コラム

アジア初「Mモータースポーツディーラー」誕生。渋谷松濤BMWが発信するモノづくりの矜持【木下隆之コラム】

ドイツのモノづくりの情熱が息づく新たな拠点

ドイツという国を訪れるたびに思うことがある。彼らは、クルマを単なる移動の道具とは考えていない。日用品でありながら、同時に工業製品としての誇りを宿し、文化として育ててきた。アウトバーンを走る一台一台には、「速さ」だけではない、ものづくりへの矜持が込められていると感じる。
ドイツで小さなアパート住まいをして、日々アウトバーンを往復する生活を繰り返していると、本当のこの国のモノ作りの情熱に魅せられてしまうのだ。そのドイツの空気が、東京・渋谷松濤に新たな拠点を構えた。
【画像10枚】クルマ好き必見!本気のモータースポーツディーラー「渋谷松濤BMW」がオープン
国内でも屈指のBMW販売実績を持つToto BMWが、「渋谷松濤BMW」をオープンさせたのである。開業セレモニーには、BMW Japanの上野金太郎CEOをはじめ、BMWファンにはお馴染みのStudie鈴木康昭会長らが顔を揃えた。その光景を眺めると、「新店舗誕生」という一言では片付けられない出来事なのだと、ただならぬエネルギーを感じたのである。

喧騒から離れた気品ある街、渋谷松濤

華の東京にあって、渋谷松濤という街は不思議な場所だ。世界中の人々がスクランブル交差点を目指して集まる。人、人、人の雑踏がそこにはある。それなのに坂を上るにつれて喧騒は遠ざかり、時間の流れまで穏やかになる。自己主張を控えた邸宅が木々に包まれ、静けさそのものが街の品格になっている。そんな景色の中に「渋谷松濤BMW」は自然に溶け込む。
Toto BMWを展開するダイワグループは、いまや売上高495億円(令和7年)、従業員814名(令和8年4月1日)を擁する企業へ成長した。しかし、僕が惹かれる理由は企業規模ではない。Toto BMWは、BMWというブランドの「背景」まで販売しているのである。

アジア初。本物のレーシングカーが買えるディーラー

象徴的なのが、「BMW M モータースポーツディーラー」という存在である。2024年、アジアで初めてその認定を受け、BMW M4 GT4、M2 CSRacing、そして最新のM2 Racingなど、本物のレーシングカーを送り出してきた。レーシングカーが買える販売店とは珍しい。ドイツ本国のBMW AGに期待されているから、その権利が与えられる。
レーシングカーは、ショールームから持ち帰れば終わる商品ではない。レースという世界には、メカニック、エンジニア、部品供給、サーキット、そして挑戦するドライバーがいて、初めて一台のマシンが命を吹き込まれる。言い換えれば、販売とは物語の始まりなのである。Toto BMWは自らサーキットへ足を運び、レース活動を続け、イベントを開催してきた。販売店でありながら、ピットロードの匂いを知っている。それが、このディーラーの大きな価値だと思う。

ニュルブルクリンクで鍛えられた魂を東京から発信

今年、僕はBMW M2 Racingでニュルブルクリンク24時間レースを戦った。Toto BMWのサポートがあったからこそ実現したプロジェクトだった。170を超えるコーナーがあり、路面は激しくうねる、突然襲いかかる霧や豪雨。その森には言い訳が存在しない。
「本当に走れるのか。」
ただ、その一点だけが問われる。そこで鍛えられた技術が、市販車へ受け継がれていく。だからBMWは、サーキットを宣伝の舞台ではなく、ものづくりの原点として大切にしてきたのだろう。渋谷松濤BMWは、その精神を受け継いでいるのだ。ミュンヘンで生まれ、アウトバーンで鍛えられ、ニュルブルクリンクで磨き上げられたBMW。9000km離れた東京・渋谷松濤から新しい物語が始まるのである。
【画像10枚】クルマ好き必見!本気のモータースポーツディーラー「渋谷松濤BMW」がオープン

photo=木下隆之/TKinoshita
木下隆之

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1982年に全日本学生自動車王者に輝いた。出版社で編集部所属、独立してレーシングドライバーとして活動を開始してから40年となる。日産、ホンダ、三菱、トヨタとレーシングドライバー契約。レーシングカーはもちろんのこと、スカイラインGT-R、ホンダ・レジェンド、三菱ランサーエボリューション、レクサスLFAなどの開発に従事。国内外のトップカテゴリーで数多くのチャンピオンを獲得。スーパー耐久シリーズでは最多勝記録を更新中。ニュルブルクリンク日本人最多出場、日本人最高位記録保持。GTアジア選手権2連覇等、海外に活動の場を広げて活躍中。2023年からはトーヨータイヤと「プロクセスアンバサター」契約し、Team TOYOTIRESのドライバーとしてニュルブルクリンクに参戦を開始している。一方で、執筆活動も旺盛で、11本のコラムを連載中。「豊田章男の人間力」「ジェイズや奴ら」等を上梓。トヨタガズーレーシングアドバイザー、レクサスブランドアドバイザー、BMWスタディ・スポーティングディレクターを経験。数々の企業案件に参画してきた。サントメ・プリンシペ民主共和国・補佐官/トウキョウファーム経営戦略アドバイザー/日本カーオブザイヤー選考委員/日本ボートオブザイヤー選考委員/日本自動車ジャーナリスト協会会員/株式会社木下隆之事務所・代表

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