
親しみやすさが魅力の新世代VW
フォルクスワーゲンが世界戦略車と位置づけている新世代BEV(電気自動車)が、SUVスタイルのID.4だ。
エンジン車のゴルフやティグアンとは異なり、EV専用のプラットフォーム「MEB」を採用することで、全長4585mmの比較的コンパクトなサイズのボディに大容量のバッテリーを搭載するとともに、広い室内空間を実現したのが特徴である。
日本には2022年11月に上陸し、現在は52kWhのバッテリーと125kWのモーターを搭載するID.4 Liteと、77kWhのバッテリーと150kWのモーターを採用するID.4 Proの2種類をラインナップ。今回はID.4 Proをテストドライブする。

電気自動車専用のプラットフォームとなる「MEB」を採用するID.4。2770mmという、このクラスでは長めとなるホイールベースを生かして、床下に大量のバッテリーを搭載することが可能。航続距離の伸長とボディの低重心化に貢献している。
ラジエターグリルのないデザインが特徴のID.4のフロントマスク。モーターをリアアクスルに搭載するためフロントオーバーハングは短く、そのぶん長いホイールベースを確保した。おかげで室内は外から想像する以上に広く、後席は余裕で脚が組めるほど。荷室の広さも自慢のひとつで、後席使用時でも奥行きは90cm以上、後席を倒せば180cmまで拡大するから、大きな荷物もラクラク飲み込んでしまう。
コクピットは開放的で、茶色のレザレット(人工皮革)に覆われた広いダッシュボードやマイクロフリース素材を用いたシートなどが、上質な雰囲気をつくりあげている。小振りのメーターパネルはステアリングコラムと一体化され、その右にはシフト操作を行なうドライブモードセレクターが備わっている。常にドライバーから見やすい位置にあり、扱いやすいのがうれしいところだ。

水平基調でシンプルなデザインのインストルメントパネル周辺。スピードメーターとシフトセレクターはステアリングコラムに集約され、シンプルかつ機能的にまとめられている。人工皮革素材のレザレットとマイクロフリース素材を組み合わせたシートは、長いホイールベースのお陰で前後ともに居住性は抜群。
さっそくドライブモードセレクターでDレンジを選び、ブレーキペダルから足を離すと、ID.4Proはゆっくりとクリープを始める。ここで軽くアクセルペダルを踏んでやると、エンジン車のように穏やかに加速するが、これは運転のしやすさを狙ってあえてそういう味付けにしたものだ。一方で、アクセルペダルに載せた右足に力を込めれば、即座に力強く伸びのある加速が手に入る。
ドライブモードセレクターを操作してBレンジに切り替えると、走行中にアクセルペダルを戻したときの回生ブレーキが強めに効くようになるが、その塩梅が実に絶妙で、速度調整がしやすいのも快適な運転につながっている。
後輪駆動を採用するID.4 Proはハンドリングが素直で、コーナーでの動きも軽快。直進安定性も高く、街中から高速道路、さらにはワインディングロードまで、あらゆる場面で運転を楽しむことができる。床下にバッテリーを積むことで低重心化が図られ、SUV特有の大きなロールやピッチングを抑えた落ち着いた挙動も、走る楽しさをより加速させる。
新しい時代のクルマとはいえ、運転がしやすく、親しみやすいのはフォルクスワーゲンの伝統。乗れば乗るほど好きになる……ID.4はそんな性格の持ち主なのだ。
Specification
【フォルクスワーゲンID.4プロ】
■車両本体価格(税込)=¥6,488,000
■全長/全幅/全高=4585/1850/1640mm
■ホイールベース=2770mm
■トレッド(前/後)=1585/1570mm
■車両重量=2140kg
■モーター形式/種類=EBJ/交流同期電動機
■モーター最高出力=204ps(150kW)/4621-8000rpm
■モーター最大トルク=310Nm(31.6kg-m)/0-4621rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=77kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=518km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル 後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ 前/後:Vディスク/ドラム
■タイヤ(ホイール)前/後:235/50R20/255/45/R20
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