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2026年3月某日、自動車業界において異例の光景が広がった。日産自動車のテストコースである「グランドライブ(追浜)」に、スズキ、ホンダ、マツダ、三菱、レクサス、そして日産の国内6ブランドの関係者が一堂に会したのだ。メーカーの垣根を越えた「協調領域」としての合同EV取材会。その背景には、国内ブランドの電動車両ラインアップが充実しているにもかかわらず、日本市場におけるEV・PHEV比率が依然としてグローバルに比べて低調であるという課題意識がある。いわば「他人の陣地」である日産のコースで各メーカーのスタッフが和気あいあいと情報交換し交流している空間には、それぞれの方針は異なりつつも、次世代のEV/PHEVを開拓していこうという「同志」のような連帯感が漂っていた。
【画像49枚】日産リーフ、スズキeビターラ、レクサスRZ……国産6社が誇る最新EV&PHEVの雄姿を写真でチェック
BEVの普遍的な美点。問われるのは「プラスアルファ」の独自性
今回の試乗会では、日産リーフ、スズキ eビターラ、レクサス RZ550e “F SPORT”、ホンダ N-ONE e:、三菱アウトランダーPHEV、マツダ MX-30 ロータリーEVの順に、車格もパワートレインもバラバラな6台を連続して乗り換える貴重な機会を得た。コース1〜2周という短時間であったが、だからこそ浮き彫りになる直感的な印象は少なくない。
まずBEV勢について言えるのは、いずれもバッテリー搭載による低重心化とボディ剛性の強化、そしてスムーズな加速と静粛性といった「BEVとしての基本メリット」は共通して享受できるということだ。逆に言えば、それ以外の部分——パッケージングや味付けの違い——に留まりがちで、差別化が難しいとも言える。
例えば、今回が初乗りとなったスズキの「eビターラ」。BEVの世界戦略車の第1弾となるBセグメントSUVだが、パッと乗った瞬間から意外なほどの剛性感があり、従来のスズキ車のイメージを覆す上質感に驚かされた。車重を意識させないスムーズな加速は、世界戦略車としての素質の高さを十分に感じさせるものだった。
日産のリーフはすでに試乗する機会を得ていたが、熟成と進化を重ねた現行型は、まさに日本におけるBEVのあり方のスタンダードと呼ぶにふさわしい滑らかな走り。筆者の下手な解説よりも、モータージャーナリスト渡辺慎太郎氏による試乗レポートをぜひお読みいただきたい。
一方で、BEVの差別化に明確に成功していると感じたのがレクサス「RZ550e “F SPORT”」だ。新たに搭載された「ステア・バイ・ワイヤ」は、TVゲームなどで実車とは異なるインターフェースに触れてきた機会の多いドライバーなら、それほど違和感を覚えないだろう。筆者自身も初乗りですぐに順応できた。とはいえ、気になるのは駐車場や狭い路地などで切り返しを多用するシーンでの使い勝手であり、そちらはいずれ試してみたい。ただ、アクセルを踏み込めば圧倒的な加速感が押し寄せ、EVにおけるスポーツドライビングのひとつの回答を垣間見た気がした。
RZのような独自の世界観とスポーティネスの強調は明確な個性となるが、より多くのユーザーにリーチすべき大衆モデルにおいては、電費や価格以外の訴求要素をいかに付加するかが、今後の大きな課題となるだろう。
PHEVが魅せる、メーカーごとの「思想の爆発」
対照的に、システムそのものが各メーカーの「個性の塊」となっているのがPHEVだ。
2024年に大規模なマイナーチェンジを受けた三菱「アウトランダーPHEV」は、EV航続距離が100kmを超える102kmへと伸長し、EV走行の領域がさらに拡大している。長年にわたる熟成を感じさせる仕上がりで、EV走行とエンジン駆動の切り替わりも極めてなめらか。日常領域ではほとんどEVのような感覚で乗れそうだ。巨躯を感じさせないスムーズさに加え、力強い安定感と加速が非常に印象的だった。PHEVをコア技術と位置づける三菱ならではの洗練ぶりである。
そして、マツダの「MX-30 ロータリーEV」。基本はEVとして走るが、アクセルを踏み込んで発電用に搭載されたロータリーエンジンが作動した時の、リズミカルな音と感触が独特だ。ここにどこまで価値を見出すかは人それぞれだが、個性的なパッケージングも含めて、マツダらしい冒険心と未来への提案が心地よく感じられた。各社の「こだわり」がダイレクトに伝わってくるのがPHEVの面白さだ。
日常域で光る恩恵。日本の電動化を牽引する「軽EV」という最適解
今回の6台の中で、個人的に最も「おっ!」と感心し、読者にお勧めしたいと感じたのが、ホンダ「N-ONE e:」と、今回はステアリングを握らなかったがすでに試乗したことのある日産「サクラ」だ。ホンダはN360から続く「手の届くEV」として、N-ONE e:を開発したという。
もちろん、今回のような広大なテストコースでは、軽EVは他モデルに比べてパワー不足を感じる場面もあった。しかし、日常域においては圧倒的な扱いやすさが光る。さらに、小型・軽量であるがゆえに、BEV化によるスムーズな出力特性、低重心化、剛性感といった美点の恩恵をダイレクトに感じやすいのだ。
筆者も地方在住だが、毎日の移動距離が数十km程度で、下道がほとんどというユーザーにとって、軽EVは最適なソリューションになり得る。インフラや航続距離の不安が囁かれる中、この「ボトムライン」のEVが普及していくことこそが、日本におけるEV、そしてマルチソリューション普及の最大の要となるのではないだろうか。
ライバル同士が手を取り合い、多様な選択肢を一堂に提示した今回のメーカー合同EV取材会。日本の電動化の現在地は、我々が想像する以上に豊かで、個性に溢れている。





