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【国内試乗】「メルセデス・ベンツ EQC 4マチック」独創性と先進性を纏ったピュアEVが上陸!

メルセデス・ベンツ初となる電気自動車「EQC」が日本で発売開始された。この電気自動車は、先進性だけでなく、これまでのメルセデス・ベンツの特徴である安全性、操縦安定性、快適性など高いレベルで実現しているのはいうまでもない。ただし、新時代のクルマらしく、オンラインストアのみの販売となるので悪しからず。

ずば抜けた静粛性を実現

実際のところメルセデス・ベンツ初の電気自動車、EQCのハードウェアの出来映えについては、5月に開催された国際試乗会ですでに確認していた。しかし日本導入に当たっては、販売方法や充電サービス、保証といったEV特有の気がかりな部分もあった。結論から言えば、さすがメルセデス・ベンツ日本、万全の準備が整った状態での販売開始となったと言えそうだ。そのあたりも含めてEQCについて改めて紹介していこう。

長く伸びたルーフラインがリアに向かってなだらかに下降し、低いウエストラインと結合。SUVの逞しさとクーペの流麗さを融合した丸みを帯びた独自のフォルムは静粛性にも貢献。

プラットフォームを共用するGLCとほぼ同等のサイズのボディは、GLCクーペほどではないもののルーフが低く、リアゲートも寝かされた美しいフォルムに仕立てられている。ブラックパネル化されトーチ状のイルミネーションが入れられた特徴的なフロントマスクは、EQブランドのアイデンティティとしてこの後に登場するモデルにも使われるという。

インテリアは上質でありながら、先進的なEQCモデル独特のデザインがちりばめられ、エアアウトレットやドアパネル、シートのステッチ等にもローズゴールドを採用。特性の異なるドライブモードはコンフォートがデフォルトで、そのほかにエコ、スポーツ、インディビジュアルが用意される。また、パドルシフトにより回生ブレーキの利き具合を4段階に設定可能。

このデザイン、どうやら写真よりも実車の方が好印象らしく、今回の試乗会でも「思ったよりカッコ良いね」と言っている同業者が何人もいた。筆者は個人的にはAMGラインの21インチマルチスポークアルミホイール付き、ボディ色はホワイトがお気に入りだ。

ワイドスクリーンコクピットを用いたインテリアも、パッと見は他のメルセデス・ベンツと共通の雰囲気だが、ダッシュボードからドアにかけての造形は外観に合わせてよりラウンディッシュだし、各部にリサイクル素材が使われていたり、カッパーの差し色が使われていたりと、実は見れば見るほど別物。非常に居心地の良い空間に仕上げられている。

機能面では、MBUXに目的地までの勾配状況や充電ステーションの位置、車両の充電状況や気温などから総合的にルート設定を行うEQオンラインナビゲーション、充電管理情報や充電ステーション情報などの表示といったEV専用機能が盛り込まれているのが大きな違い。音声入力機能も「近くの充電ステーションを探して」などの問いかけに対応する。また、プレエントリーエアコンディショニングも、EVならではの装備だ。

肝心なハードウェアは、ホイールベース間のフロアに頑強なフレームで守られた容量80kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、前後アクスルに各1基ずつの電気モーターを搭載する。前後合わせての最高出力は408ps、最大トルクは765Nm。気になる航続距離はWLTCモードで400㎞を実現すると謳われている。

電気自動車とは言ってもメルセデス・ベンツ。いつも通りセレクターレバーをDレンジに入れ、ブレーキをリリースすればクルマは静かに走り出す。
そう、走りはまず何より非常に静かで滑らかだ。電気自動車はどれもそうじゃない? と思われそうだが、EQCはその中でもずば抜けている。特にインバーターや電気モーターからのヒューン、キーンといった類のノイズがほとんど聞こえてこないのが印象的だ。行き届いた遮音、制振、非同期モーターの採用、低中負荷時にフロントモーターだけで走行することなどが総合的に効いているのだろう。

大容量リチウムバッテリーをフロア下に配置したことで、ラゲッジルームはフラットなフロアと広い開口部を実現。通常で500L〜最大で1460Lというゆとりの積載量を誇る。

それでも電気モーターの特性で、発進からその先の加速まで非常に力強く、レスポンスも上々。あふれんばかりの力をうまく調教して豊かなトルク感として味わわせるこの感じはメルセデス・ベンツの大排気量モデルのよう。異なるのはギアボックスがなく、その加速がシームレスに続くことだ。

前後アクスルにそれぞれ1基ずつモーターが搭載されているが、通常(低中負荷領域)はフロントのモーターのみで走行し、状況に応じてリアのモーターを稼働。前後のトルクを可変的に調整し、4輪駆動の優れたドライビング性能を発揮。システムは最高出力408ps/最大トルク765Nmを発生。 80kwのリチウムイオンバッテリーを搭載し、 WLTCモードでの航続距離は40km。

ちなみに、こうしたドライバビリティの良さは、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックの緻密で滑らかな加減速などにも効いている。一方でもちろん、全開にすれば、リアモーターも加勢しての猛烈な加速を味わうこともできる。車重があるだけに、その迫力は相当なものである。

手厚い購入サポートもさすがメルセデス

減速にはエネルギー回生を積極的に使うことができる。通常のDレンジの場合、アクセルオフでは軽めの回生が行われるが、そこから左側のパドルを1度引くと中程度の回生ブレーキが得られるDーに、さらにもう1度引くとDーーになりほとんどの場面でワンペダルドライブが可能になる。一方、Dから右側パドルを引くとD+となりコースティングが行われる。

大型ブラックパネルの上端には、左右のマルチビームLEDヘッドライトを繋ぐ、デイタイムドライビングライト光ファイバーのチューブを採用。「EQ」モデル独特の演出だ。

快適性の高さもEQCの美点だ。リアにエアスプリングを用いたサスペンションが姿勢を常にフラットに保ち、余裕あるストロークを活かして、しなやかに路面に追従する。しかもフットワークも、重心の低さや前後重量配分の良さが貢献しているのか非常に懐深い印象で、250kgという車重を忘れてしまうほど意のままにコントロールすることが可能なのである。

EQ専用に設計された20インチの10スポークアルミホイールは、シルバーとブルーの2トーンカラーを採用。

こうしたEQCの走りは、まさしくメルセデス・ベンツだと評するほかない。静かで、滑らかで、重厚な走りに、ドライバーを絶対に裏切らないドライバビリティは、まさにメルセデス・ベンツが130年以上にも渡って追求してきた境地そのもの。電動化が、それを究極に近いかたちで実現させたのが、このEQCなのだ。

このEQC、ユーザーには全国約2万1000基の充電器利用料、月額基本料を1年間無料にする「Mercedes me Charge」が用意され、さらに5年もしくは10万kmまでの修理、メンテナンス、24時間ツーリングサポートが無償となるEQケアも適用。しかも、その期間中に5回まで、車両の週末貸出サービス「シェアカー・プラス」も利用できる。

急速充電は約80分、普通充電は約13時間で充電が完了。全国約21,000基での充電サービス利用が1年間無料や、充電用のウォールユニットが無償提供されるなどの購入サポートを用意。

バッテリーは新車購入から8年もしくは16万km以内で、残容量が70%を下回った場合に特別保証が適用される。もちろん通常購入も可能だが、契約満了時の残価差額精算が不要なクローズドエンド型のリースも利用可能。こんな具合で、EVへのハードルを可能な限り低くしている。
それでも、まだ内燃エンジン車と同じ感覚で乗れるとは言えない。しかし究極のメルセデス・ベンツと呼びたくなるこの走り味を一度体験したら、生粋のファンほどそのハードル、飛び越えたくなってしまうのではないだろうか。

【Specification】MERCEDES-BENZ EQC 4MATIC/メルセデス・ベンツ EQC 4マチック
■全長×全幅×全高=4770×1925×1625mm
■ホイールベース=2875mm
■トレッド=前1625、後1615mm
■車両重量=2500kg
■バッテリー種類=リチウムイオン
■バッテリー総電力量=80kWh
■最高出力=408ps(300kw)
■最大トルク=765Nm(78.0kg-m)
■航続距離(WLTC)=400km
■サスペンション形式=前4リンク/コイル、後マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前235/50R20、後255/45R20
■車両本体価格(税込)=10,800,000円

お問い合わせ
メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610

フォト=宮門秀行/H.Miyakado ル・ボラン2019年12月号より転載
島下泰久

AUTHOR

1972年生まれ。1996年よりフリーランスとして活動。国際派モータージャーナリストとして年間20回近い海外取材を敢行し、試乗台数は年間延べ200台近くにも及ぶ。雑誌、ウェブなど幅広いメディアへ寄稿するほか、YouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」を主宰する。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)などがある。

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