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ボーイング747を牽引した名車、VW「トゥアレグ」が歴史に幕。2026年生産終了を前に「FINAL EDITION」を設定

VWの旗艦SUV2026年をもって生産終了へ

フォルクスワーゲンは2025年10月16日、同社のプレミアムSUV「トゥアレグ(Touareg)」の現行(3代目)モデルの生産を2026年に終了すると発表した。これに伴い、このプレミアムSUVの最後の生産年を記念する特別仕様車「トゥアレグ FINAL EDITION(ファイナルエディション)」が設定される。このモデルは2026年3月末まで注文が可能で、納車はすべての装備ラインで「FINAL EDITION」として行われる。ドイツ本国での価格は7万5025ユーロ(約1320万円)からと案内されている。

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随所に「FINAL EDITION」の刻印。専用の内外装ディテール

この「FINAL EDITION」は、内外装に専用のデザイン要素が与えられているのが特徴だ。すべての装備ラインにおいて、リアドアのウィンドウサラウンドに「FINAL EDITION」の文字がレーザー刻印されるほか、シフトセレクターのレザーにも型押しされる。さらに、照光式ダッシュパネルトリムや照光式シルパネルモールディングにも、この特別なモデル名が表示される。

日本未導入となった「3代目」はどんなモデルだったのか

3代目トゥアレグは2018年にデビューしたが、残念ながら日本市場へは導入されなかったモデルである。それゆえに、日本のファンにとっては馴染みの薄い世代となってしまったが、この3代目はVWのフラッグシップとして大きな役割を果たしてきた。

3代目トゥアレグは、モダンなラインと抑揚のあるボディパネル、そしてスチールとアルミニウムを組み合わせた軽量素材による新しいボディが特徴であった。ホイールベースは2904mmへと拡大される一方、全高は7mm低減され、その外観はダイナミックなキャラクターを強めていた。コクピットは全面的に刷新され、デジタル革新、コネクティビティ、先進的なアシストシステムが搭載され、快適かつ安全な運転が追求された。また、最適化された電子機械式アクティブスタビライゼーションシステムは、1秒間に最大400回もロールの動きを検知し、あらゆる地形で最適な調整を行うことで、安全な運転体験を保証した。

ラインナップの頂点に立ったのは、2020年秋から設定された「トゥアレグ R ハイブリッド」である。これはシステム最高出力340kW(462ps)、最大トルク700Nmを発生するプラグインハイブリッドSUVで、最高速度は250km/hに達した。3代目トゥアレグは、その高い走破性と共に、最大3.5トンの牽引能力という優れた実用性も兼ね備え、デビュー以来、世界で26万5千台以上が販売された。

歴史は2002年から。プレミアムセグメントを切り拓いた初代

トゥアレグの歴史は2002年に始まる。フォルクスワーゲンはこの初代トゥアレグとサルーンの「フェートン」をもって、23年前に初めてプレミアムセグメントへ参入した。初代トゥアレグは、ブランド初のオフロード車として新しいセグメントを開拓すると同時に、ブランドイメージを新たなレベルへと引き上げた。そのサイズ、装備、そして技術により、瞬く間にラグジュアリークラスでの地位を確立した。

初代モデルは、電子機械式ロールスタビライゼーションや6段階のレベル設定が可能なCDCエアサスペンションといった多くの革新技術を搭載し、2002年秋の市場導入直後から高い評価を得た。水深58cmまでの走行や最大45度の傾斜を登ることも可能であった。特に象徴的だったのは「トゥアレグ V10 TDI」で、当時のVW最強のディーゼルエンジンであった5リッター10気筒エンジンを搭載。230kW(313ps)のパワーと750Nmの最大トルクを発生し、2.5トンの車体を0-100km/hで7.8秒で加速させた。初代は2009年までに47万1000台以上が販売される成功を収めた。

VW初のハイブリッド車を導入した2代目

2010年に登場した2代目は、全長と全幅が拡大され、豪華な快適性がさらに強調された。また、この2代目ではフォルクスワーゲン初のハイブリッド車が導入された。スーパーチャージャー付きV6ガソリンエンジン(245kW/333ps)と電気モーター(34.3kW/46ps)を組み合わせたフルハイブリッドシステムは、システム合計で279kW(380ps)を発生。0-100km/h加速6.5秒、最高速度240km/hという性能と、8.2L/100kmという平均燃費を実現した。2代目は2018年までの生産期間中に48万3000台以上が販売された。

3世代にわたるトゥアレグの累計販売台数は120万台以上に達する。ヨーロッパ、特にドイツが重要な市場である一方、現在は世界39カ国で販売されている。トゥアレグは、その時代ごとの革新技術を搭載し、時にはそれらの技術が後に小型車セグメントにも展開されるなど、ラグジュアリークラスの技術を誰もがアクセスできるようにする役割も担ってきた。

ダカール3連覇、ボーイング747牽引……トゥアレグが残した「伝説」

トゥアレグはその性能と堅牢性を示す数々の記録も打ち立てている。オフロードレースでは、フォルクスワーゲン・モータースポーツが開発した「レース・トゥアレグ」がダカール・ラリーで2009年から2011年まで3連覇を達成した。2005年には、自動運転車両のレース「DARPA Grand Challenge」において、トゥアレグをベースにした「スタンレー」が212kmの砂漠ルートを人間の介入なしで走破し、優勝した。これは自動運転技術のマイルストーンとなり、現在「トラベルアシスト」と呼ばれる部分自動運転システム開発の始まりともなった。

さらに2006年には、V10 TDIモデルが約155トンのボーイング747を150m以上牽引するという世界記録を樹立し、世界を驚かせた。この実験では標準のエンジン、ギアボックス、エアサスペンションが使用され、その並外れた性能と堅牢性が証明された。2011年には、V6 TDIモデルがアルゼンチンからアラスカまでを結ぶ「パンアメリカーナ」2万2750kmを11日17時間22分で走破し、当時の世界記録を4日間も更新している。

2002年の登場以来、20年以上にわたりフォルクスワーゲンの技術的先駆者であり続けたトゥアレグ。その内燃機関モデルの歴史が、2026年をもって一つの区切りを迎えることになる。

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※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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