三菱

デザインも走りも一新!【国内プロト試乗】三菱デリカD:5

全方位で著しい進化ぶり

ファミリーユースを軸に拡大してきた日本のミニバンマーケットにおいて、ミツビシ独特の「タフなアウトドア」イメージでファンを獲得し続けてきたデリカD:5に大幅改良が施された。すでに予約注文をスタートさせて、新しくなったスタイリングを露出しているが、そのプロトタイプの試乗会で走りと質感が確かめられたので、ここに報告しよう。

まず、これまでとはイメージを一新したフロントマスクに注目である。鋭い眼光のLEDヘッドライトと大型のLEDポジションランプを組み合わせた、クローム仕立ての「ダイナミックシールド」グリルは、大切な家族を守る盾のごとき頼もしさ。昼夜を問わずお好みでライトを全点灯してみれば、ミニバン食物連鎖の頂点に君臨する、アル/ヴェル兄弟にも負けないド迫力だろう。

一方、シンプルな水平基調のコクピットは、従来通りの機能性を重視したデザインながら、10.1インチ高精細HDディスプレイのカーナビは最新メモリータイプに。本革巻きステアリングも意匠変更され、木目調パネルや本縫いステッチのシートらをプラスして、従来よりも少しだけ上質感を増している。

スイッチ2度押しで電動スライドドアとテールゲートを閉じて施錠するクローズ&ロック機構も新採用。衝突被害軽減ブレーキや前車追従型クルーズコントロール、レーンチェンジアシストなど予防安全技術「e-Assist」も追加されている。

こうした内外装以上に著しく進化を遂げたのが、パワートレインとボディ&シャシー。パッケージングは現行モデルと同じでも、改良のレベルはかなり高いのだ。搭載エンジンは、排ガス中の窒素酸化物を浄化する、尿素(AdBlue)SCRシステムを採用した2.2リッター直4直噴ターボディーゼルに一本化。最高出力は145psと現行より少々ダウンしたが、最大トルクは20Nm増しの380Nmを発揮。新搭載となる8速ATと電動パワーステアリングを導入し、4WD制御を最適化したことで、現行モデルを超える走行性能と旋回性能、省燃費を実現。2トン近い巨体ながらスムーズな走り出しとリニアな加速感が味わえるようになった。なお、現行ガソリン仕様は継続販売となる。

ボディに関しては、歩行者保護性能と前突性能を向上させるべく、フロントにバンパービームを追加するとともにサイドメンバー位置を最適化。骨格形状の改善と補強によって動的剛性のボトムアップも図られているとのこと。しかも、制振材や吸音材、遮音ガラスなどの追加投入が奏功したようで、現行モデルを遥かに凌ぐ静粛性もトピックといえよう。

もうひとつのトピックは、SUVモデルに匹敵する最低地上高185mmを確保し、アプローチアングル21°、ディパーチャーアングル23°というクリアランスで他車を凌ぐ悪路走破性能を維持しているところ。しかも、エンジンのトルク増強と8速ATの1速をローギア化したことに加え、「4WDオート」「4WDロック」モードでのトラクションコントロールの作動領域とブレーキ制御量を増やしているのだ。実際に、タイヤが地面から離れてしまうようなモーグル路や急角度の登坂路でも、難しいテクを駆使することなく簡単にクリアできた。

ミツビシはこのデリカD:5のビッグマイナーチェンジを機に、子育て期間限定のミニバンから、ドライブ旅行やアウトドアスポーツ、キャンプ等を楽しむユーザー層を狙った「オールラウンドミニバン」へのシフトを図っている。

一般公道からワインディングまで、走りの流れをリードできるダイナミクス性能とウェットの悪路でもスタックしない走破性、長距離ドライブでもドライバーを疲れさせない静粛性と快適性など、全方位でプレステージ性が高められたのは確か。新しい「顔」さえ受け入れてしまえば、デリカD:5の進化ぶりはユーザーの期待を裏切ることはないはずだ。

MITSUBISHI DELICA D:5 (PROTOTYPE)
【Specification】■全長×全幅×全高=4800×1795×1875mm■ホイールベース=2850mm■車両重量=1940kg■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ディーゼルターボ/2267cc■最高出力=145ps(107kW)/3500rpm■最大トルク=380Nm/2000rpm■トランスミッション=8速AT■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク■タイヤサイズ(F:R)=225/55R18:225/55R18■車両本体価格=3,850,000~4,250,000円

フォト:小林俊樹 T.Kobayashi
萩原充

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