
2025年9月から欧州市場で発売予定
日産は、欧州で第三世代となる同社ハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載した「Qashqai(キャシュカイ)」を発表した。この新世代e-POWERは、同パワートレインならではの高い走行性能や、スムースで気持ちの良い運転体験を損なうことなく、燃費性能と静粛性を向上させたという。エンジンで発電した電気を使い、100%電気モーターで走行するe-POWERは、モーターや制御をEVと共用することが可能だ。
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ディーゼル車なみの航続距離と利便性、EVの運転体験と応答性
e-POWERは日産独自の電動パワートレインであり、エンジンを発電専用とし、駆動はすべて電気モーターのみで行うシリーズハイブリッド・システム。電気モーターのみで駆動するため力強くレスポンスの良い加速と高い静粛性が特徴とされており、他のハイブリッドより単純な機構でより滑らかな、EVのような運転体験を提供するという。
またEVと同じように、回生ブレーキにより減速エネルギーを電気に変換してバッテリーに戻すことが可能。新たなe-POWERはこのコンセプトをさらに進化させセグメントトップの燃費を実現し、最大航続距離もディーゼル車並みを誇るとのことだ。
具体的には、燃費性能は4.5L/100km(WLTP)に向上し、最大航続距離は1200kmを実現。またCO2排出量は116g/kmから102g/kmへ12%削減、さらに静粛性も先代比最大5.6dBの低減となり、EVのような静粛性を実現したという。一方、スポーツモード選択時に10kW出力を上げるモードも採用しており、スポーティーな走行体験を提供することも狙いとしている。
新開発のe-POWERユニットと専用エンジン
新世代e-POWERは、モジュール化された新開発5-in-1 e-POWERパワートレインユニットを採用、このユニットはモーター、発電機、インバーター、減速機、増速機といった5つの主要部品を、「コンパクトで軽量」なひとつのケースに統合したものだ。モーターの最高出力は11kW向上し151kW、バッテリー容量は2.1kWhと従来同様のスペックを維持しながら、ユニット自体の高剛性化と軸構造の最適化により、走行時の音や振動を大幅に低減したという。
組み合わされるエンジンは、専用完全新設計の1.5L 3気筒ターボ。日産独自技術のSTARC燃焼コンセプトを採用することで、シリンダー内燃焼の安定化を実現し、熱効率42%を達成したとされる。これにより、低速時でも静かで効率的な運転が可能だとのこと。
効率を最大化するための大型ターボや最終減速比の変更により、高速走行時のエンジン回転数を従来より約200rpm低くすることで、騒音抑制も図られている。e-POWER専用設計とすることで、従来搭載していた可変圧縮比技術は不要となり、また潤滑油を0W16にすることでエンジン内部の抵抗を低減。また、オイルメンテナンスの距離が15,000kmから20,000kmに延長された点も、ユーザーには歓迎されるべき点であろう。
ADAC(ドイツ自動車連盟)の燃費評価に基づく独立試験では、現行「キャシュカイ」と比較して、実走行条件で最大16%の燃費向上、高速道路では14%の向上が確認されているという。
日産のチーフテクノロジーオフィサー、赤石永一氏は次のようにコメント。
「この第三世代e-POWERは、日産のハイブリッド技術を再定義するものであり、あらゆる状況で滑らかで応答性の高い走行を提供します。約10年にわたる開発における知見を集約し、より効率的で洗練された、競争力のあるシステムを実現しました。キャシュカイでの導入は始まりに過ぎず、2026年度には日本と北米市場への投入を予定しており、その他の市場にも順次投入してまいります」
電動化へのスマートな選択肢として
日産では、e-POWERは電動化移行時代における新しい選択肢のひとつになると主張。電気モーターで走行するため変速ショックや出力の遅れがなく、充電は不要、今まで通りガソリンスタンドで給油すれば走行できる——これがその理由とされている。電動駆動の楽しさや魅力を多くのユーザーが体感することで、将来の更なる電動化へのスムースな移行にも貢献するという。
キャシュカイは英国サンダーランド工場で生産され、2025年9月より欧州市場で発売し、その後アフリカおよびオセアニア市場でも順次展開される予定。新世代e-POWERは、日本市場においては2026年度発売予定の新型「エルグランド」、北米市場においては2026年度中発表予定の新型「ローグ」に搭載することが計画されている。