走行可能距離はいずれも十分に実用的
撮影の都合もあって、モデル3が2車より多少長い距離を走っていたのは事実だが、ここまで2位だったIペイスとの差はみるみるうちに縮小。海岸線に別れを告げ、内陸のアップダウンがある国道に入ると、その傾向には一層の拍車がかかる。前述のようにモデル3のバッテリー容量は非公開だが、聞くところによれば70kWh台とか。それが事実ならEQCが80kWh、Iペイスは90kWhなのでIペイスとの差が縮まっても不思議はない。また、電力制御の点でコース前半がモデル3に有利だった可能性もある。実際、ワインディングを含む内陸を経て高速道入り口に到着した段階で順位が逆転。モデル3に代わり、ついにIペイスが走行可能距離でトップに立った。
そして、EQCが“電欠”間近となった海ほたるで今回の比較は終了。モデル3とIペイスの差はさらに拡がったが、両車300km以上は走れるという結果を残した。公称スペック、前半の状況を思えばIペイスの伏兵ぶりは際立ったものといえるが、走行環境に左右されにくい電力マネージメントが最新のEVとして強い説得力を持つことは間違いない。Iペイスというと、そのクロスオーバー的なスタイリングやスポーティな走りに目がいきがちだが、実務派EVとしても十分にイケているわけだ。上質感ではEQC、EVとしての新鮮味ならモデル3の方がわかりやすいが、プレミアムなEVの選択肢としてIペイスが有力な1台であることは確かだろう。
とはいえ、今回の3車でも内燃機関のクルマに対して航続距離が十分というわけでは決してない。かつてを思えば、EQCでも悪条件下で275kmを走破したのだからEVユーザーとなる“敷居”が低くなっていることは間違いない。しかし、バッテリーの大容量化が進行するクルマ側に対応した充電網の整備は、もはや喫緊の課題だ。出先で30分以上足止めされ、それでも数十%程度しか電力を回復できない現状のままでは、せっかく高性能化したEVも宝の持ち腐れになってしまうからだ。