「Eクラス」成功の契機となった傑作
ダイムラーはこのほど、メルセデス・ベンツのエグゼクティブセグメントモデルとして1984年11月に発表された「W124」が、誕生から35周年の節目を迎えたことを報じた。
124シリーズは現在のEクラスの祖先にあたるミディアムクラス。セダンの「W124」をはじめ、現在でも愛好家を中心に高い評価を得ているモデルだ。
「123」シリーズの後継として1984年11月に発表された124は、セダンのほか、ステーションワゴン(S124)、クーペ(C124)、カブリオレ(A124)と、多彩なバリエーションを展開した最初のメルセデス・ベンツ車でもあった。
軽量化やエアロダイナミクス性能の追求により、パフォーマンスだけでなく燃費性能も向上。さらに当時は革新的だったマルチリンク式リヤサスペンションの採用により、優れた走行安定性を実現した。1986年からは、ガソリンエンジンに三元触媒コンバーターによる排ガス制御技術が導入され、排出ガス削減の面でも先駆的な役割を果たしている。
124シリーズの完成度の高さは、開発段階における数々の過酷な試験に裏打ちされている。1982年には衝突試験を開始したほか、アフリカでの酷暑、イタリア・ナルドのテストコースにおける高速走行、スペイン・ソル イ ニェヴェのハイウェイ、カナダの海抜3392m、そしてスウェーデン・アリエプローグでの極寒などなど、あらゆる場所や環境でテストが重ねられたのである。
1984年の11月26日から12月8日までは、世界のジャーナリスト向けにセビリアで試乗会を開催。試乗車には72psディーゼルを積む「200D」から190psガソリン仕様の「300E」まで、複数のパワートレイン搭載車を用意。
クラストップレベルのキャビンの仕立て、効率的なパワートレイン、エンジンや装備によるが0.29〜0.30を達成したボディの空気抵抗係数(Cd値)など、ジャーナリストから高い評価を獲得。ガソリンエンジン搭載車では、6気筒の「M103」を搭載した「260E」や「300E」が最も注目された。
1985年には四輪駆動システム「4MATIC」を採用。これはメルセデス・ベンツのドライビングダイナミクスコンセプトの一環で、オートマチック・ロッキング・ディファレンシャル(ARD)や、アクセレレーション・スキッド・コントロール(ASR)といったデバイスが用いられた。
ディーゼル、ガソリンともに多彩なエンジンバリエーションを揃えていた124シリーズには、高性能モデルやAMG仕様も設定。279psを発揮する「400E」や、326psを引き出す「500E」といったハイパフォーマンス仕様にはV型8気筒エンジンを搭載。さらに、当時はチューニングメーカーだったAMG社によるコンプリートモデルとして登場した「AMG 300E 6.0」(1986年誕生)には“ハンマー”というニックネームが与えられ、ルックスはスタンダードモデルと大きく変わらないが、中身は高性能ゆえ、“羊の皮を被った狼”と喩えられるほど一目置かれた存在だったことはいまだ記憶に新しい。
1993年には後継モデルの「210」シリーズが登場。ここから現行型に続く「Eクラス」の名前がスタートした。それまでの「500E」は「E500」に、「200D」は「E200 Diesel」と、グレード名も変わった。
124シリーズは、1985年の発売から1993年までの約9年間で、273万7860台が生産。メルセデス・ベンツEクラスの現在に続く成功の契機となった傑作として、今も語り継がれている。