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【サーキット試乗】ポルシェ・タイカンがビッグマイナーチェンジ。サーキットユースに特化した「ターボGT」も追加!「ポルシェ・タイカン」

ポルシェ初のBEVモデルであるタイカンが、マイナーチェンジを受けた。全方位にアップデートされたのはもちろん、サーキット走行に特化した「ターボGT」グレードを新設定。今後はBEVでサーキットを楽しめる時代が来る!?

ポルシェのチューニング能力にはまさに脱帽!

「BEVのサーキット走行は、速いことは速いが、さほど楽しくはない」 これが私の持論だった。
重量物のバッテリーをフロア下に搭載し、極端に低い重心高を実現したことがBEVの特徴のひとつ。これは物理的なコーナリング性能を高めるには有効だが、重心が低いがゆえにロールやピッチが起きにくく、結果的にタイヤにかかる負荷の大小を把握したり荷重移動を起こしたりするのが難しくなる傾向があった。しかも、こういった姿勢変化は限界的な走行を行なう際の重要な指標だったから、それがわかりにくいBEVは、極端にいえば捉えどころのないシロモノであり、それゆえにサーキット走行を満喫しにくいというのが私なりの考えだった。

リアウイングを装着し、後席を取り払って70kgの軽量化を果たしたヴァイザッハ・パッケージ。タイヤを標準のPゼロRからPゼロ・トロフェオRSに履き替えただけで7分7秒55をニュルでマークした瞬足の持ち主だ。

しかし、最新のタイカンは、私の持論を根底から覆してしまった。
スペインのモンテブロンコ・サーキットで操ったのは、新型タイカンに追加されたターボGTというグレードを、さらにサーキット向けにチューンアップした「ターボGTウィズ・ヴァイザッハ・パッケージ」。(以下、単に「ヴァイザッハ・パッケージ」と表記)。端的にいえば911におけるGT3RSのような存在で、先ごろニュルブルクリンクで量産BEV最速となる7分7秒55をマークしたのが、まさにこのモデル。もっともハードウェア的にはターボGTとほぼ共通で、大型のリアウイングを装着するなどしてエアロダイナミクスを強化したほか、後席を取り払って70kgの軽量化を図ったことが最大の違いである。

バッテリーはニッケルの比率を高めた正極により充電の高速化を実現。容量を93.4kWhから105kWhに拡大したほか、走行抵抗の低減や回生ブレーキの強化により、従来型の467kmを上回る630kmを航続距離達成した(いずれもターボSの場合)。

それにしてもヴァイザッハ・パッケージでのサーキット走行はバツグンに楽しかった。何よりサスペンションの動き出しがスムーズなので、ドライバーが意図した荷重移動が姿勢変化にダイレクトに反映されるうえ、専用開発されたピレリPゼロRは優れたグリップ性能を実現するいっぽうで限界性能が穏やかなため、滑り出すかなり手前からスキール音を発するなどしてドライバーに警告を与えてくれる。そしてハードブレーキングではタイヤの瞬間的なロックまで許容してくれるABSがサーキット走行で強力な武器となってくれる点は、ほかのポルシェと何ら変わるところがない。

全体的に質感が高まったコクピット周り。助手席側ディスプレイはドライバーから見えないようにすることで動画の再生を可能にした。

いずれにせよ、BEVとして一般的なレイアウトを採用しながら、ここまでサーキット走行が魅力的なモデルを作り上げたポルシェの“チューニング能力”には脱帽するしかない。そして、このあくまでも「ドライバーが操ることを中心」に置いたクルマ作りこそ、ポルシェの真骨頂というべきものだ。

ターボGT専用のカーボンフレーム・シートはホールド性もバツグン。

デビュー5年目にして実施された初のマイナーチェンジではアクティブ・ライドと呼ばれるアクティブサスペンションがオプション設定されたが、これもまたコーナリング性能の向上に役立っていることは間違いない。

ターボGTにはリアシートを用意。

そして、こうした動き出しがスムーズなサスペンションが一般道での乗り心地改善に大きく貢献したことも疑う余地がないところ。前述したアクティブ・ライドハイトを装着したクーペボディのタイカン・ターボは、デビュー直後と違って足回りに突っ張ったような印象がなく、路面の凹凸が生み出すショックを穏やかに吸収してくれる。そしてコーナリングでは自然なピッチやロールを生み出し、強い安心感を与えてくれたことも特筆しておきたい。

アタックモードが新設され、右パドルを引くと10秒間に渡って163psのパワーが追加される。

今回のマイナーチェンジではモーター出力を引き上げたうえでバッテリー容量も増大。よりパワフルな走りと長い航続距離を実現した点も見逃せないポイントだ。
見ためのスペックだけでなく、ドライバーの心理状態まで踏み込んだクルマ作りこそがポルシェの真骨頂。どこぞの新興勢力とは自動車メーカーとしての格が違うと思い知らされた次第である。

軽量な鍛造製21インチホイールはターボGT専用。セラミック・コンポジット・ブレーキを装備する。

オプションのHDマトリックスライトは3万2000もの発光体を備え、世界最高峰の高解像度を実現した。

ヴァイザッハ・パッケージにのみ与えられるリアウイングは305km/h時に140kgのダウンフォースを発生する。

【SPECIFICATION】ポルシェ・タイカン ターボ
■車両本体価格(税込)=22,890,000円
■全長×全幅×全高=4962×1966×1381mm
■ホイールベース=2900mm
■トレッド=前1702、後1667mm
■車両重量=2290kg
■モーター形式/種類=─/永久磁石シンクロナスモーター
■モーター最高出力=707ps(520kW)※884ps(650kW)
■モーター最大トルク=940Nm(95.9kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=105kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=630km
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/45R20(9.0J)、後:285/40R20(11.0J)

【SPECIFICATION】ポルシェ・タイカン ターボGT ウィズ ヴァイザッハ・パッケージ
■車両本体価格(税込)=31,320,000円
■全長×全幅×全高=4968×1998×1378mm
■ホイールベース=2900mm
■トレッド(前/後)=前:1690、後:1655mm
■車両重量=2220kg
■モーター形式/種類=─/永久磁石シンクロナスモーター
■モーター最高出力=789ps(580kW)※1034ps(760kW)
■モーター最大トルク=1340Nm(136.6kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=105kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=555km
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:265/35ZR21(9.5J)、後:305/30ZR21(11.5J)

問い合わせ先=ポルシェジャパン 0120-846-911 ※ローンチコントロール使用時

フォト=ポルシェ・ジャパン ルボラン2024年6月号より転載

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