熟成の極みを見せる、アウディの実質的トップモデル
2026年6月25日に日本市場で発売された新型アウディA6。“非e-tron”のこのプレミアム・アッパーミドル・セダン/ステーションワゴンは、ドイツでは2025年4月にデビューしているので、1年強遅れて上陸したことになる。A8がすでに登場から10年近く経つだけに、いまやA6がアウディの実質的なトップモデルと言っても過言ではない。果たしてニューA6はどんなクルマに仕上がっているのか。幸運にも上陸直後のテストカーに試乗することができた。
【画像18枚】洗練の極み。新プラットフォーム「PPC」を採用した新型アウディA6の優美なスタイリングと先進の内装をチェック
なぜ「A7」にならなかったのか? 60年続く中核モデルの矜持
A6は、そのルーツである1968年に登場した初代アウディ100(C1)から数えて9世代、60年近くも作り続けられている、同ブランドの中核モデルだ。1982年デビューの3代目アウディ100(C3)から、それまで用意されていた2ドアセダンに代えて、ステーションワゴンのアバントが登場。以降は現在まで基本的に4ドアセダンとアバントの2本立て。今回導入された新型も同様だ。
ちなみに、1999年にA6として2代目のC5型から設定されている、アバントをクロスオーバーテイストに仕立てたオールロードは、新型にも用意され、先日ワールドプレミアとなっているが、残念ながら先代同様に日本市場への導入予定はないそうだ。
さて、新型A6がどんなクルマかを説明する前に、説明しておくべきことがある。冒頭にも書いたように、今回試乗したA6は、ICE(内燃エンジン)を搭載したモデルだ。アウディは2023年に、「車名の数字が偶数のモデルはBEV、奇数はICE搭載車とする」と発表しているので、これに沿えば新型A6は「A7」となるのが自然である。以前聞いたウワサでは、新型もA7となる予定だったそうだが、このルールは2025年2月に撤回されたため、「A6」としてデビューすることとなった。最近はメルセデス・ベンツなども同じ車名でICE車とBEVをラインアップする流れになっているので、少々分かりにくい部分もあるが、混乱を招くことはないだろう。
BEVとは中身が全くの別物。新基盤「PPC」がもたらす優美な姿
車名は同じA6だが、今回の新型ICE搭載モデルは、先に上陸したA6 e-tronとは、当然ながら中身は全くの別物である。プラットフォームは、A6 e-tronがBEV専用に新開発されたPPEで、今回のICEモデルはPPCである。このPPCは、従来のMLB evoを基本にしながら、電動化への一層の対応や高効率化、エレクトロニクスの一層の進化などを実現した、さらなるエボリューション・プラットフォーム。その高い実力は、昨年上陸したA5やQ5でも、すでに証明済みだ。
ニューA6は、セダン/アバントとも全長5000mm、全幅1875mmで、全高はセダンが1465mm、アバントは1485mmとなっている。先代と比較すると、全長は50mm長く、全幅は10mm狭くなった。全高については、セダンは15mm高くなったが、アバントは従来と同寸である。ホイールベースは先代と同じ2925mmで、プラットフォームが共通のA5より30mmだけ長い。
たった30mmなら、A5と大して変わらないのでは? と思うかもしれないが、2台の違いは一見して明らかだ。A5が比較的スポーティネスや力強さを強調したデザインであるのに対し、新型A6はより低くワイド感を強調した、エレガントで上質なデザインにまとめられている。特にタイヤの外形が大きく、リアオーバーハングが長く取られている点が、ニューA6のラグジュアリー性を引き立てていると言っていいだろう。
先進性と操作性を両立した室内。最新MHEV plusの確かなゆとり
インテリアは、最近のアウディ各モデルに通じるデザインで、大型のMMIディスプレイや助手席正面のMMIパッセンジャーディスプレイなどが先進的な雰囲気を際立たせている。操作系は、何から何までタッチディスプレイに集約するのではなく、アウディドライブセレクトのボタンなど、触る機会が多いものは物理スイッチとされているので、操作に戸惑うことも少ない。
今回導入されたのは、2.0L直4ガソリンターボ+4WDのA6 TFSIクワトロ200kWと、2.0L直4ディーゼルターボ+4WDのA6 TDIクワトロ150kWの2タイプで、どちらもセダンとアバントを設定。どちらもトランスミッション後端に備わるパワートレインジェネレーター(PTG)を備えた48VマイルドハイブリッドのMHEV plusで、今回はガソリンのA6 TFSIクワトロ200kWのセダンを試乗することが出来た。
徹底した空力対策による静寂と、絶妙なコシを持つフットワーク
新型A6のセダンは、大きなシングルフレームグリル内のシャッターや、フロント両サイドのエアカーテン、大型のリアディフューザーのほか、アンダーボディもカバーや整流板で乱流を抑制することで、Cd値0.23とA6 e-tronの0.21には及ばないものの、ICE車としてはアウディ史上最高のエアロダイナミクスを備えている。
これは高速燃費の向上に寄与するだけでなく、風切り音低減にも効果的で、新型A6はさらに、フロントサイドに加えてリアドアウィンドウにもアコースティックガラスを採用することで、プレミアムセダンに相応しい、クラス最高レベルの静粛性を実現した。
乗り心地も申し分ない。先代A6も非常に上質で、しっとり滑らかな乗り心地を実現していた。今回の試乗車はS lineパッケージ装着車で、スポーツサスペンションを装着し、標準サイズより2インチ大きい255/40R20のミシュラン・パイロットスポーツ5を履いていたこともあって、絶妙にコシのある“上質でスポーティ”な乗り心地を披露。適度なホールド感のあるスポーツシートと相まって、ロングドライブでも疲れない、素晴らしい快適性を実現していた。
歴代のDNAを継承する、極めて高いスタビリティと操縦安定性
ベーシックグレードとはいえ、走りも全く妥協を感じさせない仕上がりだ。発進時には24psと230Nmを発揮するMHEV plusの電気モーターがレスポンス良く反応することで、スムーズに転がり出し、7速Sトロニックの変速時にもトルクの谷を埋める働きをすることで、とても滑らかな加減速を実現。絶対的な動力性能も、0-100km/h加速が5.8秒と必要十分以上なので、ワインディングロードでも軽快な走りが楽しめる。
特に感心させられたのは、シャシー制御の完成度の高さだ。今回の試乗車には通常はオプションのアダプティブエアサスペンションとオールホイールステアリングが装着されていたのだが、エアサスはコンフォートモードではしっとり、ダイナミックモードではしっかりロールやピッチングを抑えながらしなやかさを失わない、素晴らしい走りを実現していた。
スタビリティの高さも特筆もの。オールホイールステアリングがリアタイヤの舵角を低速域ではフロントと逆位相、高速域ではフロントと同位相に制御し、あらゆる走行状況で路面を確実に捉え続けて、極めて安定感の高い、それでいて正確なハンドリングを実現している。ワインディングロードでも非常に優れた操縦安定性を披露したのである。
筆者はかつて、ドイツ・インゴルシュタットのアウディ・フォーラムに併設されているアウディ・ミュージアム・モバイル所蔵の歴代A6を試乗させてもらったことがあるが、時代ごとに走りの違いはあれど、どの世代にも通じるスタビリティの良さが感じられたのを強く記憶している。新型A6にも歴代モデルのDNAは確実に受け継がれていると感じた次第だ。
日常を豊かにする機能の数々。上級セダンとして間違いなく「買い」
さらにはエアサスとセットオプションのアダプティブドライブセレクトアシスタンスが、ドライバーの運転操作を学習し、走行状況に応じてドライブモードを適切に切り替えてくれる。おかげで運転中に手動で切り替える必要がなく、ドライビングに集中できるのはとてもありがたいと感じた。
細かいところでは、MMIエクスペリエンスパッケージに含まれているフロントヘッドレストスピーカーが、ナビの案内をドライバーの耳元にダイレクトに伝えてくれるのは、非常に重宝する機能だ。ラジオや音楽に混ざって伝えられるより聞き逃す可能性が低く、聞き間違いも少ない。ぜひとも欲しいアイテムのひとつである。
今回は使用する機会がなかったが、エアサスで車高を最大で20mm上げられるのも、キャンプ場などでは嬉しい機能だろう。エアサス装着車はダイナミックモードでは車高が10mm下がるほか、エフィシエントモードでも車速が120km/hを超えると自動的に10mm下がる。日本ではあまり必要ないかもしれないが、新型A6がドイツ車であることを改めて認識させられる機能である。
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以前はBEVの普及拡大に力を注いでいたアウディだが、世界の自動車市場の動向を受けて今ではICE搭載モデルも継続する方向に転換。だが新型A6の出来栄えからは、当面のつなぎといった印象はまるでなく、再びクラストップレベルの仕上がりを見せつけてきた。
今後はPHEVに進化したS6やRS6が登場すると噂されているが、ベーシックなマイルドハイブリッドのA6も非常に完成度が高い。上級セダンらしい上質感や快適性を求めるなら、新型A6は間違いなくオススメだ。
【SPECIFICATION】AUDI A6 TFSI quattro 200kW
アウディ A6 TFSI クワトロ 200kW
■車両本体価格(税込)=8,850,000円
■全長×全幅×全高=5000×1875×1465mm
■ホイールベース=2925mm
■トレッド=前:1625mm、後:1610mm
■車両重量=1980kg
■エンジン型式/種類=FAA-4451-ECR/直列4気筒DOHC 16バルブ インタークーラー付ターボ
■総排気量=1984cc
■エンジン最高出力=272ps(200kW)/5000-6500rpm
■エンジン最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1600-4500rpm
■燃料タンク容量=61L(プレミアム)
■燃費(WLTCモード)=15.2km/L
■トランスミッション形式=7速Sトロニック
■サスペンション形式=前:5リンク式マルチリンク、後:5リンク式マルチリンク
■ブレーキ=前:ディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18
【画像18枚】洗練の極み。新プラットフォーム「PPC」を採用した新型アウディA6の優美なスタイリングと先進の内装をチェック























