1965年式 フォルクスワーゲン タイプ3バリアントに乗る「さきぽん」さん
2025年9月28日、京都・嵐山高雄パークウェイで開催された西日本最大級のクラシック・フォルクスワーゲンイベント「VW Autumn」。その会場で、1965年式「タイプ3バリアント」の傍らに佇む26歳の女性オーナー、「さきぽん」さんに話を伺った。現代のクルマから60年前のクラシックカーへ乗り換え、このクルマに乗るために免許の限定解除までしたという彼女の、等身大の空冷VWライフを紹介しよう。
【画像19枚】おしゃれなシフトノブにレトロな内装。26歳オーナー・さきぽんさんと愛車「タイプ3バリアント」の素敵なフォトギャラリー
「かわいい」直感から始まった旧車探し
秋の訪れを感じさせる快適な気候に恵まれた嵐山高雄パークウェイの会場で、さきぽんさんが愛車とともに取材に応じてくれた。彼女がこの1965年式タイプ3バリアントに乗り始めたのは、取材時からおよそ1年半ほど前のこと。それまではごく普通の現代車に乗っていたという彼女だが、あるとき旧車のイベントに足を運び、そこで目にしたタイプ3バリアントの姿に「見て、かわいいなと思って」と一目惚れしたことが全ての始まりだった。

特定のモデルというよりはそのスタイリングに惹かれた彼女は、VWという枠組みを超えて「とにかくバリアント」という条件でクルマ探しを開始した。もし見つからなければ車種を広げて探す覚悟もあったようだが、幸運なことにワーゲンに乗っている仲間から情報が舞い込む。もともと周囲にワーゲン乗りの知人がいたという恵まれた環境もあり、「近場の人やったんで、それを譲ってもらって」と、とんとん拍子に個人売買で譲り受けることになったそうだ。
このクルマのためにマニュアル免許を取得
運命的な出会いを果たしたバリアントだが、オートマチックではなく、マニュアル車。さきぽんさんはこのクルマに乗るために、オートマ限定免許の限定解除を行ったという。納車から1年半が経過した現在では、「普通に走る分には大丈夫かなって感じです」と語るように、運転にはすっかり慣れた様子だ。過去に一度エンジンが止まった経験はあるものの、それ以外に大きなトラブルはなく、過度な不安を感じることなくドライブを楽しんでいる。

搭載されるエンジンは1500cc。メンテナンスに関しては、前のオーナーが世話になっていた旧車メインのショップで引き続き診てもらっているとのことで、主治医が引き継がれている点は、旧車維持における大きな安心材料といえるだろう。
前オーナーの愛情を受け継ぐ「男前」なスタイル
さきぽんさんのバリアントは、かわいらしいボディ形状に対し、足元にはゴツいタイヤを履き、ルーフキャリアやリアのサンシェード、ラックなどを装備した、どこかアウトドアテイストを感じさせる「男前」な仕立てが特徴だ。実はこれらの装備はすべて、前のオーナーが仕上げた状態のまま譲り受けたものである。

車内のシフトノブも元から装着されていたおしゃれなものが残されており、ボディの状態も塗り替えられた形跡があまりないほど綺麗だった。彼女自身が「ほぼほぼ何も手をつけず、そのままの状態ですね」と語る通り、前オーナーがいかにこのクルマをきれいに維持し、大切に仕上げてきたかが窺える。彼女はこのスタイルを崩すことなく、そのままの姿を愛しているようだ。
不便さも含めて愛おしい、空冷VWとの日々
普段は仕事が休みの日に、「多い時は週2ペースぐらい」でステアリングを握る。これまでに一番の遠乗りでは、滋賀から和歌山で開催されたVWイベント「オレンジバグ」まで走ったこともあるという。

もちろん、60年前のクルマゆえの苦労もある。今年の夏は猛暑だったこともあり、「暑くて乗れなかったんで」と苦笑いするように、エアコンのないこのクルマに乗ったのはわずか1回だけだったそう。また、保管場所は青空駐車場で、ボディカバーをかけて維持している。雨の日などは「水がたまっちゃうんで、よけながら」とカバーを扱うのが大変だと語るが、それもまた旧車と付き合う上での儀式のようなものかもしれない。
現代のクルマにはない不便さを乗り越え、自ら4速MTを操り、お気に入りのスタイルで走り出す。26歳の女性オーナーと1965年式バリアントの幸福な関係は、これからも続いていきそうだ。
【画像19枚】おしゃれなシフトノブにレトロな内装。26歳オーナー・さきぽんさんと愛車「タイプ3バリアント」の素敵なフォトギャラリー


















