
昨年末、VWグループの生産モジュール「MQB」をベースにしたジャーマンスモールが相次いで日本にやって来た。2世代目のA1と、ブランニューのTクロス。ボディ形態は異なるものの、日常のパートナーに最適なキャラクターは共通。さあ、街に繰り出そう!
クラスを超える存在感と満足感
ほぼ時を同じくして日本上陸を果たしたフォルクスワーゲンTクロスとアウディA1スポーツバック。クロスオーバーSUVとハッチバックという違いはあるものの、ともにMQBプラットフォームを採用したBセグメントのFFで、そのコンパクトなボディや信頼あるブランド力など都市生活者が気になるモデルだ。そこで今回は2台を連れ出して街中から郊外までショートトリップ。ちょっと小粋なアシとしての魅力を探ってみた。
TクロスはVWクロスオーバーSUVの末っ子で、ハッチバックならポロに相当するモデルだが、エクステリアデザインは立派で室内も想像以上に広く、Cセグメントのゴルフに近い満足感がある。背高ボディで乗員をアップライト気味に座らせるから、全長が短くても前後方向に余裕があるのだ。
エンジンは直列3気筒の1Lターボ。ポロ用に比べると最高出力は21ps増の116ps、最大トルクは25Nm増の200Nm。車両重量はポロよりも110kg重くなるが、それに十分に対応しているといえる。ただそれでも余裕たっぷりというほどではなく、少し急いだ発進などでは半クラッチ時にやや苦しげで振動を伴うことがあり、1000 -2000rpm前半ぐらいの常用域ではもう少しだけトルクの厚みがあれば乗りやすさが増すのになという場面もあった。
そこでDレンジからSレンジに切り替えてみると、ドライバビリティは格段に良くなる。無駄に燃料を消費しないような大人しい運転ではなく、高めのエンジン回転数を積極的に使ってやるのが似合っているのだ。今回のテーマは「ジャーマンスモールで街中を駆け抜けろ!」なのだから、こういった運転もいいだろう。
街を飛び出して、コーナーの多い首都高速、高速道路、郊外路へと足を伸ばしていくにつれて、遠慮なくアクセルを踏み込める快感に浸ることになった。アンダーパワーだから常識的なスピードの範囲のなかで楽しめる。全開にすれば6000rpmまで綺麗に吹け上がり速さも十分。コーナーが連続する場面や加速時はSレンジ、巡航走行に移ったらDレンジへと切り替えながら走ったが、80-100km/h程度の巡航では静粛性が高くて快適だった。7速100km/hのエンジン回転数は2300rpmとちょっと高めなので、高速巡航でのもどかしさはない。
全高の高さゆえにサスペンションは硬めに設定されているはずだが、動きはスムーズでたっぷりとしたストロークがあるので乗り心地は快適だ。ただし、試乗車の1stプラスは18インチの大径タイヤを履いていることもあって、タイヤのゴツゴツ感が気になることはある。スタンダードな16インチならばそんなことはないだろう。ついでにいうと、軽量な16インチならば発進時もより軽快になり、低速域でのドライバビリティも向上するはずだ。ハンドリングはVWらしい素直で安心感の高いものだった。とくに刺激があるというほどではないが、飛ばしてもそれなりについてきてくれて懐の深さを感じるのだ。
上質感に加えて官能性も備わる!
先代の丸みを帯びたスタイリングから一転、筋肉質なアスリートのようにスポーティになった新型A1に、ドライビングプレジャーを期待する人も多いだろう。Tクロスに比べると全長は75mm短いがホイールベースは逆に10mm長い。そのため後席も含めてBセグメントとしては前後方向の余裕は十分にあり、着座姿勢はアップライトではないのでスポーティで走り出す前からウキウキとしてしまう。
エンジンは直列4気筒1.5Lターボ。本国ではゴルフVIIのビッグマイナーチェンジ時に導入されたもので、ポロTSI Rラインにも採用されている。従来の1.4Lに対してロングストローク化され、効率アップと排ガス対策が施されたユニットだ。パフォーマンスとしては1.4Lに対して最大トルクが10Nm増となっているに過ぎないが、コンパクトなA1にとっては余裕たっぷり。Tクロスと違って、こちらはDレンジのままでもあらゆる場面で不足を感じることがなく、右足の動きと加速感がシンクロしている。超低回転域からターボ特有のラグなど感じさせずにスッとトルクを立ち上げ軽やかに発進。常用域が扱いやすくて街中も得意なステージだ。100km/hは7速で1800rpm程度だが、そこでも余裕があるので高速巡航も楽々とこなす。
扱いやすいだけではなく、このパワートレインはほどよくドライバーを楽しい気持ちにさせてくれる。ホットハッチのように刺激たっぷりというほどではないが、優れたドライバビリティとレスポンスの良さによって「もう少しアクセルを踏み込んでみようかな?」という気にさせるのだ。Sレンジのいいところは積極的な走りのなかで、右足の動きに合わせてレスポンス良くギアが下がってくれることだ。パドルシフトはSラインにオプションで用意されるだけで、そこがちょっとした不満だと思っていたのだが、この特性のおかげでだいぶ解消。アクセルペダルのコントロールだけで思い通りに走れるのだった。
フットワークもバランスがいい。乗り心地に硬さはなく、サスペンションの動きが上質でロールやピッチングも自然な感覚。コンパクトカーらしからぬどっしり感と軽快さが同居しているのだ。街の交差点を曲がるだけでも活発な印象を受け、ハイスピードなコーナリングでは絶大な安心感がある。全体的にキビキビとしていて走らせるのが楽しい。
TクロスはVWらしい安心感や素直な操縦性、アンダーパワーゆえの意外な楽しさなどで満足度の高いモデルだが、A1はプレミアムブランドらしい上質感とハッチバックならではの運動性能の高さや官能性まで兼ね備えている。どちらもドイツ車らしい資質の高さを基本に、キャラクターに合った走りを楽しませてくれるのだ。
【Specification】AUDI A1 SPORTBACK 35TFSI ADVANCED
〇 上質かつキビキビとした走り/× パドルシフトが選択できない
■全長×全幅×全高=4040×1740×1435mm
■ホイールベース=2560mm
■車両重量=1220kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1497cc
■最高出力=150ps(110kW)/5000-6000rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1500-3500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=215/45R17
■車両本体価格(税込)=3,650,000円
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アウディジャパン 0120-598-106
【Specification】VOLKSWAGEN T-CROSS TSI 1st PLUS
〇 スムーズなサスペンションの動き/× 常用域でのトルクはいまひとつ
■全長×全幅×全高=4115×1760×1580mm
■ホイールベース=2550mm
■車両重量=1270kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC16V+ターボ/999cc
■最高出力=116ps(85kW)/5000-5500rpm
■最大トルク=200Nm(20.4kg-m)/2000-3500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=215/45R18
■車両本体価格(税込)=3,359,000円
お問い合わせ
フォルクスワーゲングループジャパン 0120-993-199