コラム

【画像24枚】911の牙城に挑んだFRポルシェたち──トランスアクスル50周年、924~928と幻のプロトタイプの軌跡《LE VOLANT LAB》

2026年で誕生50周年を迎えたトランスアクスル・ポルシェ
2026年で誕生50周年を迎えたトランスアクスル・ポルシェ
1974年に完成したプロトタイプEA425。当初は“アウディ・スポーツ”として世に出る予定だったが、同年末に計画がキャンセルされたため、ポルシェが権利を買い取り924のベースとなった。
1976年に914に代わるエントリー・モデルとしてデビューし、大ヒットを収めた924。フロントに125psを発揮する1984cc直4 SOHC、リアアクスルにデフと一体化した5速MTを搭載する。
1万マイル(約1万6000km)の国際速度記録の樹立を目指し1976年から1977年にかけて開発された924レコードブレーカー。エンジンは250psの2L直4ターボ。しかし一度も走ることなく計画は中止。
1979年に発表された924ターボ。911ターボの技術を流用した2L直4 SOHCシングル・ターボは170psを発生。パワーアップに対応するためサスペンションやブレーキも強化されていた。
1979年に製作された924ターボ・タルガ・プロトタイプ。911タルガの弟分として企画されたものの開発費の都合で1980年に計画が中止された。ポルシェ・ミュージアム所蔵のレアな1台。
グループ4規定に合わせて1980年に400台限定で発売された924カレラGT。ワイドフェンダーのボディに210psの直4 SOHCターボを装備。これは1979年のフランクフルトで公開されたスタディ。
1981年シーズン用のGr.4用ホモロゲモデルである924カレラGTS。エンジンは245psにチューンした2L直4 SOHCターボ。コンペティション仕様の924カレラGTRは375psを発生する。
そのハンドリングの良さから924はラリーカーとしても活躍した。これは1981年のドイツ・ラリー選手権の王座を獲得したヴァルター・ロール/クリスティアン・ガイストデルファー組の“モネ・ポルシェ”924カレラGTS。
1981年のル・マン24時間に出場し、総合7位、GTPクラス3位に入賞した944GTP。KKK製K28ターボを備える2L直4は410psを発生。強化されたギヤボックスは956にも流用された。
924の上級車種として1981年のフランクフルト・ショーで発表、1983年から市販された944。バランスシャフトを備えた2478cc水冷4気筒SOHCを搭載し、ボディもマッシブなスタイルへと変貌した。
フロントの水冷直4 SOHCエンジンと、リアアクスル前に配置したデフと一体化した5速トランスミッションをトルクチューブで繋ぐ944のトランスアクスル構造が良くわかるベア・シャシー。
全モデルに4WDを用意するのを計画していたポルシェが1981年に製作した944ベースのテストカーC32。1969年にVWから依頼され開発した1.6L直4ユニットをリア床下に搭載する。
220psの2.5L直4 SOHCインタークーラー付きターボを搭載し1985年にデビューした944ターボ。これはドイツ政府支援によるサーキットセーフティチーム「ONS」で使用されたもの。
1986年にスタートしたポルシェ・ターボ・カップで使用された944ターボ・カップ。開催を提唱したのは、元ワークス・ドライバーでヴァイザッハ研究所初代所長を務めたヘルベルト・リンゲだった。
924、944シリーズで待望のカブリオレ・モデルが追加されたのは、1989年にマイチェンされた944S2になってから。これは1989年のデビューに先駆けフランクフルトで1985年に公開されたスタディ。
ハーム・ラガーイがリファインしたボディに“ヴァリオカム”を組み合わせた3L直4 DOHCを搭載して1991年に登場した968。これは1993年に追加された軽量仕様のクラブスポーツ。
1992年にラガーイが2人の助手、スティーブ・マーケットとマティアス・クラーとともに試作した968ロードスター。ここで試されたインテリア等のデザインが、翌年のボクスター・プロトへと生かされた。
968クラブスポーツをベースに1台だけ作られたカブリオレのプロトタイプ。装備の簡略化による軽量化や、ローダウン・サスなどを装着し、良好なハンドリングを示したが市販化は実現しなかった。
911に代わるフラッグシップとして1977年にデビューした928。専用設計のV8 SOHC、“ヴァイザッハ・アクスル”を採用したリアサスペンションなど、様々な新機軸をもつ意欲作であった。
アナトール・ラピーヌのデザインによる250mm延長したワゴン・ボディをもつ928-4。1984年に試作され、フェリー・ポルシェ博士75歳の誕生祝いに贈られた。博士は日常のアシに使用していたという。
928幻のバリエーションの1つ、928Sカブリオレ・スタディH21。ペーター・シュッツCEOの肝いりで市販直前までこぎ着けたが、1987年のブラックマンデーの余波を受け計画は中止された。
1992年に登場した928の最終モデルGTS。340psを発生する5.4L V8 DOHC 32バルブ・ユニットを搭載する。1995年まで製造された928だが、その総生産台数は約6万1000台にとどまった。
2026年で誕生50周年を迎えたトランスアクスル・ポルシェ

ポルシェの歴史を彩る、もうひとつのアニバーサリー

ポルシェは今年、2つの大きな節目を迎える。1つ目は、1951年のル・マン24時間レースから始まったモータースポーツ活動の75周年。そして2つ目が1976年発売の924からスタートするトランスアクスル・モデルの50周年だ。

モータースポーツの75周年に関してはすでに7月1日から『75 Years of Porsche Motorsport』として、トランスアクスルに関しては8月25日から『Forever Young. Celebrating Transaxle』というタイトルで、それぞれ特別展がシュトゥットガルトのポルシェ・ミュージアムで開催されることになっている。ここからは、そこに先駆けてポルシェ・ミュージアムの所蔵車を通じたポルシェ・トランスアクスル・モデルの足跡を辿ってみたい。

ポルシェが「トランスアクスル」を採用した切実な理由

トランスアクスルとはトランスミッションとファイナルギア、ディファレンシャルギアを一体化したもので、FRレイアウトにおいてリアアクスル前に配置することで前後重量配分を最適化する目的をもつ。その歴史は古く、1938年にはアルファ・ロメオが1.5L ヴォワチュレット・クラスのレーシングカー、Tipo 158アルフェッタに採用し大成功を収めている。

ポルシェがトランスアクスルを採用したのは、ポルシェの社内事情が大きく変わったのがきっかけだった。356以降、空冷水平対向エンジンのRRレイアウトのスポーツカーを送り出してきた彼らだが、その経営は1949年にフォルクスワーゲンと締結した技術コンサルタント契約によって支払われるロイヤリティ収入によって下支えされていた。

2026年で誕生50周年を迎えたトランスアクスル・ポルシェ

2026年で誕生50周年を迎えたトランスアクスル・ポルシェ。

ところが1971年にVW 3代目会長に就任したルドルフ・ライディングはグループ内各社の独立採算化を断行。ポルシェと共同開発を進めていた床下ミッドシップの小型車EA266を中止したほか、ミッドシップ・スポーツ914のために設立した“VW‐ポルシェ販売会社”も解消した。

それを受け、1972年にフェリー・ポルシェ以下ポルシェ一族は経営から退き、公開企業として再出発を図ることになったのだ。ここで社長に就任したエルンスト・フールマンは、経営改革を行うとともに、911/914に代わるラインナップの再構築を画策。そこで白羽の矢が立ったのが、アウディと共同で開発を進めるもお蔵入りとなっていた2+2 FRクーペだった。

ボトムレンジを担い、大ヒット作となった異端児「924

“アウディ・スポーツ”と呼ばれていたそのクルマは、アウディのイメージリーダーとして企画されたもので、アウディ80やVWゴルフのパーツを流用しコスト削減を図る一方で、リアアクスルにトランスミッションとデフを一体化したトランスアクスルを配置。加えてエンジンとトランスミッションをトルクチューブで繋ぎ、その中にプロペラシャフトを通すことで騒音、振動対策を施されていたのが特徴であった。

1974年に完成したプロトタイプEA425。当初は“アウディ・スポーツ”として世に出る予定だったが、同年末に計画がキャンセルされたため、ポルシェが権利を買い取り924のベースとなった。

1974年に完成したプロトタイプEA425。当初は“アウディ・スポーツ”として世に出る予定だったが、同年末に計画がキャンセルされたため、ポルシェが権利を買い取り924のベースとなった。

フールマンはこれをベースとした914に代わるポルシェのボトムレンジを担うモデルの開発を指示。エンジンはアウディ100に搭載されていた1871cc直4 OHVをベースに排気量を1984ccに拡大したうえでSOHCヘッド、ボッシュKジェトロニックを組み合わせた新型ユニットを搭載。さらにボディは若きハーム・ラガーイによるウェッジシェイプの2+2が採用され、アウディの協力のもとネッカーウルム工場に日産100台の生産体制が整えられた。

1976年に914に代わるエントリー・モデルとしてデビューし、大ヒットを収めた924。フロントに125psを発揮する1984cc直4 SOHC、リアアクスルにデフと一体化した5速MTを搭載する。

1976年に914に代わるエントリー・モデルとしてデビューし、大ヒットを収めた924。フロントに125psを発揮する1984cc直4 SOHC、リアアクスルにデフと一体化した5速MTを搭載する。

こうして1976年から発売が開始された924は、早くも1977年には2万6393台を生産。1979年に924ターボ、1980年にFIAグループ4用の924カレラGTなど派生モデルを追加しながら1985年までに15万台が製造される大ヒット作となったのである。

911に代わるフラッグシップ「928」の飽くなき挑戦

この記事はLE VOLANT LAB会員限定公開です。
無料で会員登録すると続きを読むことができます。

フォト=藤原よしお/Y. Fujiwara
藤原よしお

AUTHOR

注目の記事
注目の記事

RANKING