コラム

【ホンダNSX】オールアルミの衝撃から集大成「タイプS」へ。初代〜2代目に受け継がれた“人間中心”の真髄【自動車業界の研究】

オールアルミボディとVTECが生んだ奇跡。ニュルで鍛え上げられた「ホンダNSX」究極のドライビングプレジャーを振り返る

日本車がプレミアムセグメントにおいても本格的に意識されるようになった時代を代表するモデルとして、1989年にデビューしたトヨタのセルシオ(LEXUS LS400)や日産のスカイラインGT-R、そして、1990年にデビューしたホンダのNSXなどが挙げられます。

今や世界の多くの自動車メーカーが開発を行うドイツのニュルブルクリンク(サーキット)でNSXは走りを徹底的に鍛え上げて、デビューすると同時に世界のスーパースポーツカーメーカーも注目しました。今回はスーパースポーツカー日本代表のNSXについて、その歴史やこれまでの功績を中心にご紹介します。

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NSXが誕生した時代

ホンダのNSXは、世界第一級の運動性能を目標に量産車世界初のオールアルミボディや高性能3.0L V型6気筒DOHC VTECの自然吸気エンジン、アルミ鍛造アームやコンプライアンス・ピボットが採用されたインホイール型ダブルウイッシュボーンサスペンションに前後異径タイヤを備え、当時の国産車としては驚きの800万円超という車両価格で1990年に誕生しました。

当時の日本はバブル経済による好況も後押しして、NSXの他にも世界に影響を与えたモデルとして、前年の1989年には静粛性の高さで世界の自動車メーカーが注目したトヨタのセルシオ(LEXUS LS400)も誕生、世界トップレベルの運動性能を備えた日産のスカイラインGT-Rも復活していて、安くて壊れないと評されていた日本車が高性能車としても世界で認められ始めていた頃です。

ホンダは世界最高峰のモータースポーツのひとつであるF1(Formula 1)にサプライヤーとしてエンジンを供給していて最強と称され、フラッグシップモデルのレジェンドも二代目モデルがNSXと同じ1990年に登場、世界的自動車メーカーの名車と比較し得る日本の高性能車が登場してきた時代とも言えます。

NSXが特に革新的であったのは、当時のスーパースポーツカーにおいては両立がほとんど考えられていなかった日常性を兼ね備えていたところで、街乗りなどの運転でも扱いやすく、乗用車と変わらない燃費、当時のスポーツモデルでは主流のMT(マニュアル・トランスミッション)仕様のみならずAT(オートマティック・トランスミッション)仕様のグレードも用意され、トランクも実用的に荷物が積載できるなど、NSX以前には無かったスーパースポーツカーの新しい世界を創出したと捉えることができます。

その後、バブル経済の崩壊による不況の時代においてもNSX初代モデルは脈々と進化を続け専用工程で15年ほどにわたって少数でも生産が続けられ、オデッセイやステップワゴンといったモデルの販売面における成功があったとはいえ、ホンダという企業のNSXへのとても熱い想いが感じられます。

NSX 上面 1990年〔Honda〕

初期のNSX初代モデル

1990年当時のNSX(NA1型)の競合モデルと言えば、フェラーリ348やポルシェ911(964型)、日産スカイラインGT-R(R32型)、三菱GTO、少し遅れて登場したマツダRX-7やトヨタ スープラといったいずれも第一級の運動性能を備えたモデルで、筑波サーキットのラップタイムやゼロヨン(0-400mの加速)のタイムがモデル改良毎に各所で計測され、速さこそがスポーツカーの真髄といった感が今以上にあったようにも思います。

NSXの開発には日本を代表するレジェンドドライバーの黒澤 元治さんも深く関わり、当時F1におけるトップドライバーのアラン・プロスト選手やアイルトン・セナ選手、日本人初のF1レギュラードライバーである中嶋 悟選手なども開発に影響を与えたとも言われ、ドイツのニュルブルクリンク(サーキット)などで徹底的に走りが鍛えられています。

エクステリア(全長×全幅×全高=4430×1810×1170mm)は、日本を代表する和製スーパースポーツカーと称されるようにワイド&ローで端正にまとまっていて、リトラクタブル式のヘッドライトからフロントホイールハウスにかけては躍動的で、そのまま後ろに流れるようにスポイラーと一体型のテールエンドまでのデザインは迫力がありながらも上品で美しいと感じます。

インテリアに着座した際の印象は、スーパースポーツカーのコックピットといった包まれ感で視線はさすがに低いと感じるものの、機能性も高く使用されているマテリアルは上質で落ちついていて高級感も感じられます。

NSX エクステリア 1990年〔Honda〕

NSX インテリア 1990年〔Honda〕

NSXの特徴は、何と言っても量産車世界初の軽量オールアルミボディとミッドシップにレイアウト(後輪駆動)された当時国内トップの最高出力280ps/7300rpm(AT仕様は265ps/6800rpm)、最大トルク294Nm(30.0kgm)/5400rpmを発揮する3.0L V型6気筒自然吸気エンジン(ボア×ストローク=90.0mm×78.0mm、圧縮比=10.2)による世界トップレベルの運動性能、そして、当時のスーパースポーツカーとしては異例の日常生活におけるドライブへの考慮やトランクに専用のゴルフバッグであれば2本積めるといった使い勝手等を両立していることなどが挙げられます。

オールアルミボディは、栃木県塩谷郡高根沢町にあったホンダ栃木製作所の高根沢工場(後の時代にはホンダ鈴鹿製作所へ生産移管)でプレス成形等を始め極めて高い生産技術によって組み立てられ、サーキット走行にも耐える高いボディ剛性と軽量(車両重量MT仕様=1350kg、AT仕様=1390kg)を両立しています。

NSX オールアルミボディ 1990年〔Honda〕

高根沢工場に搬入されるエンジンは、埼玉県和光市にあったホンダ埼玉製作所 和光工場(後にホンダエンジニアリング栃木、ホンダ鈴鹿製作所へ生産移管)で組み立てられていました。

エンジンは、圧倒的にスムーズで評価が高く、バンク内のスペースが広いことから吸気系の設計自由度が高い(半面V型6気筒エンジン特有の偶力振動は対策難)バンク角90°が採用されたレジェンド用のエンジンをベースに新設計されていて、ポイントはDOHC(Double Over Head Camshaft=燃焼室上部に2本のカムシャフト)化とVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control system=バルブタイミングとリフト量の可変機能)化です。

それらによってエンジン負荷(≒アクセル開度)や回転域で最適な状態が異なる燃焼室内への流入空気の流速や流量の最大化と燃料噴射や点火時期を緻密に電子制御することによって低回転域から高回転域までの燃焼圧力を高め、低回転域の太いトルクと高回転域の高い出力を両立、当時における最高峰エンジンとして世界的に高い評価を得ていました。

3.0L V型6気筒 DOHC VTEC 自然吸気エンジン(C30A型)1990年〔Honda〕

そして、忘れてならないのは1991年に始まった『NSXオーナーズミーティング』で、レジェンドドライバーの黒澤 元治さんを中心に、その後のスポーツカードライビングにおける安全面や自動車文化面でも意義は大きく、今日の各種ドライバーミーティングに受け継がれていきます。

その後、1992年には標準モデルよりサーキット向けの仕様として、エンジンの加工精度の向上(クランクシャフト、ピストンやコンロッドなどの重量バランス精度)、ギアレシオ(ファイナル)を4.062から4.235へ変更(4.3%引き下げ)、足廻りの専用チューニング(全高はスペックで-10mm)、そして、徹底的に120kgほど軽量化(車両重量1230kg)が施されたNSXタイプRも登場、軽量化によって速さに磨きがかかり、スポーツカーにとって如何に重量の影響が大きいかも示しました。

NSX タイプR フロント 1992年〔Honda〕

そして、1995年にはAT仕様にステアリングコラム横にあるシフトスイッチを指先で操作することでマニュアル感覚の走行が楽しめる『Fマチック』を初採用、F1にも採用されるステップモーターでスロットルを開閉する電動スロットル制御システムDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)も組み合わせられ、TCS(トラクション・コントロール・システム)には減速制御も付与され、さらに優雅なオープントップモデルのタイプTも登場しています。

NSX タイプT 1995年〔Honda〕

中期のNSX初代モデル

フェラーリの348がF355へ、ポルシェの911が964型から993型へと競合モデルも進化を続ける中、NSXも1997年にはMTを6速化(従来は5速)、エンジンの排気量を3.0L(C30A型)から3.2L(C32B型)へ拡大(ボア×ストローク=93.0mm×78.0mm、圧縮比=10.2)、車台(車体)型式もNA1型からNA2型へ変わっています。

スペックは、最高出力280ps/7300rpmに変化は無いものの、最大トルクは304Nm(31.0kgm)/5300rpmと〔294Nm(30.0kgm)/5400rpmから〕10Nm(1.0kgm)ほど太く発生回転数も100rpm引き下げられ、高回転域で伸びのあるパワーはそのままにドライバビリティを向上させています。

圧縮比の変更は無く、排気量の拡大はボア径を3.0mm(90.0mmを93.0mmへ)大きくすることで実現、ストローク長が変わらないことからもベース設計を共有するレジェンド二代目モデルに搭載されていた同じ排気量3.2L(C32A型)エンジン(ボア×ストローク=90.0mm×84.0mm)とはボア×ストロークが異なることからもホンダのエンジンへの拘りが垣間見れます。

ロングストローク化は(同一回転数の時に)ピストンスピードが速くなるため特に運動系部品(クランクシャフト、コンロッド、ピストン等)の強度や摺動部の油膜切れ等から高回転域において不利であることから、ボア径の拡大(燃焼面では逆に不利)によって高回転域の性能をできるだけ犠牲にせず、幅広い(低~中~高)回転域でトルクを太くしてドライバビリティ向上を図っています。

補足までに、ボア径の拡大はエンジンのシリンダー壁(スリーブも含めて)を薄くすることで実現されることがほとんど(ボアピッチ=シリンダー中心間距離の変更は異例)のため、特にシリンダー間の温度が上昇してしまうので耐久性を鑑みながら開発を仕上げていく必要があります。

一方でAT仕様はエンジンの排気量に変更はないもののDBWを活かしたFマチックを進化させ、標準仕様とタイプRとの中間的モデルとも言えるNSXタイプSも新たに登場、さらに1999年には平成12年排出ガス規制適合のHONDA LEV仕様へと改良が施され、NSXは時代と共に進化を続けていることが伺えます。

3.2L V型6気筒 DOHC VTEC 自然吸気エンジン(C32B型)1997年〔Honda〕

後期のNSX初代モデル

NSX初代モデルとしては最初にして最後の大掛かりなエクステリアデザインの変更が2001年に実施され、『スマート&スポーツ』をコンセプトにした新デザインではヘッドライトがリトラクタブル式から固定式のプロジェクタータイプ・ディスチャージヘッドライトへ変更、フロントバンパーやリアバンパースカート、ドアガーニッシュ、リアコンビネーションランプなども変更することで空力性能を向上、従来と同様に標準モデルよりもスポーツ性が高められたタイプSと優雅なオープントップモデルのタイプTも設定されています。

NSX 2001年〔Honda〕

2002年にはタイプRも復活(車両重量1270kg)、1992年のタイプRと同様に足廻りやエンジンのチューニングとファイナルギアのローレシオ化などが施され、さらにエアアウトレットダクト付カーボンボンネットフード、フィン付フロントアンダーカバーの採用でフロントをマイナスリフト化、リアディフューザーやカーボンリアスポイラーの採用でリアをマイナスリフト化、ニュルブルクリンク(サーキット)のラップタイムも8分未満の実力を持っています。

ミスターNSXとも称される名ドライバーの道上 龍さんの鈴鹿サーキットでの超絶ドライビングテクニックに同乗体験した際のフィーリングとしては、タイプSモデルも限界速度はとても速いのですが、タイプRは特にヘアピンやシケインといった低速コーナーにおける車両のスタビリティ(踏ん張り感)が全然違ってとても速く、日常ユースにおける乗り心地と引き換えにタイプRが如何にサーキットでポテンシャルを発揮するかを痛感した覚えがあります。

やはり、スーパースポーツカーはドライビングのテクニック次第といった本質は不変的で、それこそがスポーツカーの真髄と思いつつも、タイプTのように優雅なドライビング用のモデルも用意してくれていたNSX初代モデルの懐の広さを今更ながら思います。

そして、2003年には全タイプにイモビライザー(盗難防止システム)を装着、今日も大きい問題の車両盗難を防ぐための備えを強化、NSX初代モデルは2005年まで生産されました。

NSX タイプR 2002年〔Honda〕

復活したNSX二代目モデル

2016年にホンダはNSXを26年ぶりにフルモデルチェンジを実施(NC1型、発売は2017年)、東京ビッグサイトで大規模に開催された発表会でお披露目されました。

当時、NSXの競合モデルにはフェラーリ488やポルシェ911(991型)、日本では日産GT-R(R35型)といったモデルが時を経て進化を続けてきた中においてもNSXは注目を集め、2400万円近い車両価格も話題になりました。

エクステリア(全長×全幅×全高=4490×1940×1215mm、車両重量=1780kg)全体の印象は、初代モデルを彷彿とさせるデザインでコンセプトは継承されていると感じられ、よりワイドに迫力と躍動感が増していて、曲線的に盛り上がる箇所と直線的でシャープであるところが絶妙に組み合わせられバランスも良く品の良さを感じます。

インテリアに着座してみると、機能的で初代モデル同様に包み込まれるコックピット感からスーパースポーツカーに乗っていることを意識させてくれて魅力的ですが、使用されるマテリアルは一般的といった感じの箇所も見受けられ、センタークラスターに配されたモード変更のダイアルが大きくて印象的です。

NSX 走行 フロント 2016年〔Honda〕

NSX インテリア 2016年〔Honda〕

高効率且つ高出力の3モーターハイブリッドシステム『SPORT HYBRID SH-AWD®(Super Handling – All Wheel Drive)』としてミッドシップにレイアウトされたパワーユニットは、新開発された3.5L V型6気筒ツインターボエンジン(ボア×ストローク=91.0mm×89.5mm、圧縮比=10.0)に高効率モーターと9速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)、トルクベクタリングを可能とするフロントの左右独立モーターが組み合わせられ、システム最高出力581ps、最大トルク646Nm(65.9kgm)のハイパワーを4輪駆動、リニアで力強い加速と優れた回頭性能を実現しています。

エンジンは、ホンダの主力V型6気筒エンジンであるJ型をベースに走行性能向上などのため低重心化を狙いバンク角を60°から75°に変更、新開発のV型6気筒ツインターボエンジン(JNC型)の特徴として、燃料噴射量を増やすために直噴インジェクションを大型化するとアイドリング時等の微小燃料噴射時のコントロールが難しいため、直噴インジェクションを大型化せずにポート噴射インジェクションを付加(併用)する形で高負荷時に必要とする燃料噴射量を確保、最高出力507ps/6500-7500rpm、最大トルク550Nm(56.1kgm)/2000-6000rpmを実現しています。

NSX二代目モデルは日本と米国で開発され、米国オハイオ州のメアリズビル四輪車工場の隣接地に位置する専用工場『パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター(エンジンは同州にあるホンダ最大のアンナ・エンジン・プラント)』で生産されました。

最先端の生産技術とクラフトマンシップの高度な融合、熟練工約100名の従業員がボディ製造や塗装、最終組み立てまでを担当、米国のホンダ工場においても日本のホンダの理念や技術などが活かされ、ボディ製造から最終組み立てまでを完全内製化することで極めて高精度で高品質な商品に仕上げています。

米国パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター〔Honda〕

ボディには、新開発の高剛性押出成形アルミ材を中心とした複数素材によるスペースフレームが採用され、自動車初のアブレーション鋳造や3次元熱間曲げ焼き入れ(3DQ)超高張力鋼管フロントピラーによって、軽量かつ高い剛性と優れたスペース効率と衝突安全性を実現しています。

走行シーンに応じてセレクトできる4つのモード『Integrated Dynamics System』も設定されていて、市街地からサーキットまでさまざまな走行シーンに合わせて『Quiet』、『Sport』、『Sport+』、『Track』の各モードをダイアル操作で切り替えることができ、エンジン、モーター、トランスミッションやシャシーとステアリングのモードを統合制御します。

『Quiet』モードでは低速域の電動(モーターのみの)走行による静粛走行も可能で、また『Track』モードでは最大の動力性能を発揮することができ、発進時にエンジンと3モーターをフル活用した加速を実現する『ローンチモード』も備えます。

2018年にはサスペンション各部の剛性を高める(フロントスタビライザーを26%、リアスタビライザーを19%、リアコントロールアームブッシュを21%、リアハブを6%)など各所の改良を施して、車両重量(1800kg)は20kgほど増えたものの基本性能を向上した改良モデルを発表(2019年発売)しています。

NSX 走行 リア 2016年〔Honda〕

NSX二代目モデルの集大成であるタイプS

2021年には350台限定でこれまでの感謝を込めた特別なモデルと銘打ちタイプSも発表(2022年発売)、NSX二代目モデルの集大成として目指した加速性能やコーナリング性能、空力や冷却性能などを徹底的に突き詰めています。

具体的には、エンジンの燃焼効率の向上や高耐熱材ターボの採用による過給圧アップ、冷却性能の向上などによって、システム最高出力610psと30psほど向上、システム最大トルク667Nm(68.0kgm)も20Nmほど向上、エンジン単体でも最高出力を20psほど引き上げて529ps/6500-6850rpm、最大トルクも50Nmほど引き上げて600Nm(61.2kgm)/2300-6000rpmとしています。

さらにグリップ性能の高い専用タイヤの採用や新デザインの専用鍛造アルミホイールによるワイドトレッド化、『SPORT HYBRID SH-AWD®』の駆動配分制御の見直しも実施、さらに『Quiet』モードにおけるモーターのみでの走行領域の拡大や加速性能の向上も実現しています。

エクステリア(全長×全幅×全高=4535×1940×1215mm)は全長が45mm拡大、前後バンパーに新デザインを採用、エアロダイナミクス性能の向上により空力と冷却を両立させてトータル・エアフロー・マネジメントを強化、シミュレーションや風洞実験、走行試験を繰り返して仕上げ、ホンダ初のマットカラー“カーボンマットグレー・メタリック”も用意され、車両重量(1790kg)も10kgほど軽くしていて2022年12月まで生産されました。

NSX タイプS 2021年〔Honda〕

NSX タイプS ツインモーターユニット(前輪トルクを自在に制御)2021年〔Honda〕

NSX二代目モデルのインプレッション

2017年に初度登録されたNSX二代目モデルを一般道で試乗する機会に恵まれました。その時の印象としては『Quiet』モードでスタートするとモーターのみで走り出して低速走行が可能なため、ロードノイズは聞こえるものの静かで早朝深夜の住宅街の走行等に配慮できるありがたいモードであると感じると共に、エンジンの振動や音が無いので路面状況をダイレクトに感じられるのでスーパースポーツカーならではのハンドリングの素性を味わうことができます。

続いて『Sport』モードは、いわゆるハイブリッドモードでモーターとエンジンによる走行がバランス良く組み合わせられ、アイドリングストップやコースティング機能(惰性走行)も頻繁に介入して燃費も考慮されるスタンダードモードだと実感、決して軽くはない車両を軽快で快適に走らせることができてステアリングフィールもなめらかなので楽しいドライブを提供してくれます。

そして、今回は一般道の走行であるため『Track』モードは試しませんでしたが、『Sport+』モードではアイドリング時でもシート後方から伝わるエンジンの存在感と排気音は圧巻で、パワートレインのポテンシャルもかなり発揮されるためアクセルを開けばどこからでも極太のトルクが湧き出してきて、さらにステアリングの路面からのフィードバックもダイレクト感が増して手応えがあるのでスーパースポーツカーに乗っていることをより理解させてくれます。

ホンダの誇る四輪駆動力自在制御システムである『SPORT HYBRID SH-AWD®』は、通常の街乗りにおいて意識させられることは良い意味でなく、それなりにアクセルを踏み込んだ時にのみモーターがアシストしていることが感じられます。

ハンドリングは乗用車に比べればもちろんかなりクイックではあるものの扱い易くて適度にマイルドさを残しており、このあたりからもNSXというブランドが目指している方向性を体感することができます。

およそ近しいパッケージングを持つ他のスーパースポーツカーと比較すれば、NSX二代目モデルが一般道の走行で五感に訴えかけてくる刺激やプレッシャーは良い意味で少なく、荷物の積載でもトランクルームが高温になるなど課題はあるものの、良くも悪くも扱い易くて日常使いにも配慮されているのがNSXの真骨頂だと受け取れます。

走行時に集団下校中の小学生から『カッコイイ!』と指を差して言われたのがとても印象的で、数多ある日本ブランドの車でもスーパースポーツカーとしてそれだけスタイリングにインパクトがあることを証明されるNSXはさすが!と思いました。

試乗したホンダカーズ岐阜北のNSX

試乗したホンダカーズ岐阜北のNSX(パワートレインとトランクルーム)

ホンダカーズ岐阜北はNSXで地域にも貢献

今回、NSX二代目モデルの試乗にご協力いただいた『ホンダカーズ岐阜北(株式会社ホンダ自販岐阜)』さんは、岐阜県の中濃、東濃、飛騨エリアに4店舗を展開していて、各拠点の個性を明確に地域に根差した事業活動を方針として掲げています。

その中でも、今回訪問した美濃太田店は県内最大級の広さを持つ店舗で、豊富な展示車や試乗車、あらゆるモデルに対応できるサービスピットも配備している法人における旗艦拠点とのことで、実際の店内はゆとりを持って車両が展示されているエリアから温もりが感じられる木目フロアの商談エリアまで、こんなに広い自動車ディーラーは日本全国でもそうはないと思いました。

商談スペース〔ホンダカーズ岐阜北〕

NSX二代目モデルを保有している理由について、同社の三輪 泰彦 常務取締役に伺ったところ『弊社は地域に根差した事業活動を行っているため、主に地域のイベントなどに展示するNSXによって、来場される皆さまに喜んでいただくと共に、Hondaへの期待感やワクワク感を持っていただくことです。』とお話しされていました。
スーパースポーツカーであるNSXが地域のイベントなどで見て触れられる機会が提供されていることは、地域への貢献としても大きく、イベントに来場するきっかけを作ったり、会場の雰囲気を盛り上げたり、来場者がクルマにも興味関心を持つきっかけになったり、とても社会的意義の高い事業活動でNSXにはそれだけの力があると思います。

左から三輪常務、小島部長、小笠原課長、白鳥課長、辻本EVマイスター〔ホンダカーズ岐阜北〕

スーパースポーツカーNSXの功績

NSXは欧州のスーパースポーツカーと比較し得る世界でも数少ない存在で、最先端技術による高性能や新しい価値として日常性を兼ね備える日本を代表するスーパースポーツカーとしてブランドオリジナリティを構築、世界の自動車業界や自動車文化にも影響を与えてきたその功績はとても大きく、誕生から35年の時を超えてNSXの初代モデルとその後を継いだ二代目モデルは自動車業界の糧となり指標となっていると考えられます。

現在の自動車業界は変革期でCASE(Connected=コネクティッド、Autonomous=自動運転、Shared&Services=シェアサービス、Electric=電動化)からブランドオリジナリティが問われる時代に突入していて、自動車各社の経営を取り巻く状況は厳しいですが、ホンダNSXの復活をユーザーやファンは待ち望んでいると思いますし、自動車が日本の基幹産業であるならば、日本が誇るスーパースポーツカーであるNSXの復活が待ち望まれます。

ホンダは、新たなヘリテージサービスである『Honda Heritage Works(ホンダ・ヘリテージ・ワークス)』を2026年4月より開始すると発表しており、旧型スポーツタイプの車種を対象とした復刻部品をグローバルに供給、日本では新たなレストアサービスも提供するとのことです。

少量生産スーパースポーツカー事業のビジネスは大量生産車の場合とは異なるため、収益化には少量生産ビジネスモデルの確立を必要としますが、変革期で課題も山積する厳しい状況下においては難しいのが実情です。

しかし、少なくとも現存するNSXはこれからもヘリテージサービス等によって輝きを失わず、F1にも復帰したホンダはNSX三代目モデル登場への期待から、これからも夢を提供し続けてくれるのではないでしょうか。

NSXのBrand Originality 〔ABeam Consulting〕

【画像22枚】驚異のオールアルミボディにVTECの魂。歴代NSXの官能的なパワーユニットと研ぎ澄まされたメカニズムをチェック

■参考リンク
ホンダ ホームページ
https://www.honda.co.jp/
Honda【Honda SPORTS DRIVE WEB】NSX 35th Anniversary Special NSXの進化の足跡をたどる
https://www.youtube.com/watch?v=la6b4ZS36Ls
スーパースポーツに革新をもたらしたNSX
https://www.honda.co.jp/sportscar/NSX_35th/
歴代モデル紹介
https://www.honda.co.jp/sportscar/sportscar/nsx/
Honda | 4輪製品アーカイブ 「NSX」
https://global.honda/jp/pressroom/products/auto/nsx/
新型「NSX」北米仕様車の量産を4月下旬より開始 | Honda 企業情報サイト
https://global.honda/jp/news/2016/4160318.html
新たなヘリテージサービス「Honda Heritage Works」を2026年4月より開始 | Honda 企業情報サイト
https://global.honda/jp/news/2025/4251212.html

橋爪一仁

AUTHOR

自動車4社を経てアビームコンサルティング。企画業務を中心にCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等、自動車産業の幅広い経験をベースに現在は業界研究を中心に活動。特にCASEとエンジンが専門で日本車とドイツ車が得意領域。

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