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ユーロNCAPが新基準を発表

走行中のクルマ同士の衝突を想定した試験を導入。 衝突後の救出性能も評価

欧州で新車の安全性能を評価するユーロNCAPが新たな評価基準の導入を発表した。なかでも注目されるのが走行中のクルマ同士の衝突を想定した「移動オフセット前面衝突試験」の導入だ。走行速度域の高い欧州では郊外路での正面衝突による死亡率が高く、それに対応する安全性の向上が求められてきた。移動オフセット試験はそういったニーズに応えたもので、50km/hで走る試験車と、同じく50km/hで走る1400kgの移動バリアを50%ずつでオフセット衝突させるというものだ。

移動オフセット試験は、50km/hで走る試験車と、50km/hで走る移動バリア車を 50%ずつでオフセット衝突させる。

トータル衝突速度は100km/hとなり、これをクリアするのはかなり難しいと思われるが、ボルボなどは正面衝突を予測して自動的に車速を落とし、乗員拘束度を高める安全機能を実用化しており、そうした機能を他社にも採用させる意図があると思われる。米国のIIHS (全米道路安全保険協会)のスモールオフセット衝突試験もかなり厳しいが、それを超える難関となる移動オフセット試験が自動車メーカーの安全性能開発にどう影響をおよぼすのか興味深いところだ。
さらに側面衝突試験では移動バリアの重さと速度を高めて衝撃度を高め、運転席側だけでなく助手席側の側面衝突試験もとり入れることで、まだ装備の少ないセンターエアバッグの保護性能もジャッジしていく考えだ。加えて衝撃度をより細かく計測できる新型ダミー 「THOR」を採用し、より現実に近い状況での評価を可能にしていくという。
予防安全性能に関してもAEB (衝突被害軽減ブレーキ)を高速域と低速域だけでなく幅広い速度で機能をチェックし、加えて運転者の監視機能、事故後の乗員の救出性能も評価。的確な救出方法を記したレスキューシートの常備や緊急通報サービス機能の評価なども加味する考えで、多岐におよぶ評価基準でのジャッジが行なわれることになる。新型コロナウイルスの流行により試験と評価を数カ月にわたって保留しているユーロNCAPだが、今夏以降には新しい評価結果が発表できるという。新基準でのジャッジがどんな結果をもたらすのか。楽しみに待つとしよう。

ルボラン2020年8月号より転載

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