BMW

【NEW COMER 01】我が道をゆけ! ICEとBEVの両輪で万全の布陣を構築。「BMW 7シリーズ」

ICEでもBEVでも7シリーズは7シリーズ。

新しい7シリーズのどこか不敵な表情を見て、今世紀初頭のBMWを思い起こす方も多いのではないだろうか。当時のチーフデザイナー、クリス・バングルが描いた野心的で独創的なカーデザインは、ゆえに物議を醸した一方、ギラギラとしたエネルギッシュな魅力も発散していた。このところやや守備的に見えたBMWが、再び攻勢に出るときがやって来たのか。今度の7シリーズには、そう期待させる”何か”がある!

【写真13枚】現行Sクラスを揺るがす静粛性や乗り心地の新型7シリーズ。 

これはもう一種の職業病というか、あるいはパブロフの犬的行動なのかもしれないけれど、新型のメルセデスCクラスが出れば自動的にBMW3シリーズを思い浮かべながら試乗してしまうように、新型の7シリーズの試乗中、ずっと考えていたのはSクラスのことだった。で、結論めいたことを先に言うと、少なくとも静粛性や乗り心地といったいわゆる快適性では、新型7シリーズは(パワートレインを問わず)現行Sクラスを揺るがすレベルに達していた。この部分はこれまでSクラスがやや優位に立っていた性能であり、今回もっとも驚かされた。

新型7シリーズのパワートレインは電動化ユニットのみで、ガソリンとディーゼルの内燃機(ICE)はすべてマイルドハイブリッドかプラグインハイブリッド(PHEV)、さらに電気自動車(BEV)までもラインナップした。ICEは735i(3L直6)、740i(3L直6)、760ixdrive(4.4LV8)、740d xdrive(3L直6ディーゼル)、750e xdrive(3L直6PHEV)、M760e xdrive(3L直6PHEV)の6種類、BEVはi7 xdrive60の1種類で、日本仕様は当面740i(1460万円)とi7 xdrive60(1670万円)のみと発表された。

アメリカ有数の高級リゾート地であるパームスプリングスで開催された国際試乗会に用意されていたのはi7と760iで、日本仕様である740iがないのは残念だったが、この2車種に絞った理由はパワースペックを見てなんとなく合点がいった。i7は最高出力544ps、最大トルク745Nm、760iは544ps、750Nmで、さらに両車とも4WDだから(4WDのシステムに違いはあれど)ほぼ同じパワートレインだったのである。

違いを比較するなら数値はなるべく揃っていたほうがいい。ところが両車を運転してみると、違いを見つけるというよりは、ICEでもBEVでも限りなく似たような乗り味にしているという印象が強かった。

今度の7シリーズはすでに快適性でSクラスに比肩する
760iのV8はすでにお馴染みのユニットで、マイルドハイブリッド化されてはいるが相変わらずスムーズこの上なく高回転まで回る。振動もノイズも少なく、その様はまるで”モーターのよう”でもある。ただ、当然のことながら振動とノイズはゼロではないものの、それらがドライバーにほどよく伝わってくることで、ICEに慣れ親しんできた世代には「エンジンを回している」感触が気持ちいいと感じる。

一方のi7は「BEVでござい!」みたいなトルクの急速な立ち上がりにはなっておらず、むしろICEのなだらかな線形のトルクカーブに寄せていて、ラグジャリーセダンなのだからゆったり乗りたいと思う人も少なくないという、フラッグシップモデルとしての立ち位置を大切しているのだろうと推測した。

駆動形式はいずれもxdriveなので、前後駆動力配分が随時可変する4輪駆動である。電気信号を使うBEVの4Wdほうがメカニカルな仕組みのICEよりもレスポンスがいいとされるのが一般的で、この2台もi7のほうが(特にスタート時などは)細かく素早く駆動力を前後に配分しているようだが、それもなんとなくそう感じる程度であり、760iのほうが遅いと思うことはまったくない。

そしていずれのモデルも、アクセルペダルを深く踏み込めば望外な加速Gが直ちに立ち上がり、車両重量のことなど置き去りにするほどの俊足を披露した。このとき4輪には最適なトラクションがかかっているので、スタビリティの高さにも感心した。

パワーユニットは全7種類。写真は760iが積むV8ツインターボ。スペックはi7とほぼ同値で、同じような動力性能が味わえる。

特筆するべきはきわめて高い静粛性
似たような味付けの動力性能と同じように、操縦性もまた両車で大きな差違は見られない。いずれの試乗車にも、オプションの後輪操舵システムとアクティブスタビライザーが装着されていたので、その効果も多分にあると思うけれど、3215mmものロングホイールベースを持ち、760iでは2270kg、i7に至っては2640kgもの重量を抱えているにもかかわらずとにかく軽々とよく曲がり、優れた回頭性という点では紛うかたなきBMWのそれだった。

ただし動力性能もそうであったように、いたずらにアジリティ優先のセッティングにはなっていない。通常はあくまでもドライバーの入力に対して従順よりちょっと反応がいいくらいの塩梅にとどめていて、スポーツモードを選ぶと積極的にフロントが回り込んでいくようになる。このなんとも絶妙な変化しろには、エンジニアのこだわりが垣間見られた。

実は今回、個人的にもっとも感銘を受けたのは静粛性の高さ、それもロードノイズの徹底した遮断だった。ドイツ車はロードノイズをロードインフォメーションのひとつとして捉え、車内への侵入をあえて許容する傾向がある。メルセデスもBMWもこれまでそうだったが、BMWはi4あたりからあらためたようだ。標準装備のエアサスによるばね上の動きの制御も悪くなく、乗り心地のいい静かな室内が実現されていた。

室内は動的にも静的にも質感が総じて高い。エアコンの吹き出し口が見当たらないダッシュボードのデザインは新鮮だ。実はトリムの隙間に上手に配置している。リアの天井に設けられた31・3インチのモニターやリアドアのタッチパネル(いずれもオプション)などはいかにもいま風の装備だが、どうやら中国市場を意識しているらしい。新型7シリーズのマーケットシェアの1位は中国で、約45%を見込んでいるという。中国の勢いと影響は恐るべしである。

冒頭にも書いたように、新型7シリーズの性能はSクラスに拮抗していると言っても過言ではないだろう。しかし、Sクラスを購入する一部の人は、詳細なスペックや厳密な性能などはそれほど重要ではなくて、〝Sクラス〞であることに価値を見出している。ラグジャリー・プロダクトとは、得てしてそういうものでもある。

BRIEF IMPRESSION 01:渡辺敏史
「新型7シリーズのハイライトはきわめて高水準の快適性」
G70系7シリーズ、誰もが驚くそのお顔立ちを筆頭に、注目すべきところはたくさんあります。先代G12系相当のホイールベースでボディバリエーションが一本化されたこと、加えてバッテリー搭載を前提に高さが増したボディを活かして後席環境がまったく新しい寛ぎを提供するものになったこと、内燃機モデルと同等のユーティリティを持つBEVのi7が設定されたこと……。とりわけ個人に驚いたのは動的質感項目、具体的には快適性方面の進化です。

フラッグシップBEVといえば、ことのほかシビアに静かさが求められるがゆえか、新しい7シリーズはロードノイズや風切り系の音が徹底的に整理されています。この静かさに引っ張られてか乗り心地も整えられており、凹凸突き上げもトロンと丸く、乗り心地もしっとり穏やかに仕上がっていています。新型7シリーズ、意外かもしれませんが快適性は本当に注目です。

BRIEF IMPRESSION 02:石井昌道
「限界知らずのシャシー性能もi7のアドバンテージのひとつ」
従来でいうところのロングホイールベース仕様のみの展開で後席エンタメに力を入れているなどショーファーとして重視されている新型7シリーズ。中国45%、アメリカ20%というメイン市場の要望が多いからだろうが、それでもドライバーズカーとしての資質が高いことを確認できて嬉しくなった。とくにi7はモーター特有の静粛性の高さやトルキーな走りだけではなく、シャシー性能も絶品。

道幅が狭いツイスティなワインディングロードでも持て余すことなくリズミカルに駆け抜けていける。可変スタビライザーなど数々のハイテクがピッチングやロールが極小の優れた姿勢を造り出すうえ、BEVゆえの慣性マスの小ささによって圧巻の運動性能をみせる。ちょっと飛ばした程度では、限界がどのへんにあるのかわからないぐらいだ。ショーファーとはいえ、自分でステアリングを握るべきモデルでもある。7シリーズらしさは継承されているのだ。

動力性能と同様、操縦性もICE/BEVを問わず同じテイストで揃えられている。日本仕様の価格は7シリーズが1471~1501万円、i7が1670万円~となる。

リポート=渡辺慎太郎 フォト=BMW AG report : S.Watanabe photo : BMW AG
LE VOLANT web編集部

AUTHOR

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

注目の記事
注目の記事

RANKING