軽バンの常識を覆す極上のフットワークを披露
ついに、と言うべきか。あるいは、ようやく時代が追いついたと言うべきか。日本の物流を支えつつ、同時に我々クルマ好き、アウトドア好きの「遊びのベースキャンプ」として長年愛されてきた軽バンに、本格的な電動化の波がやってきた。ダイハツがトヨタ、スズキと共同開発し、満を持して投入した初の量産BEV「e-ハイゼット カーゴ」、そして今回試乗のステージへ連れ出した「e-アトレー」である。
商用ユースを主眼に置いたハイゼットに対し、内外装の質感を高め、乗用・レジャー志向を強めたのがアトレーだ。ガソリンモデルでもすでに「趣味の相棒」として絶大な人気を誇るこのクルマが、BEVという新しい心臓を得たことで、一体どんな世界を見せてくれたのか。
【画像40枚】「荷室1mmも犠牲にしない」は本当か? 大容量バッテリーを床下に凝縮したe-アトレーの驚異的なパッケージングを詳しく見る
「1ミリも犠牲にしない」。開発陣の執念が宿るパッケージング
実車を目の前にすると、一見して見慣れた現行アトレーのスクエアで合理的なフォルムだ。しかし、フロントフェイスのブラック加飾や専用エンブレム、そして足元の光沢ブラックスチールホイールが、単なる実用車ではない、どこか洗練された「ギア感」を醸し出している。
だが、このクルマの最大の凄みは、そのエクステリアの奥に隠されたパッケージングの妙にある。床下には36.6kWhという、軽自動車としては大容量のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーが敷き詰められている。にもかかわらず、なんと荷室の寸法はガソリン車と「1ミリ」も変わらないのだ。
ダイハツの開発担当者は、取材に対してこう語ってくれた。
「車両パッケージングにおいて絶対に譲れなかったのが『荷室空間の死守』でした。重く大きなバッテリーを積みながらも、お客様の使い勝手に直結する荷室を1ミリたりとも犠牲にしない。そのために床下の骨格をBEV専用に強化し、リアサスペンションも新設計のトレーリングリンク式を採用するなど、文字通りゼロから床下レイアウトを構築し直したのです」
この言葉通り、完全なフルフラットになる広大なラゲッジスペースや、ユーザーのDIY心をくすぐる30個のユースフルナットは見事に健在だ。すでにアトレーを愛用しているユーザーにとっても最大の朗報だろう。
圧倒的な静粛性と、シームレスに湧き上がる分厚いトルク
運転席に乗り込み、先進的なエレクトリックシフトをDレンジに入れ、アクセルを踏み込む。その瞬間、思わず「おっ」と声が漏れた。リア車軸上に配置された「e-Axle」が生み出すのは、最高出力47kW、最大トルク126Nmというスペックだ。数字だけ見ればガソリンターボ車と同等だが、実際のフィーリングは全くの別物である。アクセルを踏み込んだ瞬間から、タイムラグなしにスッと前に出る分厚いトルク感。重いバッテリーを積んでいるはずなのに、その身のこなしは驚くほど軽快で滑らかだ。
そして何より、圧倒的に「静か」なのである。これまでの軽バンといえば、シート下から容赦なく響いてくるエンジンの透過音や振動が当たり前だった。しかし、e-アトレーにはそれがない。モーターの微かな唸り音が聞こえる程度で、風切り音やロードノイズの抑え込みも想像以上に優秀だ。これなら高速道路の移動中も、助手席のパートナーと声を張ることなく会話が弾むに違いない。またストップ&ゴーをはじめ、頻繁に荷物を積み下ろす機会が多いシチュエーションでも、ストレス軽減につながることだろう。
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