少ないPHEVを用意し、文句のない圧倒的な燃費性能も備えている。HEVのZも含めて、この価格でこの内容が実現できるのはトヨタならばこそ、との思いが強く残るものだった。

【SPECIFICATION】トヨタ・クラウンエステートRS

■車両本体価格(税込)=8,100,000円
■全長×全幅×全高=4930×1880×1625mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=2080kg
■エンジン形式/種類=-/直4DOHC16V
■総排気量=2487cc
■最高出力=177ps(130kW)/6000rpm
■最大トルク =219Nm(22.3kg-m)/3600rpm
■モーター最高出力/前:後=182ps(134kW):54ps(40kW)
■モーター最大トルク =270Nm(27.5kg-m):121Nm(12.3kg-m)
■トランスミッション形式=電気式無段変速機
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:235/45R21、後:235/45R21
問い合わせ先=トヨタ自動車 TEL:0800-700-7700

【画像36枚】ワゴンか、SUVか。新型「クラウン エステート」流麗なスタイリングと機能的な内装を写真で見る

斎藤慎輔 S. Saito/宮門秀行 H. Miyakado 

AUTHOR

国産自動車メーカーの開発ドライバー出身という異色の経歴をもつモータージャーナリスト。深い洞察力に基づく車両評価、特に動的性能の分析に定評がありファンも多い。長距離じっくり乗って評価するスタイルをモットーとしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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