コラム

「きっちり」と「ゆるめ」、どちらが良いのか!? ファンベルトからステアリング、さらには遊びの姿勢まで!【デューンバギー恍惚日記】第10回

1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
タミヤ製1/18スケール・プラモデル「フォルクスワーゲン・バギー」
「BERRY mini-T(ベリー・ミニT)」の広告
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1972年式「セキネ・ブーンバイクGT」
1972年式「セキネ・ブーンバイクGT」
コーギー製ミニカー「G.P.ビーチ・バギー」
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス

バギーにまつわる雑感あれこれ

【デューンバギー恍惚日記】第9回に続き、「メイヤーズ・マンクス」のレポートをお届けしていこう。2017年末にレストア完了以来の約8年、「ムーンアイズ」のショー出展やビーチ(砂浜)での走行、純正ロールバーへの交換やフロント・ナロードなどの改良、フロントタイヤのラジアル化や純正オルタネーター・プーリーへの交換、更に新型純正マフラーへの交換などを経て、自分なりに一応の完成を見たと感じているこの頃なので、今回はこれまでに触れなかったフィーリングや、バギーを通して学んだことなどを徒然に綴らせて頂く。

【画像15枚】季節とともに歩む、マンクスの様々な貌を見る!

締めるのか? 緩めるのか?

これはクルマのセットアップというか、ちょっとした「調整」に関する話だ。少し前にオルタネーター・プーリーを交換したエピソードを書いたが、実はそれ以前から、ファンベルトの張り具合がかなり“ゆるめ”だと感じていた。運転で体感したのではなく、始業前点検で触るたびに感じていた点。ここは「ケーズコレクション(以下ケーズと略す)」下村さんのセッティングなので、 “ゆるめに感じるが、これで良いのか?”と直接お尋ねしたことがある。

すると下村さんのお答えは「いろんな考え方があるが、自分は敢えてゆるめに張っている。なぜならベルトを強く張りすぎると、オルタネーターのベアリングにダメージを与えるリスクがあるからだ。特に古いVWの場合はゆるめに張ることが多い。それでも発電量は充分だし、冷却も問題ない」というものだった。

なるほど一理あるように思える。対して純正オルタネーター・プーリーへの交換をしてくださった「バグワークス」林さんは、適正にキッチリ張るべきというお考えのようだった。空冷VWに於けるファンベルト本来の役目を考えれば、確かに適正に張るべきであろう。私がここで学ばせていただいたのは、エンジニアや整備士の方々のちょっとした采配で、クルマの性格は微妙に変わる、ということだ。これは、オーナー自身がクルマに求めている感覚を追求する上での重要な「鍵」ともなると思う。

ステアリング・フィール

これも上記に少し似た話。最初からステアリングの「遊び」が大きいと感じていた。通常の走行時は問題ないのだが、高速道路走行時にステアリング・センター付近の遊びが大きくて正直怖かった。ここも下村さんに相談したことがあるが、ファンベルトに対するのと共通した考え方で、クイック(タイト)にセットし過ぎるのは逆に危険だという。

確かに一理ある。極端なショートホイールベースのマンクスに、クイック過ぎるステアリングをセットした場合、特に高速走行時なら、ちょっとした入力のはずみでトリッキーな挙動を引き起す可能性がある。クイックなら楽しいだろうが、リスクヘッジも大切だ。

スーペリア製の3本スポーク・ステアリング。グリップ部分はスポンジのように柔らかい質感のラバー。ステアリングの「遊び」はどの程度が最適解なのか。

マンクスは有名(?)になった

これは本当にどうでも良い話。ブルース御大が亡くなり、新体制となったメイヤーズ・マンクス社はインスタグラムなどのSNSを巧みに活用、本国アメリカのみならずイギリスをはじめとする西欧諸国の自動車イベントなどでの露出が増えたこともあって、ここ数年で一般的な「クルマ好き」市場での知名度が大いに上がった。いわゆるセレブ層にとっても、ちょっとした“はずし”感覚で所有したいクルマになったし、電動版が発表されたことも注目を集めた。

一ファンとして盛業は大いによろこばしいのだが、そんなメジャー化(?)の中、特に日本国内のSNSでは、デューンバギー的な車輌を何でもかんでも「メイヤーズ・マンクスだ!」と断言する向きが散見されるようになったことに驚いた。勿論これは仕方のないことで、往時を知る自動車ジャーナリズム世界の人々でさえ、ノスタルジックなデューンバギーの種類を把握できている人は殆ど居ないはずだ。

マンクスを取り巻く誤解の渦

よく勘違いされている筆頭が、タミヤ1/18スケール・プラモデルとして発売されていた「VOLKSWAGEN  BUGGY」。これは1969年頃にヤナセが試験的に輸入した「EMPI Imp(エンピ・インプ)」を取材したものであり、メイヤーズ・マンクスではない。また「デューンバギー」や「VWバギー」は車名(固有名詞)ではなく、言わば「カテゴリ」名称だが、それを車名と誤解する向きもあって更にややこしい。

タミヤ製RCカーの「サンド・ローバー」という車種は明らかにマンクスをモチーフにしたボディ造形だが、タミヤRCで育った世代には、あれをタミヤ・オリジナルの造形だと思い込んでいる人もいた。

キリがないからもう止めるが『ジャッカー電撃隊』という実写ヒーローものに登場した「ハートバギー」というキャラクターカーは、「BERRY mini-T(ベリー・ミニT)」がベースで、形も全然違うのだが、よくメイヤーズ・マンクスだと誤解されている。

『ジャッカー電撃隊』の「ハートバギー」(劇中車)のベースとなった「BERRY mini-T(ベリー・ミニT)」の広告。しばしばマンクスだと誤解されている。

こうした中で私が学ばせていただいたのは、「実物を見ることの大切さ」。自分だって初めてEMPI Impを見た時はその大きさに驚いたではないか。実物を見れば誰でもそれぞれの違いがはっきりわかるはずだ。そしてまた、知ったか振りは情けないからやめようと改めて自戒する機会ともなった。

バギー的なものたち

さらに余談である。自分は実物のマンクスを手に入れる幸運に恵まれた。しかし手に入れる以前から現在に至るまで「デューンバギー的なもの」を愛でてささやかに楽しむことを続けている。あの時代のものが好きなのだ。筆頭は古い模型や玩具などを作ったり集めたり。

更にはデューンバギーとほぼ同じ時代に憧れた国産自転車「セキネ・ブーンバイクGT」を安く手に入れてのんびり走り、パーツを探しては少しずつオリジナルに直したりもしている。ブーンバイクのデザイン・モチーフは、明らかにデューンバギーであろう。今や遠いが「バギーの時代」は自分の記憶の中に確実にあり、殆どの人々は忘れてしまっているが、自分はまだ当分は忘れずに行こうと思う。

1972年式「セキネ・ブーンバイクGT」。永らくサドルとヘッドライトのオリジナルパーツを探しているが、パーツ単体が車輌本体よりも高価だったりする。

次回からはまた、日々のメンテナンスやドライブのレポートをお届けします。どうぞお楽しみに!

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【画像15枚】季節とともに歩む、マンクスの様々な貌を見る!

山田剛久

AUTHOR

1962年、富山県生まれ。約20年の出版社勤務を経てフリーに。自動車、模型、モータースポーツ関連のニッチ記事専門ライター兼編集者として、ごく稀に重宝される。ホットロッド/カスタム、1930〜’70年代の内外モータースポーツ、古い自動車模型や玩具が専門分野。「多摩川スピードウェイの会」会員。

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