世界の高級車マーケットに次々と登場するラージクラスのSUV。これまでSUVを製造していなかったプレミアムブランドからもニューモデルが登場している。ここで集めた3台は、高性能という同じベクトルが与えられながらも、各ブランドのキャラクターが色濃く反映されているのが興味深い。
スペックはいずれも500psオーバー!
輸入SUVといえば、豊かなトルクと高い経済性で人気のディーゼルエンジン車が多いが、その一方で、胸の空く加速が楽しめる高性能ガソリンエンジンにこだわる人も少なくない。そこで、ラグジュアリーなラージクラスのSUVの中から、パワフルなエンジンを搭載する走りを究めた3台を乗り比べて、実力をチェックすることにした。その3台とは、BMW X7 M50i、ポルシェ・カイエンターボ、ベントレー・ベンテイガ・スピードだ。
オンロードでのスポーティな走りに重きを置いたSUVとして、その後のパフォーマンスSUVブームの先駆けとなったのがBMWのX5。SAV(スポーツアクティビティビークル)を名乗り、従来のSUVとは一線を画する存在として、いまなおこのセグメントをリードしている。その新たなフラッグシップモデルとして登場したのがX7である。
一方、ポルシェ・カイエンは、X5の成功を受けて、それまでラインナップになかったSUVをフォルクスワーゲンとともに開発することで生まれたモデルだ。フォルクスワーゲン・トゥアレグに対して、さらにオンロード性能を重視したその性格で一躍人気モデルとなり、ポルシェ躍進のカギとなったのはご存知のとおりだ。現行モデルは2017年にフルモデルチェンジを実施した3代目である。
スポーツカーブランドやラグジャリーブランドが続々とSUVを投入する流れはベントレーも例外ではない。同社は2015年にニューモデルのベンテイガを発表し、新たなファンを獲得することになる。この「スピード」はベンテイガのトップモデルで、日本では20台が限定販売される。
そんな3台の中から、まずは最新モデルのX7を試すことに。実車を目の当たりにして一番に感じるのがその大きさ。実際、3台のなかでは最も大きいのだが、1835mmの全高やそのフォルムも手伝って、数字以上に迫力があるのだ。それだけに、室内、特に2列目、3列目の余裕や、ラゲッジスペースの広さは注目すべきところで、弟分のX5では少し狭いと感じるライフスタイルの持ち主には打ってつけの選択肢といえる。
そうなるとスポーティな走りが楽しめるのかと心配になるが、いざ走り出すとそんな不安はすぐに吹き飛んでしまう。このM50iには4.4L V8ツインターボが搭載されるが、1000rpmの低回転から豊かなトルクを発揮し、力強くスムーズな発進を実現する。そして回転を上げていくと、2000rpmの手前から勢いが増し、4000rpmあたりをピークに爽快な吹け上がりを見せてくれる。エンジンのスペックこそ3台のなかでも最も控えめだが、フィーリングの良さは、さすが“バイエルンのエンジン工場”製である。
安定感のある走りもBMWのSAVらしいところで、コンフォートモードでは多少ゆるやかな上下動はあるが、横揺れを抑えるアクティブ・スタビライザーや4輪エアサスペンションのおかげで、上質で落ち着いた挙動を見せる。さらに、迫力のあるボディとは裏腹にコーナーでの身のこなしは軽快で、サイズを感じさせない運転感覚が実に好ましい。