
メルセデス・ベンツが電動化戦略の次の一手、最量販モデル「GLC」をついに電動化
メルセデス・ベンツは2025年9月7日、同社の中核をなすベストセラーSUV、GLCの完全電動モデルとなる「GLC with EQ Technology」を発表した。世界中の多くの市場でブランドの最量販モデルであり続けてきたGLCの電動化は、メルセデス・ベンツの電動化戦略が新たなフェーズへと移行したことを明確に示すものだ。2026年前半の市場投入が計画されているこの新型モデルは、伝統と革新を融合させ、数多くの新技術を搭載している。
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アートワークへと昇華したフロントマスク、センシュアル・ピュリティの新たな表現
エクステリアデザインにおいて最も象徴的な変化は、ブランドの顔を再定義する照光式のラジエーターグリルだ。内燃機関(ICE)の時代には機能的な部品であったグリルは、電動化時代のアートワークへと昇華した。クロームメッキのフレームにスモークガラス調のメッシュ構造が組み合わされ、オプションで942個のポリカーボネート製ドットがアニメーションを伴って発光するハイテクピクセルグラフィックも用意される。これは、メルセデス・ベンツのデザイン言語「センシュアル・ピュリティ(Sensual Purity)」を新たなレベルに引き上げる試みである。
メルセデス史上最大99.3cm「MBUXハイパースクリーン」がもたらす没入体験
インテリアでは、デジタル体験が飛躍的な進化を遂げた。オプション設定の「MBUXハイパースクリーン」は、幅99.3cm(39.1インチ)にも達するメルセデス・ベンツ史上最大のディスプレイユニットである。これはダッシュボードのほぼ全幅を覆い、乗員を包み込むような没入感のある空間を創出する。
この巨大なスクリーンを制御するのは、AIを駆使した新開発のオペレーティングシステム「MB.OS」である。MB.OSはインフォテインメントから快適装備、充電に至るまで車両のあらゆる機能を統合制御し、ドライバーの好みや状況を学習して進化するインテリジェントなコンパニオンとして機能する。さらに、MBUXの頭脳も第4世代へと進化し、世界で初めてMicrosoftとGoogleの両社のAIを統合した車載インフォテインメントシステムとなった。これにより、音声アシスタントはより自然で複雑な対話が可能になっている。
「SKY CONTROLルーフ」と「ヴィーガンパッケージ」が示す、次世代ラグジュアリーの形
室内空間の新たなハイライトとして、「SKY CONTROLパノラマルーフ」が挙げられる。このルーフは、ガラスの透明・不透明を9つのゾーンで個別に切り替えることができ、車内に差し込む光量を自在に調整可能だ。夜間には、ガラス面に組み込まれた162個の星がアンビエントライトと連動して輝き、幻想的な雰囲気を演出する。また、メルセデス・ベンツは、オプションの「ヴィーガンパッケージ」において、世界で初めて独立機関であるThe Vegan Societyの認証を受けたヴィーガンインテリアを導入した。これは、シート表皮からカーペットに至るまで、動物由来の製品を一切使用していないことを保証するものである。
800Vシステム採用で航続距離は最大713km、充電ストレスからの解放へ
電動パワートレインは、パフォーマンスと効率を両立させるために、電動ファーストで全く新しく設計された。市場投入時にトップモデルとなる「GLC 400 4MATIC」は、360kWの最高出力を発生する全輪駆動モデルである。航続可能距離は最大で713kmに達し、エネルギー消費量は14.9〜18.8kWh/100kmと優れた効率性を誇る。これを支えるのが800Vの高電圧システムと新世代のバッテリー技術だ。DC急速充電は最大330kWに対応し、わずか22分でバッテリー残量10%から80%まで充電可能。また、10分間の充電で最大303km走行分のエネルギーを回生できるとされている。さらに、家庭用電源や電力網に電力を供給する双方向充電にも対応している。
Sクラス譲りの快適性と俊敏さ。AIRMATICとリアアクスルステアリングの威力
SUVとしての基本性能である実用性も大幅に向上した。内燃機関モデルと比較してホイールベースが84mm延長されたことで、特に後席の足元スペースは47mmも拡大し、居住性が高められている。ラゲッジスペースは570Lから最大1740Lまで拡張可能で、さらにフロントには128Lのフロントトランク(フランク)も備える。牽引能力も最大2.4トン(ブレーキ付き)を確保しており、多様なライフスタイルに対応する。
足周りには、Sクラス譲りのAIRMATICエアサスペンションと、最大4.5度の操舵角を持つリアアクスルステアリングを組み合わせた「アジリティ&コンフォートパッケージ」が用意され、卓越した乗り心地と俊敏なハンドリングを両立させている。これにより、最小回転半径は5.6m(リアアクスルステアリング使用時)へと縮小され、市街地での取り回しやすさも向上している。
この新型GLC with EQ Technologyは、メルセデス・ベンツが長年培ってきた快適性、安全性、多用途性といった価値を、最先端の電動技術とデジタル体験によって未来へと繋ぐモデルとなる。ベストセラーモデルの電動化という大きな一歩は、電動SUV市場の勢力図を塗り替える可能性を秘めていると言えるだろう。
【画像73枚】光るグリルに満天の星空ルーフ。ベストセラーSUVの電動モデル、新型「GLC」の細部を写真で見る