BMW

【比較試乗】コンパクトなハイパフォーマー。ドライビングファンは三者三様「BMW・M2クーペ vs メルセデスAMG・CLA35 4マチック vs アウディ・RS3セダン」

三つ巴比較は、コンパクトなボディにハイパワーチューンが施されたホットモデル対決。メルセデス・ベンツの“AMG”、BMWの“M”、アウディの“RS”はいうまでもなく、各社を代表するハイパフォーマンスブランドだが、そのキャラクターの違いとは!?

自分のサイズに合ったホットコンパクト

クルマの巨大化は相変わらず留まるところを知らない。フルモデルチェンジをして「従来型よりボディを小さくしました」なんて話はほとんど聞いたことないし、最近では全長約5m、全幅約1.9mが当たり前のようになってきている。だから今回のような全長4.5m前後、全幅1.8m台のクルマに乗ると、自分のサイズにぴったり合った靴を履いているようでなんだかしっくりくる。
アウディのRS3セダン、BMWのM2クーペ、そしてメルセデスAMGのCLA354マチックのボディサイズを比べてみると、全長は短い順にRS3(4540mm)、M2(4580mm)、CLA35(4690mm)、全幅は狭い順にCLA35(1835mm)、RS3(1850mm)、M2(1885mm)となる。CLA35は細長く、RS3はセダンにしてはコンパクト、M2は両者の中間くらいのサイズだけど幅広い、ということになる。CLA35は全長が長く存在感があるので、遠くから見るとCLSにも見えてしまうほどだ。サッシレスのドアを用いたCLA35に対して、正統派のセダンのボディを身にまとうRS3は、コンパクトなサイズとパッケージを見事に両立させていると思う。後席には大人ふたりがきちんと着座できるので実用性も高い。

BMW M2 COUPE/セグメント唯一の後輪駆動を採用する2シリーズクーペをベースとしながらも、左右に大きく張り出した四角型基調のエアインテークや横バーを採用しフレームレスのキドニーグリルなどで存在感を強調。Mアダプティブサスペンションの標準装備により、スポーツドライビングのみならず、街中での乗り心地を向上。オプションのMカーボンバケットシートは、前席2脚で約10kgの軽量化を実現している。

いっぽうでちょっと気になるのはM2の車両重量だ。3台中唯一の2ドアだが、実は車重はもっとも重く1710kgもある(RS3は1600kg、CLA35は1670kg)。M2だけが6気筒を積んでいるというのもあるだろうけれど、そのエンジンが押し込まれているエンジンルームを見てみると、タワーバーが左右のフロントサスペンションの上部をつなぐだけでなく、ラジエター上部にも伸びている。このほかにも見えないところにボディ補強が数多く施されているようで、これも重量増の原因のひとつなのかもしれない。スポーツカーを自称するならば、少しでも軽くしたかったはずだが、強力なパワーを支えるに足る頑強なボディのほうが、軽量化よりも優先されるべきと判断したのだろう。
そんなM2が搭載するのは2992ccの直列6気筒の「Mツインパワー・ターボ」で、この「ツインパワー」はターボをふたつ装備、を意味している。基本的にM3やM4と同型だが、最高出力/最大トルクはM2用にあらためられており、460ps/550Nmを発生する。低回転域から豊潤なトルクがタイヤへ伝わるいっぽうで、レブリミットまで間断なく吹け上がりながら、出力がそれにシンクロするように溢れ出る。これを後輪ふたつだけで受け止めるわけなのだけれど、Mスポーツ・ディファレンシャルによる左右の駆動力配分が適宜行なわれるので、ホイールスピンを連発して前へなかなか進まないなんてことはない。後輪には安定的にトラクションがかかり、しっかりと路面を捉えながら瞬発力も備えた力強い加速性能を披露する。

MERCEDES-AMG CLA35 4MATIC/新型CLAクラスは、エクステリアデザインを刷新するとともに、ナビゲーションシステムを最新世代にアップデート。アダプティブハイビームアシストや車両の周囲の状況をディスプレイで確認できる360°カメラシステムを全モデルに標準装備。試乗車のAMG CLA 35 4マチックは新たに48V電気システムとBSGを搭載することにより、効率性、快適性、高性能化を同時に実現。

そしておそらくM2最大のトピックスは、マニュアル・トランスミッションが選べることだろう。ドライブロジック付きの8速ステップトロニック・オートマチック・トランスミッションでも6速MTでも価格が同じというのも嬉しい。今回の個体はMT仕様車だった。こんな仕事をしていても、最近ではMT車を運転する機会がめっきり減ってしまい、久しぶりに左足と左手を動かした。両手両足を使って操作するなんてドラムを叩いているようでもあるけれど、手間はかかるが自分がこのクルマを操っているという感触は確かに強い。その上、電子制御で回転数を合わせてくれるから、特にシフトダウン時はブリッピングが自動的に入って気持ちがいい。昔のようにクラッチペダルが重いとかシフトレバー(の動き)が渋いとかもない。最新の技術が使えるいまこそ、むしろMTによる運転はより楽しめるのではないかと悟った。

我が道を突き進みそれぞれの個性を発揮

M2の次にパワフルなのはRS3。いまや唯一無二の直列5気筒ターボエンジンは、最高出力400ps/500Nmを発生する。駆動形式はもちろん4WDのクワトロ。電子制御式多板クラッチを用いて前後駆動力配分を最適化するシステムである。加えて、RS3は“RSトルクスプリッター”も装備する。これは後輪左右の駆動力を可変するだけでなく、前後の駆動力までも司り、状況によっては前輪駆動にもなる。さらにドライブセレクトで「RSトルクリヤ」を選ぶと前後駆動力配分が0:100の完全後輪駆動にも早変わりする。1台のクルマでFFでもFRでも4WDでもいけるというのは極めて稀な存在だし、R8以外で後輪駆動のアウディが味わえるというのもなんとも感慨深い。
ペダルやステアリングの操作荷重が軽めなこととレスポンスのよさも相まって、RS3は走ると曲がるがとにかく軽快だ。この5気筒は本当に気持ちよく回る。そして特に4WDモードでは前後駆動力配分が適正化されて四輪にしっかりとトラクションがかかっている様が伝わってくる。出力/トルクが他の2台よりもやや早めに立ち上がるので、いい意味でスリリングなドライブが楽しめる。
それに比べるとCLA35はむしろ安定的かつ安全にそのパワーを扱えるセッティングだ。3台の中ではもっとも非力とはいえ306ps/400Nmもあるから、右足に力を込めればただちに非日常的な加速がもたらされる。このクルマの4WDはRS3よりも路面をしっかりと掴む感触が強い。ちょっとやそっとのことではコントロール不能なんかにならないだろうという信頼が寄せられる。

AUDI RS3 SEDAN/フロントにはワイドなRSバンパーを装着するほか、インテリアにもスポーツ性を強調する数多くのRS専用コンポーネントを装着。標準装備のRSスポーツサスペンションをはじめ、アウディ初のRSトルクスプリッターを搭載するなど、日常ユースにも適しながら公道でもサーキットでもスポーティドライブの楽しさを追求。試乗車はフロントにセラミックブレーキとカラードキャリパーを装着。

今回はCLA35だけが“電動化パワートレイン”を採用している。BSG仕様はスターターとジェネレーターを兼ねたモーターと48Vバッテリーをセットにした機構で、モーターのみの走行はできないものの発進や加速時に最大160Nm のパワーをエンジンに上乗せする。ウォーターポンプも電動化されているので、エンジンパワーの損失を軽減し燃費の向上にも寄与する。
操縦性について正直に言えば、実はどれもとてもよく曲がる。M2はFRらしく、前輪に駆動力がかかっていないのですっきりとしたステアリングの手応えと、3台中もっとも50:50に近い前後重量配分が効いた回頭性のよさが特徴。RS3は微舵領域からフロントが俊敏に動き、CLA35はオンザレールのごとく無駄な動きのない旋回姿勢を示す。
それぞれをひとことで現すのであれば、RS3は快活、CLA35は盤石、M2は定石かもしれない。アウディのRS系、メルセデスのAMG系、BMWのM系は現在、どれも総じて似たような味付けがされているけれど、特にM2は6気筒+後輪駆動にエンジニアのこだわりが透けて見える。パワートレインの過渡期にあるいま、3者にはむしろ伝統の堅持が窺えた。時代の流れにすっかり身を任せてしまうと、辿り着いた先が己のゴールと乖離する恐れがある。せめて許されるうちは我が道を突き進もうとする意思が垣間見られた。

ENGINE/MERCEDES-AMG CLA35(左)BMW M2(中)AUDI RS3(右)
CLA35は2L直4エンジンから306ps/400Nmを発揮。M2は3L直6エンジンから460ps/550Nmを発揮。RS3は2.5L直5エンジンから400ps/500Nmを発揮。気筒数もトランスミッションタイプも3者3様だ。

【PERSONAL CHOICE】

BMW M2 COUPE
BEVやら電動化が叫ばれる昨今で、非電動の6気筒エンジンを縦置きにしてMTと組み合わせた後輪駆動のパワートレインを、コンパクトなボディに積むという商品企画が通った時点で、M2は勝ったも同然である。

【SPECIFICATION】MERCEDES-AMG CLA35 4MATIC
■車両本体価格(税込)=8,540,000円
■全長×全幅×全高=4690×1835×1405mm
■ホイールベース=2730mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=306ps(225kw)/6100rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2500-4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:245/35R19

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

【SPECIFICATION】BMW M2 COUPE
■車両本体価格(税込)=9,720,000円
■全長×全幅×全高=4580×1885×1410mm
■ホイールベース=2745mm
■車両重量=1710kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ツインターボ/2992cc
■最高出力=460ps(338kw)/6250rpm
■最大トルク=550Nm(56.1kg-m)/2650-5870rpm
■トランスミッション=6速MT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:275/35R19、後:285/30R20

問い合わせ先=BMWジャパン  0120-269-437

【SPECIFICATION】AUDI RS3 SEDAN
■全長×全幅×全高=4540×1850×1410mm
■ホイールベース=2630mm
■車両重量=1600kg
■エンジン種類/排気量=直5DOHC20V+ターボ/2480cc
■最高出力=400ps(294kw)/5600-7000rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/2250-5600rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前:ストラット、後:ウイッシュボーン
■ブレーキ=前後:ディスク
■タイヤサイズ=前:265/30R19、後:245/35R19
■車両本体価格(税込)=8,490,000円

問い合わせ先=アウディジャパン TEL0120-598-106

リポート=渡辺慎太郎 フォト=郡 大二郎 ルボラン2024年2月号より転載
CARSMEET web編集部

AUTHOR

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

注目の記事
注目の記事

RANKING