1985年式 アルピナ B9 3.5クーペ(E24型)
2025年11月29日、創業60周年とブッフローエ生産終了の節目に開催された「ALPINA BUCHLOE FINAL MEETING」。全国から約140台の新旧モデルが集結した熱気あふれる会場で、こだわりの愛車と共に参加したオーナーたちを直撃取材した。彼らはなぜアルピナを選び、愛し続けるのか。それぞれの物語と情熱に迫る連続インタビューをお届けしよう。
【画像7枚】ゴールドのデコラインが映える。20年の眠りから覚めた「アルピナB9 3.5クーペ」の全貌
20年の眠りから覚めた「世界一美しいクーペ」。2002ターボオーナーが選んだB9
「20年間不動だったんですよ」。
開口一番そのように話してくれた井野さん(取材時63歳)は、現在、BMW 2002ターボとフォルクスワーゲン・ゴルフ1 GTIエッティンガーも愛用。今回のミーティングに参加したE24型のアルピナ B9 3.5クーペは1985年式で、2018年に購入したのだという。
いかにも使い古された感がある決め台詞だが、BMWの初代6シリーズであるE24型は「世界一美しいクーペ」として、いまでも数多くのクルマ好きを魅了している。その洗練されたスタイルは最新のパーソナル・クーペと比較してもまったく見劣りしない。それどころか、場合によってはE24のほうが数段美しいと思えるケースすらあるだろう。

実用性の高さも特徴のひとつとしている初代6シリーズをベースとし、BMW公認チューナーのアルピナが1982年に発表したのがB9 3.5クーペであった。アルピナは世界的に人気を博し、当時はレースシーンにおいても高い技術力を見せつけていたが、B9 3.5クーペには大排気量NAエンジンを搭載。派手さよりも上品さを感じさせる外観を採用し、大型化されたフロントリップスポイラー、お馴染みのアルピナストライプ、端整な造形の16インチホイールなどを装備していた。
4000rpmからが本領発揮。希少色アガットグリーンで味わう「アルピナ・マジック」
オーナーの井野さんもスタイルのよさと大排気量NAエンジンならではのフィーリングがB9 3.5クーペの魅力とのことで、このように話してくれた。
「このクルマを選んだ理由は、なんといってもクーペボディだったからです。そして、珍しいアガットグリーンの外装色もこだわりのポイントになっています。B9 3.5クーペが積んでいるNAエンジンは、4000rpmからカムに乗ってパワフルかつ官能的な走行フィールや加速感を堪能することができます。まさにアルピナらしい走りですね」

以前から自動車趣味人は、アルピナの真髄だといえる“スーパースポーツカーに匹敵する走行性能と優れた快適性が高次元で共存していること”を「アルピナ・マジック」と呼んできたが、上質な乗り心地のよさについても言及してくれた井野さんはB9 3.5クーペでのツーリングを楽しんでいる。購入時に6万9000kmだった累計走行距離は、7万5000kmまで伸びたそうだ。
「アルピナらしい速さ」を求めたフルレストア
いまでこそ、B9 3.5クーペを相棒として、スタイルのよさ、胸のすくパフォーマンス、上質な乗り心地などを満喫できているが、20年間不動だった個体を購入したため、フルレストアしたのだという。
「買ってからの苦労話をするなら、フルレストアしたことですね。その際にトランスミッションをATからMTに変更し、クロスミッションにしました。よりアルピナらしい速さと、走りのよさを味わえるようになったといえます」

今後、増車の計画はありますか? という問いに対して「欲しいクルマは、ありません」と回答してくれた井野さんは、これからも力強い走りを堪能できる愛車たちと充実したカーライフを過ごしていくに違いない。
【画像7枚】ゴールドのデコラインが映える。20年の眠りから覚めた「アルピナB9 3.5クーペ」の全貌