ステランティス「ヘリテージハブ」が一般公開枠を大幅拡大。平日のセルフ見学も可能になり、イタリア自動車史の聖地がより身近に
ステランティスは2026年3月25日、イタリア・トリノにある歴史的車両の展示施設「ヘリテージハブ」の一般公開スケジュールを刷新し、休館日の月曜を除く毎日の開館へと枠を拡大すると発表した。これにより、平日は自分のペースで回れるセルフガイド見学が、週末は専門家によるガイド付きツアーが選択可能となる。120年以上にわたるイタリアンブランドの貴重な名車300台以上が集結する聖地が、より身近な存在になりそうだ。
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高まる関心に応え、平日見学の自由度が向上
ヘリテージハブの公開枠拡大は、自動車文化に対する国際的な関心の高まりに応えるものだ。事実、昨年だけでも来場者数は前年比で6%増加しており、海外からの訪問者も大きな割合を占めている。トリノの拠点が国際的な自動車文化のランドスケープにおいて、ますます中心的な役割を担いつつあることが浮き彫りとなった形だ。この高まる需要に対し、見学時間の選択肢を増やして柔軟性を持たせることで、来場者ファーストの姿勢を打ち出している。
今週から適用される新たなスケジュールでは、火曜日から木曜日までの平日は、ガイドなしで自由に展示スペースを探索できるようになる。開館時間は午前10時から13時までと、午後14時から17時までの二部制だ。来場者は自分のペースで見学プランを組み立てられるため、お気に入りの車両の細部をじっくりと観察したり、心ゆくまで写真や動画の撮影を楽しんだりすることができる。
一方、金曜日から日曜日までの週末には、設定された時間に専門ガイド付きのツアーが開催され、車両の背景にある歴史や技術的な逸話といった深い知見を得ることが可能だ。いずれのチケットもオンラインでの購入方式となっている。
120年の歴史を物語る、圧巻の展示コレクション
施設内には、ステランティスグループのイタリアンブランドが誇る300台以上の歴史的車両やプロトタイプが収蔵されている。フィアットやランチア、アルファ・ロメオ、アウトビアンキ、アバルトといったブランドの車両が年代順に並び、メイド・イン・イタリーの革新とスタイルの歩みを120年以上にわたって体感できる。展示の中央部には特に代表的な64台が配置され、モータースポーツで勝利を収めた車両や、極めて希少な特注車、デザインの歴史を変えた名車、ラリーの黄金時代を築いたマシンなど、8つの明確なテーマごとに分類して紹介されている。
さらに、半世紀に及ぶ協力関係の歴史を示す、イタリア国家治安警察隊の歴代フィアット車16台を集めた特別セクションなども見どころの一つだ。また、パビリオンの奥にはエンジンに特化したエリアが設けられている。ここには有名な「100シリーズ」の4気筒エンジンをはじめ、電気やタービン、さらには蒸気機関のプロトタイプに至るまで、30基以上の極めて重要なパワートレインが厳選して展示されており、1世紀に及ぶ技術的な独創性と実験の軌跡を垣間見ることができる。
歴史ある「オフィチーナ81」の空間美と多機能性
これらの貴重なコレクションを収容する建物そのものも、来場者を魅了する重要な要素である。舞台となるのは、トリノのミラフィオーリ産業コンプレックス内にある広さ約1万5000平方メートルの「オフィチーナ81」だ。かつてフィアットの機械生産工場だったこの施設は、綿密な保存修復によって当時の産業的な雰囲気を色濃く残している。特徴的なマスタードとグリーンの色彩や、コンクリートの床、金属製の柱が織りなす空間は、入り口に設けられた1939年から現在に至るミラフィオーリの歴史をたどる常設展示とともに、工業都市トリノの記憶を現代に伝えている。
この空間は単なる博物館にとどまらず、ワークショップエリアやカンファレンスエリアを備えた多機能な側面も併せ持っている。自動車産業の歴史的価値と現代のエンターテインメントを融合させた場として、昨年は企業の会議や文化イベントなど27の催しが成功裏に開催された。クラシックカー愛好家から家族連れまで、あらゆる層が自動車の歴史と文化に没入できるヘリテージハブは、多彩な魅力を放つ発信拠点としてさらなる発展を続けている。
【ル・ボラン編集部より】
かつてフィアットの心臓部であったミラフィオーリの「オフィチーナ81」。そこを改装したヘリテージハブは、単なる懐古趣味の博物館ではなく、イタリアンブランド群の「巨大な履歴書」である。過去のル・ボラン取材において、同館トップのR・ジョリート氏がここを「次代のクルマ作りへの着想源」と語っていたのが印象深い。変革期を迎えクルマの均質化が危惧される今、120年に及ぶ技術的独創性の記録は他社に真似できぬ最大の武器だ。今回の公開枠拡大は、その強固な血統を広く誇示する戦略的な一手と読める。
【画像31枚】フィアット、アルファ・ロメオから幻のプロトタイプまで。自動車史の聖地「ヘリテージハブ」に集結した名車たちを見る































