マクラーレン

【国内試乗】最高出力アップとともに空力性能と軽量化も向上!「マクラーレン750S」

以前、海外試乗記(記事はこちら)をお届けしたマクラーレン750S が、国内でのデリバリーが早くも開始され、国内で試乗する機会を得ることができた。750psにアップした出力と30kgの軽量化、そして空力性能の向上はどれだけの進化をもたらしたのか?

地味ながらも実質的な進化が目覚ましい

この写真を見ているだけだと、ちょっとお化粧直ししてエンジンをパワーアップしただけの、あまり代わり映えのしないモデルチェンジと思われるかもしれない。けれども、そのステアリングを握れば、スーパースポーツカーの実質的な部分が確実に進化していることを、誰もが実感するはずだ。
過給圧の引き上げや燃料ポンプの吐出量増大によって750psへと引き上げられた最高出力の恩恵は、トップエンドにおけるパワーの盛り上がり方がより明確になったことで体感できるはず。それ以上に顕著な違いは、日常的なドライビングの範囲でもパワートレインの瞬発力が高まったように感じられる点で、スロットルペダルを踏み込めば間髪入れずに背中をグンと押し出される感覚が味わえる。おそらく、こちらは最終減速比を15%下げた効果だろう。

720Sからはデザインの大幅な変更はないものの、もちろん上方に開くディヘドラルドアは継承。まさに正常進化といえるものだ。

エンジン音は、720Sの低音中心でやや野太い音色から、中高音域主体の繊細で精緻な響きに変化している。車外騒音に関する規制が強化された影響もあって、他のスポーツカーと同じようにボリューム自体は控え目になったが、そのほうがマクラーレンのハイテクで知的なイメージにはマッチしているように思う。
マクラーレンといえば乗り心地のよさで定評があるが、750Sはこの領域でも進化を遂げていた。サスペンションの動き出しがさらにしなやかになって、ゴツゴツというタイヤからの振動をより巧みに吸収できるようになったのだ。ときに軽いピッチング方向の動きを示しながら路面のうねりをやり過ごすその乗り味は、軽やかでスムーズなもの。どんなに路面が荒れていても徹頭徹尾フラットで、ある種の重厚感さえ覚えた720Sとは方向性が大きく異なるけれど、ノーズの上下動は必ず一発で収束するので快適性は高く、サスペンションの動きとしてはむしろこちらのほうが自然と感じる向きも少なくないだろう。

走行モード切り替えはメーター左右のノブで操作可能で、画面も変更されるなどスポーツドライビングの気分を高揚させてくれる。

750Sでは、アクティブサスペンションの制御プログラムが書き換えられると同時に、油圧を蓄えるアキュムレーターのサイズも見直されたそうだが、それとともに、サスペンション・スプリングが従来のバリアブルレートからシングルレートに変更された影響が大きいのではないか。シングルレートにしたことでストローク初期の実質的なバネ定数が低くなると同時に、ストローク量にかかわらず一定の反応を示すようになったと捉えるほうが、納得しやすい。
さらにエアロダイナミクスが細部でリファインされるとともに、リアウイングの表面積を20%拡大してダウンフォースを強化。おかげで高速コーナリングやハードブレーキング時のスタビリティがさらに改善されたことは、今回の試乗に先立って臨んだエストリルサーキットでの国際試乗会で確認済み。そのコーナリングパフォーマンスは、穏やかそうに見えるスタイリングとは裏腹に、レーシングカーに匹敵するレベルにある。

搭載される4LツインターボV8ユニットは、車名の通り最高出力750ps、最大トルク800Nmを発生。0→100km/h加速は2.8秒、最高速は332km/hものパフォーマンスを誇る。

コクピット回りはアルトゥーラに準じるモディファイを受け、操作性そのものが改善されるとともに、ギアボックスをマニュアルモードに切り替える際にも操作が必要だったアクティブスイッチが消え、より一般的なオペレーションとなったことも特筆すべきだ。
以上のように、750Sはマクラーレンの歴代モデルに受け継がれてきたある種のクセが取り除かれ、より自然な感覚でドライブできるようになった。いっぽうで軽量低重心、優れた空力性能、ステアリングを通じて感じられる強烈な一体感など、マクラーレンの核心的な価値にはさらに磨きが掛けられている。その意味において、地味ながらも実質的な部分での進化が目覚ましいというのが、750Sに対する私の評価である。

リアウイングやディフューザーを改良することで、720Sよりダウンフォース量が増加するとともに、空力バランスも一層向上している。

【Specification】マクラーレン750S クーペ
■車両本体価格(税込)=39,300,000円
■全長×全幅×全高=4569×1930×1196mm
■ホイールベース=2670mm
■トレッド=前:1680、後:1629mm
■車両重量=1277kg
■エンジン型式/種類=M840T/V8DOHC32V+ツインターボ
■総排気量=3994cc
■最高出力=750ps(552kW)/7500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/5500rpm
■燃料タンク容量=72L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/35R19、後:305/30R20

問い合わせ先=マクラーレン東京TEL03-6438-1963 マクラーレン麻布TEL03-3446-0555 マクラーレン名古屋TEL052-528-5855 マクラーレン大阪TEL06-6121-8821 マクラーレン福岡TEL092-611-8899 マクラーレン広島TEL082-942-0217

フォト=茂呂幸正 ル・ボラン2024年3月号より転載

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