走行距離が200km近くになったあたりから変化が訪れる
他方、プレミアムなクルマという視点だと気になる部分もある。スタート後、東雲から3車は首都高速に乗りアクアラインを経て、館山自動車道を走ったのだが、ご自慢のオートパイロットは率直にいって制御が荒い。機能上の不備はもちろんないのだが、交通量が多い環境だと自動のアクセル操作が大雑把で癇に障る場面が多々あった。また、テスラの中では量販仕様とはいえ、走りの質感に言及するならプレミアム度もあと一歩、というのが実際のところになる。
ちなみに、スタートから120kmほどを走破した段階の航続距離表示を順位付けするとカタログ値通り。天気を除けばEVには有利な低中速巡航が幸いしてか、モデル3は300km近くを走れると主張。一方、EQCは早くも200kmを割る表示。日帰りという前提なら少し心許ない状況になった。
しかし、結論からいえば今回の比較でEQCに不満を抱いたのはこの1点だけ。いや、EVにおける航続距離が大問題なのは筆者も承知している。だが、モデル3から乗り替えて千葉の外房を淡々と走らせるだけでもEQCの質感、クルマとしての完成度の高さはそれを忘れさせるほどだった。EV本来の魅力である静粛性や滑らかな加速には一層の洗練が加わり、ライド感はメルセデスそのもの。
「○○である前にメルセデス」という常套句は、EQCにもピッタリと当てはまる。ステアリングの操舵感に至っては、ツインモーターのEVにありがちな不自然さを払拭。適度なウェット感すら伝えるそれは、ボールナット式を採用していた往年のモデルすら彷彿とさせる出来映えだった。
さて、千葉の海岸沿いを周囲の流れに合わせつつ北上。信号が少ない郊外路、ということで3車の航続距離表示は漸進的に減っていく状況が続いた今回の比較だが、走行距離が200km近くになったあたりから変化が訪れる。それまで盤石と思われていたモデル3の減り方が、EQCやIペイスより明らかに早くなったのだ。