試乗記

【比較試乗】「BMW M135i vs VWゴルフGTI」一番小さな“M”がGTIに噛み付いた!

ホットハッチの代表格といえば、明々白々ゴルフGTIだ。そんなゴルフGTIキラーとして様々なモデルが存在しているが、M135iはエンジンを同階級に合わせて、ガチ勝負に挑んできた!

M135iに4WDの無粋さはない

最新第8世代が発表されたフォルクスワーゲン・ゴルフ。この期に及んで現行型GTIのステアリングを握ったわけだが、これはもう成熟の極みとしか言いようのない完璧さだった。245Lを発揮する直列4気筒ターボは右足の要求通りにドンピシャなトルクを立ち上げ、よどみなく吹け上がる。ここに連携する7速DSGの変速は閃光のごとき速さで、クラッチがエンゲージする瞬間のわずかなショック、これによる節度感が高性能モデルを走らせる高揚感を、さらに盛り上げてくれる。

VOLKSWAGEN GOLF GTI PERFORMANCE/通常のゴルフGTIではオプションとなるショックアブソーバーの減衰力や電動パワーステアリングを制御する「DCC」を標準で装備。

特にGTIは、ゴルフの看板モデルとして、熟成を重ねる度にその身のこなしを洗練させてきた。頑固一徹、テコでもリアタイヤを地面から離さないというセッティングはもはや過去のものとなり、荷重移動ではリアのグリップバランスが適正に減じられる。だからドライバーはフロントに集中したグリップをもとに、剛性感のあるフロントアクスルの感触を確かめながらステアリングを切り込めるのだ。その際、電子制御デフ(XDS)はドライバーに悟られないほど絶妙な効き方をしており、とにかく気持ち良く曲げてくれる。

BMW M135i /直径100mmの大径デュアルエキゾーストテールパイプと、コンパクトカーとしては実に官能的なサウンドが走る興奮を掻き立てる。

第8世代にも当然GTIが登場することは明白だが、これを待ち、さらに精査して思い悩むより、現行GTIを選んで今を楽しみ、次世代GTIの熟成を待つのは有効な時短であると思う。第7世代GTIは、まさにFFコンパクトハッチの王者であると、今さらながら強く感じた試乗であった。

VOLKSWAGEN GOLF GTI PERFORMANCE

対する1シリーズ、その注目すべき点は何よりもフロントエンジン・リアドライブからFWD、とくにこのM135iというホットモデルに至っては、FWDベースの4WD「xDrive」となったことだろう。結論から言ってしまえば、この選択は正しいと私は思っている。なぜなら現代レベルのアクスル強度とタイヤがあれば、操舵と駆動を両立するだけのキャパは十分にあるから。それはすでにミニや、X1が証明している通りだ。なおかつM135iのような高出力モデルに至っては、FRより安価に4WDを設定できる。「肝心な駆けぬける歓び」に対してはどうなのか? これもM135iは“キレッキレ”だ。

BMW M135i xDrive

M135iは、とにかくフロントが入る。ランフラットの乗り心地だけは許せないが、その剛性も合わせて操舵に対するグリップの立ち上がりが鋭く、なおかつ車体の操舵応答性も素早い。そして操舵後のロールの仕方は、思い切りFRを意識している。いやむしろ、それ以上にアグレッシブだ。

VOLKSWAGEN GOLF GTI PERFORMANCE/19インチホイールを装着し、通常のGTI比で最高出力が230psから245psに、最大トルクは350Nmから370Nmに向上。トランスミッションは新開発された湿式7速DSGとなる。

具体的にはロール軸がGTI以上に前下がりな印象で、ステアリングを切り込むほどに、斜めにボディが傾いて行く。無粋な4WD感は全くない。強烈な旋回Gでコーナーへ飛び込みアクセルを踏み込めば、フロントを軸に4輪全体で車体を引っ張る。もはやその身のこなしの鋭さは、駆動方式をも超えた。306psのハイパワーを後輪だけで抑え込もうとした旧M135iのコンサバなシャシーセッティングに比べると、新型の走りには皮肉だが、よりBMWらしさがある。

BMW M135i xDrive/路面からの鋭い突き上げや硬い乗り心地は18インチホイールとブリヂストン・トランザ(T005)のマッチングの影響と思われた。Mスポーツサスペンションも標準装備。

エンジンこそ直列4気筒ターボとなり、パワーは320psから14psほどドロップしているが、使い切れる306psは刺激的だ。肝心なゴルフGTIとの比較は、M135iの方が断然スポーティ。初期モデルのじゃじゃ馬具合が洗練される前に新型M135iの新鮮さを味わうか、熟成のゴルフGTIでトータルバランスを狙うかは、クルマより乗り手のパーソナリティに掛かっていると思う。

フォト=安井宏充/H.Yasu(i Weekend.) ル・ボラン2020年1月号より転載

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