絶対王者が見せた「140年目の本気」
メルセデス・ベンツ日本は2026年6月11日、メルセデス・ベンツのフラッグシップモデル新型Sクラス(「S 450 d 4MATIC」)を発表し、全国のメルセデス・ベンツ正規販売店ネットワークを通じて予約注文受付を開始した。価格(税込)は15,980,000円。なお、S 580 4MATIC long(こちらは23,650,000円)の発表および新型Sクラスの納車は2026年9月以降に予定されている。

虎ノ門ヒルズ ステーションタワー「TOKYO NODE HALL」で行われた発表会の様子。メルセデス・ベンツ日本 社長兼CEOのゲルディンガー剛氏(左)と、新型Sクラスの開発責任者、フランク・ヴンドラック氏(右)
【画像72枚】初採用の“光るグリル”や100色から選べる超絶オーダーメイドなど、新型Sクラスの詳細を確認する
格調高い顔つきのエクステリア
Sクラスは、いつの時代も、その時点で持てる全ての技術を投入し、世界の自動車の指標とされることを目指してきた、140年の歴史を持つメルセデス・ベンツのフラッグシップモデルである。今回の新型Sクラスでは、車両全体の50%以上、約2700点の部品が新規開発または再設計された、モデル史上最大規模の改良が行われた。
これにより新型Sクラスは、「Sensual Purity(センシュアルピュリティ:官能的純粋)を追求したデザイン」、「人間中心の最新技術」「安全性の更なる追求」など、「現代に求められるラグジュアリー」を再定義し、その充実を図った意欲的なモデルに仕上がっている。
エクステリアにおいてまずフロントマスクで目を引くのは、従来比約20%拡大のラジエターグリルであろう。クロームのルーバーは従来の3本から4本へと変更され、やはりクローム仕上げのスターパターンとの組み合わせで格調高さを演出。Sクラスとしては初めてイルミネーテッドラジエターグリルを採用し、スターデザインをあしらったDIGITALライトとともに、その存在感を一層強調している。
サイドでは「Mercedes-Benz」のレタリングが浮き出る新デザインのブランドロゴプロジェクターライトを採用、夜間乗降時に足元を照らす。リアエンドでは、片側3つのスターデザインが印象的な新型リアコンビネーションランプがアイデンティティを強調。トランクリッドに配された2分割のトリムストリップはクローム仕上げとなり、刷新されたエクステリアにアクセントを加えている。
「MBUXスーパースクリーン」標準装備のインテリア
インテリアは、新設計のインストルメントパネルやドアトリム、センターコンソールにより、デジタルとアナログのラグジュアリーの最高水準での融合が目指されている。標準装備の「MBUXスーパースクリーン」(メディアディスプレイ:14.4インチ、助手席用ディスプレイ:12.3インチ)はトリムの上に浮かんでいるかのような効果によって広がりを演出。ステアリングには一部に物理ボタンを採用、操作性向上を図った。
新デザインのセンターコンソールは、トリム面積を拡大して存在感を強調。ウォールナット材にV字溝を施した新デザインの「オープンポアアンバーブラウンフィッシュボーンパターンウッド」が標準で備わる。
また、デジタル・ベント・コントロールとエナジャイジングエアコントロールにより、室内空気環境の面でも大きな進歩を遂げたという。照明付きエアベントは選択された換気モードに合わせて自動的に調整。新しい電動フィルターは、食卓塩の粒子より最大で1200倍微細な粒子さえも、イオン化して除去。これにより、約90秒ごとに車内の空気が浄化され、すべての乗員にとって常に清潔な環境が保たれるとのこと。
内装色にはブラック、マキアートベージュ/マグマグレーに加え、ラグジュアリーファッションの世界から着想を得たという新色「ビーチブラウン/ブラック」を採用。前席にはシートヒーター連動のヒーテッドシートベルトを初採用した。
S 450 d 4MATICには新たに「リアコンフォートパッケージ」をオプション設定。ディスプレイサイズを13.1インチに拡大したMBUXリアエンターテインメントシステムや、後席左右それぞれに用意されたMBUXリアリモートコントローラーが備わる。後席の安全性を向上させるリアベルトバッグも新規オプションとして設定している。
MANUFAKTUR Made to Measureによる幅広いカスタマイズ
新型Sクラスでは、従来のMANUFAKTUR(マヌファクトゥーア)、MANUFAKTUR Exclusive(マヌファクトゥーア・エクスクルーシブ)よりもさらに幅広い内外装の選択肢を提供する「MANUFAKTUR Made to Measure(マヌファクトゥーア・メイド・トゥ・メジャー)」を初導入。
これは従来のマヌファクトゥーアをさらに拡張させたプログラムで、担当者による1対1のコンサルテーションを通じ、カラーや素材、クラフトディテールなど多彩な選択肢の中から、ユーザーの理想の一台の仕様を一緒に検討していくというもの。
外装色には100以上のカラーバリエーションを用意、その中には、メルセデス往年の名車と同じカラーも含まれ、ブランドのヘリテージを現代のモデルに反映させることも可能だという。特定のカラーを希望する場合には、技術的な実現可否を都度確認し、理想により近い仕様を検討していく。
インテリアはPANTONE(パントーン)のポートフォリオに基づく400色以上のカラーから選択可能。ステッチカラーは80色以上から選択できるほか、細部のパーソナライゼーションとして、ヘッドレストクッションやフロアマット、シートクッションに、希望の文字やロゴの刺しゅうを施すことができる。イルミネーテッドステップカバーでは、イルミネーションカラーを70色以上から選択できるほか、文字変更にも対応する。
MB.OSとMBUX
新型Sクラスにはメルセデス・ベンツ自社開発のオペレーションシステム「MB.OS」を搭載。インフォテイメントから運転支援、さらにはドライビングパフォーマンスに至るまで車両のさまざまな機能を統合し、より高速な処理性能と、よりシームレスなユーザー体験を実現するとされる。
さらに、メルセデス・ベンツ・インテリジェント・クラウドへの接続により、OTA(Over-The-Air)による無線アップデートを通じて、多数の車両機能に対するソフトウェアアップデートが継続的に行われる。
また、2018年の導入以来コックピットに数々の革新をもたらしてきたというインフォテインメントシステムMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)は、新型Sクラスで第4世代へと進化。その中核にはMB.OSが据えられており車両全体のインテリジェンス向上を実現、これによりMBUXは単なる操作インターフェースではなく、全乗員に寄り添い学習し応答し、体験を磨き続けるパートナーへ進化したとのことだ。
その主な特徴としては、新しいMBUXナビゲーション(Google Cloud の新たなAutomotive AI Agent による車内会話サービスとGoogle Maps を統合したもの)、MBUXバーチャルアシスタント(生成AIを活用したデジタルアシスタント)、MBUXサラウンドナビゲーション(車両および周辺環境の3Dビューと運転支援機能をシームレスに統合し、運転席ディスプレイにてリアルタイムのルート案内を提供)などが挙げられる。
最先端の運転支援・駐車支援システム
新型Sクラスでは、高度な処理能力を誇る高性能コンピューターに加え、10台の外部カメラ(日本仕様ではうち2台は使用されず)、5台のレーダーセンサー、12台の超音波センサーを搭載し、最先端とされる運転支援・駐車支援システムを実現。膨大なデータを用いて学習したAIアルゴリズムがセンサーデータを処理し、周囲の交通状況を高精度に把握するという。
標準装備のMB.DRIVEおよびMB.DRIVE ASSISTには、ディスタンスアシスト・ディストロニックに加え、ステアリングアシストやレーンチェンジアシストなどが含まれる。
駐車支援システムのMB.DRIVE PARKING ASSIST では、車両の両側の駐車スペースを早い段階から検知しスムーズな駐車をサポート、MB.DRIVE PARKING ASSIST 360は、360°カメラシステムによるサラウンドビュー表示に加え、駐車時のホイールのダメージを避けるためのリムプロテクション警告を備えるとのことである。
パワートレインとサスペンション
S 450 d 4MATICには、新型6気筒クリーンディーゼルエンジン(OM 656 Evo)が搭載されている。将来の排出ガス規制に対応するために開発されたというこのエンジンは、より迅速かつ効率的な排気後処理のため、電気加熱式触媒コンバーターを量産車として初採用。さらに、排気ガス再循環(EGR)や冷却システム、クランクケース換気システムの堅牢性向上により、耐久性と効率性のさらなる向上を図っている。
9月発売予定のS 580 4MATIC longに搭載される8気筒ガソリンエンジン「M177 Evo」は、最高出力395kW(537ps)、最大トルク750Nmを発揮。マイルドハイブリッド技術などにより、シームレスな出力特性とエネルギー回生を実現しながら、最新の排出ガス規制基準への適合と、高い静粛性を両立したとされる。
また、全てのエンジンに17kWのインテグレーテッド・スターター・ジェネレーター(ISG)を搭載、低回転域においてインテリジェントなサポートを提供するという。
足周りには、インテリジェントダンパーを備えたAIRMATICサスペンションを装備。ダンパー調整が有効になるとそれぞれのスピードバンプ直前で電子制御によりダンピングを調整。このシステムは、道路の窪みのような短く鋭い不規則な部分(警告として検出・通知される)と、垂直方向の車体移動を引き起こす長いスピードバンプを区別し、後者では快適性向上のため積極的にダンピングが調整されるとのこと。
検出されたスピードバンプの情報はメルセデス・ベンツ・インテリジェントクラウドに最大14日間保存、この情報共有により、同じ場所に接近する他の車両もサスペンションを事前に調整する。他車のセンサーを活用することで、車両自身のレーダーやカメラシステムのカバー範囲を大幅に拡大するというわけである。
さらなる安全性の高みを目指して
Sクラスは安全性の面で常に最先端を走ってきたと言ってよいが、今回の新型モデルでもさらに安全性の向上が目指されている。フロントシートにはPRE-SAFEインパルス(前面衝突被害軽減機能)を全車標準化。後席乗員のための追加エアバッグもオプションで用意、最大15個のエアバッグが搭載可能となった。
また、前席装備のPRE-SAFEインパルスサイドは、側面衝突の直前に展開する唯一の火工式拘束システムで、車両が側面から衝突を受ける前に乗員をより安全な姿勢へと導くとされる。E-ACTIVE BODY CONTROL装着車では、車高を上昇させることで衝撃荷重を剛性の高い車体下部へ分散させ、車体の変形軽減に役立つという。
後部ではリアベルトバッグが快適さを高めるとともに、激しい正面衝突時には肩部分が膨張し、胸部に沿うシートベルト面積を3倍にすることで、胸にかかる負荷のピークの軽減を担う。また、Sクラスならではのクッションエアバッグ(助手席側後席)も引き続き用意。リアエアバッグは激しい正面衝突時の安全性を高めるよう設計されており、後部座席の外側席の乗員の頭部や首にかかる負荷を軽減するとされる。
新型Sクラスは、マイクロLED技術を採用し、最大40%の照度向上を実現したという、新世代のDIGITALライトを採用している。瞬時に状況に適応し、カーブでのより鮮明な照射、そして高い効率性によって安全に夜間の走行を楽しめるという。照射距離を拡大するウルトラハイビームは単に前方への照射だけでなく、ダイナミックに旋回することで照射方向の最適化も図るとのことである。
【ル・ボラン編集部より】
140年にわたり自動車の指標であり続けたSクラス。部品の半数を刷新した今回の改良で特筆すべきは、相反する要素の高次元な融合だ。MB.OSを中核とする巨大なスクリーンや光るグリルの先進性は、一見すると過剰に映るかもしれない。だが、その根底には歴史的カラーをも復刻する400色超のオーダーメイドという、極めてアナログな職人技が息づいている。圧倒的なデジタル知能と人の手による温もり。この二面性を破綻なく共存させ、極上の動的質感としてまとめ上げる手腕こそ、絶対王者たるメルセデスの哲学である。
















































































