






































































2026年パリ・モーターショーで世界初公開された次世代アルファ・ロメオの指標
ステランティスは2026年10月11日、パリ・モーターショーにおいてアルファ・ロメオの新たなコンセプトカー「クオレロッソ(Cuorerosso)」を世界初公開した。このモデルは、赤、イタリア、そしてスポーティネスというブランドのアイデンティティを根幹に据え、来るべきモビリティの新たな時代に向けたアルファ・ロメオの方向性を示すマニフェストだ。デザイン、機能、技術が高度に融合した未来の姿を紐解く。
【画像71枚】名車33ストラダーレの系譜を継承。V6ハイブリッドも想定する「クオレロッソ」の革新的コクピットを写真でチェック
チェントロ・スティーレが彫刻のように削り出した「赤き心」
クオレロッソは、生産モデルの予告や単なるスタイリングの習作ではなく、電動化という新たな時代にアルファ・ロメオがいかに立ち向かうかを示す真のマニフェストとされている。その根底に流れるのは、「Bellezza Necessaria(必要な美しさ)」という同ブランドが提唱するデザイン哲学だ。これは、無駄を徹底的に排除し、構成要素を本質的なものに絞り込むことで、美しさと機能性、技術、品質をひとつの言語として統合する考え方のことだ。
アルファ・ロメオのデザインセンターであるチェントロ・スティーレは、初期スケッチにわずかな時間をかけた後、すぐに3次元モデリングへと移行し、車輪や窓ガラスなどの詳細がない単一の塊から彫刻のように形を削り出すという急進的な手法をとった。その結果、表面が液体金属のように滑らかに融合し、静止していてもダイナミズムを感じさせる連続的な彫刻のような造形が誕生したのである。「心」と「赤」を組み合わせたクオレロッソという名前は、機械に感情を吹き込み、心を揺さぶる車を作り続けるというアルファ・ロメオの決意の表れだ。
過去の遺産と最新の空力思想が交差する流麗なクーペフォルム
ボディサイズは全長4700mm×全幅1980mm×全高1331mm、ホイールベース2930mm、重量は1750kgという堂々たる体躯を誇る、魅力的な2+2クーペである。グランツーリスモのエレガンスとスーパーカーのダイナミズムを融合させたプロポーションを持ち、純粋で途切れのない形状、アルファ・ロメオの伝統的な空力処理であるコーダ・トロンカ(切り落とされたテール)、そして低く組み込まれたディフューザーにより、空気抵抗係数(Cx値)0.28という優れた空力性能を実現している。
フロントマスクでは、盾型の「スクデット」と三つ葉を意味する「トリローボ」が現代的な解釈で表現された。中央のスクデットからボンネットへと続く造形は、水面を進む船の引き波から着想を得ており、グリルには十字架とビショーネ(大蛇)という歴史的シンボルと対話するようなバックライト付きの三角形のエレメントが配され、心臓の鼓動のような光を放つ。
ボディカラーには「リキッド・インク・レッド」と呼ばれる新色が採用され、微細なアルミニウムのベース層と着色された透明層の組み合わせにより、液体金属と白熱した溶岩の間にあるかのような、内側から発光するような深い輝きを生み出している。
名車33ストラダーレに敬意を払うドライバー中心の没入空間
インテリアもまた、軽快さやシンプルさ、そしてドライバー中心の思想が貫かれている。1967年の名車33ストラダーレの構造からインスピレーションを得たダッシュボードは、水平方向への広がりを強調し、ドアパネルへと滑らかに繋がることで視覚的な空間を拡大している。
ドライバーの目の前には、ブランドの伝統的なデザイン要素を現代のダイナミックなインターフェースへと昇華させた「Cannocchiale Vivente(生きている望遠鏡)」が配置されている。これは、没入型の2眼構成から、運転への集中が高まるにつれて情報が絞り込まれ1つの画面に融合する集中モードへと変化する機能を持ち、将来のステランティスのデジタルプラットフォーム「STLA SmartCockpit」の発展の可能性を示唆している。さらに、センターコンソールには「マグマ・ディスプレイ」と呼ばれるタッチ操作と物理ダイヤルを組み合わせた高度なコントロールセンターが備わる。
動力源については、フル電動(BEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、マイルドハイブリッド(MHEV)、フルハイブリッド(HEV)といった複数のエネルギーソリューションに対応できるアーキテクチャを想定している。究極のパフォーマンス像として、2.9L V6フルハイブリッドパワートレインにQ4全輪駆動システム、カーボンファイバー製ドライブシャフトを組み合わせた構成も視野に入れられており、電動化時代においても運転の喜びを損なわない設計がなされている。
感情と運転の喜びを最優先するサント・フィチーリCEOの決意表明
アルファ・ロメオおよびマセラティのCEOであるサント・フィチーリ氏は、次のように述べている。
「アルファ・ロメオは常に、単に人を移動させるだけでなく、人々の心の中に何かを呼び起こすことのできるクルマを生み出してきました。イタリアの精神、スポーティネス、そして情熱という独自の文化によって育まれた人間と機械のつながりこそが、私たちのクルマをアルファ・ロメオたらしめているのです。クオレロッソによって、私たちはこのアイデンティティを未来へと導きます。それは様々なエネルギーソリューションに開かれた未来であり、技術、機能、品質が常に感情と運転の喜びのためにある未来です。運転を愛する人々のためにデザインされ、時代を解釈すると同時にアイコンとなるクルマを創造すること、これこそが私たちの『必要な美しさ』のアイデアなのです」
内装素材には、座席など乗員が直接触れる部分にポルトローナ・フラウ社製の手仕上げの柔らかいヌバックレザーを使用する一方、高品質な端材を60%含む再生レザーを採用するなど環境にも配慮している。ダッシュボードにはヨットレースチームのルナ・ロッサとの共同研究から生まれた、外洋セーリング用のテクニカルウェア由来の軽量で丈夫な透明のモノフィラメント生地を使用し、伝統的な職人技と最先端のイノベーションを見事に融合させた。車に乗り込むという行為が、情熱の心臓部へ足を踏み入れるような高揚感をもたらす、まさにアルファ・ロメオの真髄を体現したコンセプトカーである。
【ル・ボラン編集部より】
無駄を削ぎ落とした「必要な美しさ」は、機能と情熱がせめぎ合うアルファ・ロメオの真骨頂だ。名車33ストラダーレから着想を得た造形美と、電動化時代のマルチエネルギーという相反する要素が、極めて高い次元で融合している。かつて本誌のBEV「ジュニア」試乗記でもふれたように、内燃機関という武器に頼らずとも、彼らの哲学の根底には常にドライバーを鼓舞する熱がある。静的な彫刻の中に脈打つ「赤き心臓」は、理詰めの空力性能すら官能へと転化させる、イタリアンブランドならではの未来への明確な解答である。
【画像71枚】名車33ストラダーレの系譜を継承。V6ハイブリッドも想定する「クオレロッソ」の革新的コクピットを写真でチェック



