「魔の7歳」の危険性。小学生の交通事故、最大の原因は「飛び出し」
自動車業界の最重要テーマである交通安全は、自動車(四輪車や二輪車等)側だけで実現することは到底できず、自転車等の利用者や歩行者の交通ルールの遵守があって初めて実現すると考えられます。
【画像12枚】トヨタが本気で作った歩行者用ガジェット!左右確認を検知する見守りGPS『SayuU 2』がスゴイ!
そんな中、一人歩きを始めた歩行者としては初心者とも言えるこどもたち(特に小学校の低学年)の交通ルール遵守は重要で、その課題に対して世界最大の自動車メーカーでもあるトヨタが一体どのような経緯から、どんな想いを持って交通安全を支援するために「SayuU(サユー)」を開発したのか? を中心にインタビューも交えて、今回はご紹介したいと思います。
交通安全を実現するためには、交通に関わる全ての人、交通別では歩行者、自転車、二輪車、四輪車、大型車、他といった全てがきちんとルールを守り安全に努めることが必要で、コラム(自動車業界の研究)では、これまで四輪車を中心に如何に安全を実現するか? といった観点で論じてきましたが、今回は歩行者に着目したいと思います。
歩行中の年齢別死傷者数を分析すると、7歳の小学校入学の頃がピンポイントに高いという結果が出ており、一人で外を歩くという行動を始める小学校の低学年、つまり、親が同伴しないで歩き始める年頃の危険性について認識することが必要で、いかに小学校の低学年の事故を減らすために交通安全に取り組むかが、とても重要であることがわかります。
そして、小学生の歩行中の事故における原因で最も大きいのが“飛び出し”で全体の半分超を占め、やはり、「止まるところで止まる、左右を確認する」といった安全確認をしていないことが事故発生の要因であると分析できます。
実際にトヨタのSayuUチームが調査をしたところ、小学生のほとんど(N=140)が見通しの悪い交差点でも左右確認や一旦停止をしないという衝撃的な結果が出ていて、教員や安全サポーターの居る交差点は限られているため、実態を把握すれば想像していた以上の驚くべき結果であると感じます。
きっかけは教育の効率化!? トヨタ独自の視点で生まれた「SayuU」誕生秘話
小学校の低学年を中心に歩行者の交通安全を支援するために登場したトヨタのSayuUは、「つながる安心、みまもる安全」を掲げて、こどもだけでの安全なお出かけの実現に向けたデバイス&サービスで、リアルタイムにわかる位置情報や通話機能などによって、日々の見守りだけではなく、安全な行動の習慣化もお手伝い。スマホはまだ早いけれども通学や塾の連絡は今すぐ必要といったユーザーを対象にしています。
SayuUの企画者で、トヨタ自動車株式会社 新事業企画部 加藤 貴裕SayuUプロジェクトオーナーにSayuUの企画を思い立った背景やきっかけについて伺ったところ、
「2020年の社内公募に高校時代の友人3人で応募、“BE creation”制度(全社の新事業を推進/支援する仕組み)を利用しながらプロジェクトを進めてきました。実は、このプロジェクトの出発点は“教育の効率化”でした。各大学の基礎教育課程を共通化させれば、先生方はより専門性の高い講義にリソースを割けるのでは? というアイデアが発端で、課題を把握するため、初期段階で小学校から大学まで幅広くヒアリングを行いました。その際、ある小学校の先生に言われたんです。『効率化も確かに必要だけど、その前段階として、こどもがちゃんと安全に学校に着く、そして家に帰れる。そこを担保することの方が、喫緊の課題です』と、そこからチームの視点は大きくシフトしました」
「こどもの交通事故の発生状況を調査する中で、事故が最も多い“魔の7歳”と呼ばれるデータを見つけ、その主な要因は、飛び出しや横断違反でした。実際、小学校の近くで観察していると、周囲を確認せずに横断している子がたくさんいて、こんな状態で毎日登校しているのか! と驚きました。また、危険のない場所でも、こどもは足元しか見ていないため、大人の目が届かない場所でも、こどもたちが安全に行動できるようにするにはどうすればいいか?」
「そうして生まれたのが、SayuUの核となる『左右確認検知機能』でした。角速度センサーを活用し、頭や体の動きを測定して左右を見たことを検知する仕組みを導入しました。大人がこどもの行動を知ることで、親子間の安全行動の会話を増やしたいという思いで作った機能です。都市から郊外まで、交通量の違う3つの小学校に協力を仰いで実証実験を繰り返し、保護者の声を反映しながら改良を重ねました。何か判断に迷うことがあれば、お客さまの声を優先することをルールにしました。そして、保護者へのインタビューを重ねるなかで、心配ごとは交通事故だけではないことがわかりました。もしこどもが迷子になったら? 知らない人について行ってしまったら? そんな不安を解消できるよう、現在地が高頻度でわかる機能や通話・チャット機能をSayuUでは追加しました」
と述べられ、教育の効率化についての検討からSayuUの企画に至ったところは、自動車メーカーであるトヨタならではの発想だと感じました。
5児のパパ・杉浦太陽さんも共感!「SayuUは言葉と心のつながりを実現する」
2026年3月にトヨタは東京本社で「SayuU 2」の発表会を開催、タレントの杉浦 太陽さんや子役のかんなちゃん、交通心理学及び発達心理学の専門家である一般社団法人 日本自動車研究所(JARI)の大谷 亮(あきら)先生、SayuUの企画者でもあるトヨタ自動車 新事業企画部 加藤 貴裕 SayuUプロジェクトオーナーと同マーケティング担当の立川 杏奈さんも登壇、SayuU 2についての説明はもちろんのこと、子役のかんなちゃんが実際に外に出ていくといったデモンストレーションも行われました。
司会の方からの「5人のお子さんがいらっしゃる杉浦さんですが、お子さんと離れている時に不安に感じることにはどんなことがありますか?」といった質問に対して杉浦さんは、
「やはり、安全性ですね。僕ら夫婦(奥さまはタレントの辻 希美さん)は本当に心配性で上の3人の時もそうだったんですけれども、第4子の三男が一年生なので保育園から小学校に上がる時は、保育園まで親が送り迎えするのとは違った心配もあります。三男は僕が行ける時は必ず送り迎えしているんですけども、僕が今のように仕事している時に下校時間になれば、ちゃんと帰ってこられるかな? きちんと(道路を横断する時に)左右確認をしているかな? とか、そういうところはやはり心配になりますよね。もちろん、誰か悪い人に連れて行かれないかな? みたいなところも心配ですが交通の心配はかなり大きいです。そして、うちの子、三男で言うと、やっぱりすっごく学校についてきてほしいとか、帰りは迎えにきてほしいとか、パパがいないとっていう心の心配があると思うんですけども、SayuUを付けることによって、これを付けてたらパパともチャットもできるし、通話もできるし、見ていてくれてるっていう心の安心感もケアしてくれるじゃないかと。本当にそういう意味だと、こういったツールっていうのは言葉だけではなく、心のつながりも実現してくれる、これをパパと思って付けて行けってね。(三男も)わかった、ありがとう! って言いたいと思うんです」
と話されていました。
さらに大谷先生は、
「ある保険会社さんのデータを見てみますと、小学校一年生の親御さんの約8割が一人で登校することに不安を抱えておられて心配は尽きないんです。あと日本の歩行中の交通事故死傷者数で最も事故が多いのは小学一年生、いわゆる7歳です。親御さんは非常に不安を抱えていらっしゃると思いますので、なんとか一人でいる時のお子さんの行動を見える化するというのが大事な部分であるのかなと思います。お子さんが何をやっていたかを後で振り返ることによって親御さんが少しでも不安が軽減することもあるでしょうし、あと交通事故の低減のためにも、こういった(SayuUの)ように見える化をすることによって解決も可能になっていくのかなと思っていますので、SayuUによって交通事故がゼロになってほしいと思います。そして、飛び出しをどのように防ぐかというと、先ほど杉浦さんもおっしゃっておられましたけれども、やっぱり繰り返し(確認することを教えること)ですね、繰り返し繰り返し教えていくというのが大事になってくると思います」
と述べられていました。
バッテリー倍増でさらに安心!新モデル「SayuU 2」5つの注目機能
SayuU 2の交通安全に向けた具体的な機能は5つ、1つ目は「こどものSayuU 2と保護者等の携帯アプリでお互いに連絡を取れるため、親の目の届く範囲で使えること」。保護者からは自由メッセージ、こどもからは定型文が送れるためやり取りが簡単で、さらにボイスメッセージも送ることができます。また、こどもはWebサイトの閲覧が出来ない仕様になっていることも特徴です。
2つ目は「いつもと違うこどもの行動にすぐ気づけること」。あらかじめ登録したチェックポイントへこどもが到達した時や、あらかじめ登録したエリアからこどもが著しく外れた時にスマホアプリに通知が届き、また更新ボタンを押すことで、こどもの数秒前の位置を知ることもできます。
3つ目は「左右確認検知がついていること」。安全確認地点で左右確認を行ったかどうかの行動を検知、安全確認地点はトヨタ車の統計データに基づいて一時停止無視の車両が多い地点がセットされており、後で行動履歴を振り返ることもできるため、親子間で交通安全について話すきっかけとしても活用することができます(ただし、腕など左右確認動作を検知しにくい部位にSayuUを装着した場合、左右確認動作が正しく判定・記録されないこともあります)。
4つ目は「こどもが走ったかどうか? を検知できること」。走ってしまったことを検知及び記録して保護者に通知で知らせ、検知した記録を確認することで帰宅後などに、こどもが走ってしまった地点を振り返ることもでき、親子の間で安全な歩行について話すきっかけとして活用することが可能です。
5つ目は「行動を一緒に振り返れること」。前述の通り保護者がスマホアプリ上で確認した左右確認や走ってしまった地点等をもとに、こどもと一緒に振り返ることができるため、最も重要である『こどもの交通安全教育の機会』として、こどもの交通安全への意識を高めることにつなげられます。
そして、SayuU 2がSayuU 1(初代モデル)から進化した最大のポイントは、バッテリー容量が720mAhから1440mAhへ倍増、およそ毎日1回の充電が必要だったところを2日に1回の充電でも大丈夫にしたことにより、万が一こどもが帰って来ない時等の際にも対応できるように進化しています。
カラビナケース(※今後アームバンド型の付属品販売を検討中)への変更もポイントで、カラーバリエーションは5色(ブルー、パープル、ピンク、グレー、ブラック)を用意しています。また、見守り(稼働)の時間帯を曜日毎に設定できるため、こどもにSayuU 2を使わないで欲しい授業中等の時間を考慮することもできます。
SayuU 2の本体価格は1万9800円(税込)、サービス利用&通信料(定額)月々1210円(税込)、利用開始月の月額使用料は日単位の計算、例えば20日にSayuU 2端末とスマートフォンをペアリングした場合、20日から月末までの利用料金が日割りで請求され、利用月の翌月10日にクレジットカード決済が行われます。
見守るだけじゃない。親子の対話で「安全行動の習慣化」をサポート
加藤プロジェクトオーナーと共にSayuUプロジェクトをリードするトヨタ自動車 新事業企画部の福嶌 春奈 主任にSayuUをどういった方に使ってもらいたいか? を伺ったところ、「一人歩きを始めて間もないこどもの毎日の登下校が心配な保護者、スマホを持たせるのはまだ早いけど、こどもと連絡が取りたい保護者に使ってもらいたいと思います」とのこと。
続けて、嬉しいポイントや役立つポイントは? と伺うと、
「最近世の中では物騒な事件も多く、また『魔の7歳』と言われるように、小学校1~2年生の事故が大変多いという傾向が続いています。そのような親子に安心や安全をお届けするのがSayuUという見守りGPSで、大きく3つの機能があります。
まず、1つ目がこどもと今すぐ話せる通話機能です。スマホアプリと端末の間で通話できることで、こどもの声が直接聞けて安心できると思います。加えてチャットやボイスメッセージを送ることができるので、お話しできない環境でも便利に連絡を取ることができます。
2つ目が端末の現在の位置情報や移動履歴が分かるGPS機能です。自動で1分ごとに更新されることに加え、手動の更新ボタンを押すことで数秒前の位置情報が分かります。
3つ目が独自の機能で、左右確認検知、走行検知、行動の振り返り機能です。こどもは、ついつい左右確認せず飛び出したり、いきなり走り出したりしてしまいます。保護者が心配な場所を安全確認地点として登録できる機能に加え、トヨタの車両から取得したコネクティッドデータより、一時停止無視が多い場所も自動で安全確認地点として登録しています。走り出したことや安全確認地点での左右確認といった、交通安全にかかわる行動をこどもと保護者一緒に振り返る機能をご提供することで安全行動の習慣化をお手伝いします」
と述べられました。
さらに、同じくマーケティングを担当されている立川 杏奈さんに販売店でもSayuUの説明は受けられるか? やブランドショップ開設の可能性は? について伺ったところ、「現在トヨタの販売店ではSayuUの説明は実施していないのですが、今後トヨタの販売店やそれ以外の販売連携先の可能性は模索していきたいと思います」と話されました。続けて、発表会のイベントに杉浦 太陽さんを選出した理由についても伺うと、「こどもが5人いらっしゃって、日ごろから積極的に子育てに関わっている杉浦さんだからこそ、お子さんの安全安心の意識が高いと想像し、ぜひSayuUを使って頂きたいと思いイベントへの登壇をお願いしました」とのことでした。
目指すは「交通事故ゼロ」。クルマと通信でつながる、一歩先の安全対策
SayuUには、クルマを運転するドライバーへ「前方にこどもが居るよ!」と知らせる等、コネクティッド機能を活用した自動車メーカーならではの機能から将来の交通安全への可能性も期待されます。
そこで、加藤プロジェクトオーナーへSayuUについて、トヨタの誇るコネクティッド(G-LinkやT-Connect)サービスとの連携等、将来の可能性や展望について伺ったところ、
「交通事故ゼロという最終ゴールまでを考えると、将来的にはクルマや街のインフラと連携して、さらに精度の高い安全対策を実現したいと考えています。例えば、見通しの悪い交差点など、クルマ側の安全技術の進化やドライバーの注意力だけでは人の存在に気づきにくい環境があります。そのような環境で、人側やインフラ側からクルマ側に人の存在を伝えたり、リスク回避を提案したり、といった三位一体の安全機能を実現できれば、より事故を減らせるものと考えています」
「世界的にもV2X(クルマとさまざまな機器やモノを通信で接続して連携する技術)の取り組みが始まっていて、この技術は普及すればするほどできることが増え、また、その効果も大きくなるので、まずはSayuUの普及を加速し、環境が整った際にクルマやインフラと連携することで安全安心な世界を実現したいと考えています。現時点ではまだクルマには事故という負の側面がありますが、安心という正の側面を作れるように今後も製品開発を続けていきます」と、将来のこどもたちの交通安全に向けて希望が持てる話も伺えました。
クルマの枠を超える! トヨタの新規事業スキーム「BE creation」が描く未来
現在の自動車業界はCASE(Connected:コネクティッド/Autonomous:自動運転/Shared&Services:シェアサービス/Electric:電動化)によって事業領域が広がりブランドオリジナリティが問われる時代にあると言えます。その中でも安全に直結する自動運転(運転支援)においては、こどもの飛び出しといった避けようのない事故をどのように防ぐかも大きい課題であるため、そもそも飛び出しを防ぐSayuUは、その援護射撃的にとても価値が高く、さらにコネクティッド機能を活用した検知を自動車側でできるようになれば、数多くの痛ましい事故を防ぐことができると考えられます。
トヨタは“BE creation”という制度を設け、新事業創出に挑戦する中でTPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)とお客さま視点を根底に、先人の知見とトヨタの技術力や資産を活用して、事業を生み出し続けられるように“しくみ化”を進め、事業づくりを通じてお客さまにとっての価値に向き合い続け、多彩な幸せであふれる世界を実現すると提唱しています。
そのひとつが今回ご紹介したSayuUプロジェクトで、他にもDRIVE RECORDER 119(現場の状況把握が難しい119番通報で、消防指令センターのオペレーターが付近を走る車両のドライブレコーダー映像を確認できるシステム。迅速で適切な消火、救急、救助活動に役立てる)、橋梁点検支援システム(製造業の視点から生まれた橋梁点検を支援するアプリ&クラウドサービスを通して業界の垣根を越え、共に道路を未来につなぐプロジェクト)、手間なく情報を共有できるケアワーク支援システム(介護・医療・製造現場情報の「入力」「共有」「実施」「記録」を一気通貫でデジタル化した”手間なく情報を共有できるケアワーク支援システム”を提供することで、現場のDX化を加速させつつ、顧客満足度と従業員満足度の向上をサポート)といったように、それぞれが有意義で社会に貢献する様々なプロジェクトに取り組んでいます。
世界最大の自動車メーカーで日本最大の企業でもある業績堅調のトヨタが“BE creation”のように社会に貢献する新事業を推進している意義は大きく、さらには同社の誇るTPSを活用することによって、どのように優れた事業が創出されていくのか?に期待することができ、とても興味深く、同時に日常における課題を解決、改善する意識を持つことは交通安全にも通ずると考えられ、SayuUによって尊いこどもの命が守られることを願います。
【画像12枚】トヨタが本気で作った歩行者用ガジェット!左右確認を検知する見守りGPS『SayuU 2』がスゴイ!
■参考リンク
交通安全サポート『SayuU(サユー)』- 安心して「いってらっしゃい」を言える毎日へ | トヨタの新事業創出スキーム BE creation | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
https://global.toyota/newbiz/becre/sayuu/
トヨタの新事業創出スキーム BE creation | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
https://global.toyota/newbiz/becre/






















