


























MPV・SUV・ピックアップを融合。フィアットが新たな移動空間を世界初公開
ステランティスは、2026年パリ・モーターショーの開幕前夜となる10月11日に開催されたイベントにおいて、フィアットの最新コンセプトカー「マルチプレイ(Multiplay)」を世界初公開した。全長4.45mの中に、MPVの空間効率、SUVのキャラクター、ピックアップの実用性を融合させているのが特徴だ。特定の市販モデルのプレビューではないが、変化する家族のライフスタイルに寄り添う、ブランドの未来に向けたアイデアの実験室として位置づけられている。
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Cピラーがスライドする変幻自在の3-in-1ボディ「メタモルフォシ」
フィアット・マルチプレイの最大の革新は、Cピラー周辺に採用された「メタモルフォシ(Metamorfosi)」アーキテクチャにある。専用のガイドに沿ってリアモジュールが前後にスライドする機構を備え、密閉されたキャビンを持つ家族向け車両から、オープンベッドを備えたピックアップへとわずかな動きで変形する。
ファミリー仕様では6座席に柔軟な追加要素を加えた「6+1」の空間を提供する一方、ピックアップ仕様では4座席に加えて、自転車やアウトドア用品を積載できるオープンベッドが出現する。同じ一日の中でも変化する家族のニーズに合わせ、必要な時だけ荷室容量を拡張できるというわけだ。さらにリアスポイラーも回転して一体型のバイクラックへと変化し、専用の外部アクセサリーなしで最大2台の自転車を積載できる。空力性能と実用性を単一の部品で両立させた画期的な装備といえる。
名車「ムルティプラ」の思想を継ぐ、「6+1」座席の多機能キャビン
このモデルは、外形寸法と室内空間の関係を再定義してきた歴史的な名車の遺産を受け継いでいる。1956年の全長約3.5mで6人乗りを実現した「フィアット600ムルティプラ」や、1998年の4m未満で2列6人乗りを誇った「ムルティプラ」の思想が、この新たなアーキテクチャに息づいている。
その「6+1」構成におけるプラス1の要素が「ペットセンジャー・シート」と呼ばれるモジュールだ。チャイルドシートの固定ポイント、ペット専用スペース、小さなテーブルなど多様な使い方が可能となっている。シートクッションの外側を外してリードとして使用できるほか、ドアには折りたたみ式ボウルが収納されている。
また、高効率な構造により、実用的な3列目シートをも実現している。リアコンパートメントは最大2人の子供、必要に応じて大人も乗車可能だ。助手席には「サンシート」と呼ばれる機能があり、駐車時に後ろ向きにしてダッシュボードを背もたれにすることで、パノラマルーフの下にシェーズロングのようなラウンジ空間を作り出すことができる。
イタリアの夏を彩る「スイカ」モチーフの意匠とサステナブルな素材技術
マルチプレイの視覚的な特徴は、イタリアの夏と団結の精神を象徴する「スイカ」からインスピレーションを得たカラーリングである。鮮やかなグリーンのボディワークはスイカの果皮を、キャビン内に広がる赤やピンクのトーンは果肉を表現している。ダッシュボードの水平なストリップは、空と海が溶け合う地中海の水平線をイメージしたものである。
素材にはシンプルさと機能性が優先され、柔らかな部品の多くには、縫い目のない3Dニットプロセスで作られたモノマテリアルのテキスタイルが使用されている。廃棄物を減らしつつ適応性のある表面を実現しており、子供やペットのエリアには防水仕上げが施されている。
また、ダッシュボードに統合された「ヒドゥン・ディスプレイ」は、車両の電源を切ると視界から消え去り、デジタル技術と控えめに対話するすっきりとした環境を保つ。
変化する家族の形に寄り添う、フィアットの未来を占うアイデアの実験室
メディア発表会では、ステランティスの企業戦略アドバイザーであるオリビエ・フランソワが、フィアット、アバルト、ランチアブランドのCEO兼欧州チーフマーケティングオフィサーであるアルノー・ベローニに鍵を手渡し、ブランドの新たな章の幕開けを示した。
マルチプレイについて、アルノー・ベローニは次のように語っている。
「マルチプレイは、私たちがフィアットの次の章にもたらしたい品質、すなわちクルマを日常生活で役立つものにする能力を表現しています。家族のニーズは変化しており、このコンセプトによって私たちはその変化に伴うソリューションを探究することができます。それは、空間、多用途性、そしてフィアットを一目でそれとわかるイタリアン・キャラクターを中心とした、ブランドの未来に向けたアイデアの実験室なのです」
一台で多様な役割をこなすマルチプレイは、人々のニーズに合わせて自動車の形と機能を再考する、フィアットの未来の革新に向けた重要な試金石となるだろう。
【ル・ボラン編集部より】
1998年登場のムルティプラは特異な造形ゆえに賛否を呼んだが、本質は極めて合理的なパッケージングの妙にあった。今回の「マルチプレイ」も、異要素を融合させる大胆な発想を、イタリアらしい柔らかな意匠で包み込んでいる。一見すると奇抜な可変機構も、歴史を紐解けば「最小の空間で最大の豊かさを生む」というフィアット伝統の思想の延長線上にある。冷徹な実用性とラテンの遊び心。この二面性が高い次元で同居する実験作は、ブランドの未来を照らす確かな光源となるはずだ。
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