


















































BEVでも「3列シート」を諦めない、多才なコンパクトSUVの進化論
メルセデス・ベンツは2025年12月8日、新型「GLB」を世界初公開した。最大7人乗りが可能な多才なコンパクトSUVとして人気を博してきたGLBが、電動化技術とデジタル体験を大幅に進化させて生まれ変わった。800Vアーキテクチャ採用による最大631kmの航続距離や、革新的なMB.OSの搭載がハイライトだ。ドイツでは同日よりBEVモデルの受注を開始し、2026年春の市場導入を予定しているこの「日常のヒーロー」の全貌をお伝えする。
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全長4732mmへ拡大。フランク新設と「大人が座れる3列目」で実用性は新次元へ
新型GLBの最大の特徴は、そのパッケージングの進化にある。「多才な日常のヒーロー」と銘打たれた新型は、従来同様に5人乗りと7人乗りを選択可能とし、家族や友人との移動に柔軟に対応する。
ボディサイズは先代モデルおよび兄弟車のEQBと比較して拡大された。全長は4732mmで、従来のEQB比で+48mm、先代GLB比で+98mm延長されている。全幅は1861mmとなり、EQBおよび先代GLBから+27mm拡大した。一方で全高は1687mmと、-14mm低められたことで、よりスポーティなプロポーションを獲得している。

特筆すべきはホイールベースの延長である。2889mmという数値は、先代およびEQBと比較して+60mmもの延長となる。この拡大分は主に居住空間の向上に充てられており、2列目の足元スペースはEQB比で最大+68mm拡大した。また、1列目と2列目のヘッドルームも標準装備のパノラミックルーフの効果も相まって拡大しており、特に2列目と3列目の居住性が改善されている。3列目シートには身長1.71mまでの乗員が快適に乗車可能で、ドア開口部の拡大やイージーエントリー機能の調整幅拡大により、乗降性も向上した。
積載性においても電気自動車ならではのメリットが活かされている。フロントには、このモデルファミリーで最大となる127Lの「フランク」が設けられた。飲料ケースや充電ケーブルなどを収納するのに十分な容量だ。リアのラゲッジルームは5人乗り仕様で540L、後席を倒せば最大1715Lまで拡大する。2列目シートは前後140mmのスライドが可能で、荷物の量や乗員の体格に合わせた調整が可能となっている。
充電10分で260km回復。自社製モーター「EDU 2.0」と800Vシステムがもたらす圧倒的機動力
新型GLBの電動パワートレインは、効率と性能を両立する最新世代のものが採用された。市場導入時には「GLB 250+」と「GLB 350 4MATIC」の2モデルが展開される。
両モデルともに、使用可能エネルギー容量85kWhの新型リチウムイオンバッテリーを搭載する。最大の特徴は800Vの電気アーキテクチャを採用した点だ。これにより充電性能が飛躍的に向上しており、最大320kWの急速充電に対応する。わずか10分間の充電で最大260km(WLTP)走行分を回復可能としており、長距離移動の利便性を大きく高めている。
駆動システムには、自社開発の「Electric Drive Unit (EDU) 2.0」が採用された。リアアクスルに搭載された永久磁石同期モーター(PSM)は、2速トランスミッションと組み合わされる。1速(ギア比11:1)は発進加速や登坂、牽引時に力強いトルクを発揮し、2速(ギア比5:1)は高速巡航時の効率を最大化する設計だ。

エントリーモデルとなる「GLB 250+」は、最高出力200kW(272ps)、最大トルク335Nmを発揮する後輪駆動モデルで、WLTPモードでの航続距離は最大631kmに達する。一方、最上位モデルの「GLB 350 4MATIC」は、フロントに80kWのモーターを追加し、システム合計で最高出力260kW(353ps)、最大トルク515Nmを誇る。0-100km/h加速は5.5秒という俊足ぶりだ。
4MATICモデルには、このセグメントで初となる「ディスコネクトユニット(DCU)」が採用された。これは負荷が低い状況でフロントモーターを機械的に切り離すシステムで、フロントアクスルの抵抗損失を最大90%削減し、実用航続距離の伸長に寄与する。
また、新型GLBは牽引能力にも優れており、BEVながら最大2トンの牽引が可能である。これにより大型のキャンピングカーを牽引することも可能となり、アウトドアユースでの可能性を広げている。
BEVだけではない。新開発1.5Lエンジン搭載の「48Vマイルドハイブリッド」も数ヶ月後に登場
今回の発表ではBEVモデルが主役となったが、メルセデス・ベンツは内燃機関を求める市場ニーズにも応える準備を整えている。市場投入の数ヶ月後には、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載したモデルも追加される予定だ。
このハイブリッドモデルには、新開発の1.5L 4気筒ガソリンエンジン(M 252)が搭載される。ミラーサイクル燃焼を採用し、12:1という高圧縮比を実現した高効率エンジンだ。これに、電気モーターを内蔵した新型の8速デュアルクラッチトランスミッション(8F-eDCT)が組み合わされる。モーター出力により低速域での加速をアシストし、特定の条件下では電気のみでの走行やコースティングも可能とする。
スクエアなSUVフォルムでCd値0.28。伝統の機能美と最新のエアロダイナミクスを融合
エクステリアデザインは、直立したフロントエンドや急角度のAピラーなど、SUVらしい力強いプロポーションを維持しながら、空力性能を徹底的に磨き上げた。Cd値(空気抵抗係数)は0.28という優れた数値を達成している。これは、フロントの接合部のシール処理、ほぼ完全にフラットなアンダーボディ、空力的に最適化されたホイールなど、細部にわたる改良の結果である。

フロントマスクには、94個のLEDスターが散りばめられたブラックパネルグリルが採用され、新世代のメルセデス・ベンツであることを主張する。また、国ごとの法規に合わせて、スリーポインテッドスター自体も発光するギミックが取り入れられた。
生成AIが「友人」になる。MBUXスーパースクリーンと「MB.OS」が変えるコクピット体験
インテリアのハイライトは、ダッシュボード上に浮かんでいるかのように配置された「MBUXスーパースクリーン」だ。26cmのドライバーディスプレイ、35.6cmのセンターディスプレイ、そしてオプションで助手席前にも35.6cmのディスプレイが備わる。
システムの中核を担うのは、自社開発のオペレーティングシステム「MB.OS」である。これにより、車両機能、インフォテインメント、運転支援システムなどが統合制御され、定期的な無線アップデート(OTA)によって常に最新の状態が保たれる。

第4世代となるMBUXには、生成AIを活用した「MBUXバーチャルアシスタント」が搭載された。ChatGPT-4oやGoogle Geminiとの連携により、自然な対話が可能となり、ナビゲーションの目的地設定から日常的な質問まで、友人のように答えてくれる。ナビゲーションシステムはGoogleマップをベースとしており、Google CloudのAIエージェントと連携して、充電計画を含めた最適なルート案内を提供する。
Sクラス級の快適性と1000万円からのプライスタグ。日本導入が待たれる「日常のヒーロー」
電気自動車としての快適性も追求されている。ヒートポンプシステムは「VISION EQXX」の開発で得られた知見を活かしたもので、廃熱や外気を利用して効率的に車内を暖める。氷点下7度の環境でも、先代モデルの半分のエネルギーで2倍の速さで車内を暖めることが可能だという。
サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リアにマルチリンクを採用。20インチホイール装着車にはアダプティブダンピングシステムが標準装備され、快適性とスポーティな走りを両立する。

安全性に関しては、最新の運転支援システム「MB.DRIVE」を搭載。欧州仕様では8つのカメラ、5つのレーダー、LiDARを含むセンサー群が周囲を監視する。また、側面衝突時の乗員保護を強化するため、前席中央に展開するセンターエアバッグを標準装備した。
価格はドイツ市場において、GLB 250+が59,048ユーロ(約1067万円)から、GLB 350 4MATICが62,178ユーロ(約1124万円)からとアナウンスされている。日本市場への導入時期や価格については現時点で未定だが、グローバルでの春の市場導入に続く展開が期待される。
【ル・ボラン編集部より】
日本の路上でも「ミニGクラス」として愛されるGLB。その電動版EQBは、バッテリーの重量増がむしろ重厚な乗り心地を生み、「走りならEQB」という評価さえあった。今回の新型は、その美点を継承しつつ、800V化と航続距離631kmという数値で、「足の長さ」というBEVの懸念点を完全に払拭してきた。特筆すべきは、単なる電動化の枠を超えたパッケージの執念だ。フランクの設置や居住性を増した3列目は、内燃機関の流用とは一線を画す。BEVでも「7人乗り・四角いボディ」を諦めない姿勢は、日本のファミリーからも間違いなく支持を集めるはずだ。
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