ニュース&トピックス

タイカン・ターボGTで悠然とアルプスを往く。ポルシェ初のEVクラブが示す「グランドツーリング」の再定義

充電時間も楽しむ新時代の「ファストトラベル」

ポルシェは、同社の電動モデルのみを対象とした世界初のクラブ「Registro Italiano E-motion(レジストロ・イタリアーノ・イーモーション)」についてのレポートを、2026年2月24日に公開した。これによれば2025年9月のある週末、131名の参加者/73台の電動ポルシェが、クラブ初のロードトリップを実施したとのことである。目的地は、ザルツブルク郊外のハンス・ペーター・ポルシェ「トラウムヴェルク」博物館。ここでは、そのロードトリップの様子をお伝えしよう。

【画像12枚】内燃機関はもう時代遅れ? 131人が楽しんだロードトリップの様子を見る!

フライングラップ・レース用車両も参加

夏の終わりの朝陽がフランチャコルタのワイン生産地の丘を穏やかな光で包み込む中、黒のタイカンGTSスポーツツーリスモがラウンドアバウトから右折し、ポルシェのブランド体験施設「フランチャコルタ・ポルシェ・エクスペリエンス・センター」へと向かっていた。このドライバーこそ、ミラノを拠点とするITスペシャリストにしてレジストロ・イタリアーノ・イーモーションの広報担当、アンドレア・シヴィエロ氏であった。

「またここに来られて素晴らしい気分です。このエクスペリエンス・センターは、私たちのクラブにとって家のようなものです。5月にここで設立憲章に署名しましたから」

この施設を出発点に、クラブ初のグループ・ロードトリップ「ポルシェE-motion、トラウムヴェルクへ行く」が開催されたのである。メンバーは初の合同トリップに家族を同伴しており、73台の車両に分乗。

その内訳は42台のタイカンと31台の全バリエーションのマカン――後輪駆動および全輪駆動モデル、SおよびターボSバージョン、さらには2台のターボGTも含まれている――であった。うち6台は、フィヨルドグリーン、シグナルイエロー、ムーンライトブルーメタリックなどの「ペイント・トゥ・サンプル」プログラムによるカスタムペイント仕上げだ。

ヴァイザッハ・パッケージを装着した2台のタイカン・ターボGTは、ポルシェ・イタリアが2025年に創設したタイム計測によるフライングラップ・レースシリーズ「ポルシェ・タイカン・ラッシュ・チャンピオンシップ」参加車両である。しかしこの日は他の電気スポーツカーのお供として、アウトバーンをオーストリアへと向かったのである。これは電気自動車のためのファーストクラスのグループイベントである。

クラブの起源はパンデミックの最中に

シヴィエロ氏はクラブ設立の経緯を次のように説明する。
「2021年のパンデミックの中、数人の初期型タイカン・オーナーたちがグループチャットを作り、車両のことやソフトウェア、イタリアでの最適な充電オプションといった話題について話し合いました。その中の一人が、現在の会長であるマッシモでした」

クラブ創設メンバーのひとり、アンドレア・シヴィエロ氏

マッシモ・ピッチンノ氏は30年以上にわたってポルシェを運転し、ポルシェ・イタリアのコミュニティに幅広い人脈を持つ。2015年に最初の電動モデルを購入して以来、最終的に2台のタイカンと1台のマカンを所有するに至った。この経験により、彼は小さなコミュニティを助けることが多かった。

「ほんの一握りの志を同じくする人々が、すぐに60人になりました。ある時、誰かが『これを完全電気自動車のポルシェクラブとして公式なものにしませんか?』と提案したのです」とシヴィエロ氏は振り返る。このアイデアはコミュニティだけでなく、ポルシェ・イタリアにも歓迎されたのである。

約250km/3時間弱のドライブの後、次の目的地は南チロル地方のブリクセンだ。気温は28度の暖かさで、青空にはふわふわとした白い雲が点在している。ガルダ湖の東にある小さな自治体・アーヴィオに近づくと、谷が狭まり、山腹に多くのカステッロ(城)の最初の姿が現れる。北へ進むと遭遇するであろう最初の渋滞を避けるため、ナビゲーションシステムは我々を並行する高速道路へと迂回させた。

昼食と充電のためにブリクセンで停車、グループが麦スープと南チロル料理を楽しんでいる間に車両たちは工業ホールの横で充電されている。73台の車両を公共の電力網に同時に接続することは不可能であるため、普段はヨーロッパのレースコースで使用される2台のポルシェ・ターボ充電用モバイルユニットが特別に設置された。

約14トンのリチウムバッテリーを搭載した各ユニットは2.1MWhのエネルギーを提供し、最大280kWの充電能力を持つ10基の急速充電ステーションに電力を供給。充電アシスタントが車両を入れ替え、すべての車が完全に充電され、再出発に備えた。

充電休憩中の交流こそクラブの醍醐味

こうした時間は参加者の一部と知り合うのに最適な時間である。多くの会話から、この旅行グループの年齢、職業、趣味が多様であることがわかる。音楽プロデューサー、IT起業家、健康飲料の製造業者、あるいは学生。

ミラノ近郊メラーテから来た学生カルロッタ・ピノーリさんは、「ドイツでは、今までの人生で一番速く走りました」と興奮気味に語る。ルガーノ出身の起業家ダヴィデ・デ・チッコさんは、妻のマリア・キアラさんと5人の子供のうち一番下の子を連れて、タイカン4Sクロスツーリスモでやって来た。エドアルドは生後わずか9ヶ月、最年少の参加者だ。

通常はレース場で使用されているターボ充電トラックがクラブをサポートした

このクラブの何がそんなに特別なのか? 「人々と私たちの間にあるエネルギーです」とマッシモ・ピッチンノ会長は語る。「メンバーの年齢は20代後半から70代半ばまで幅広く、その考え方はエネルギーに満ちており、革新や変化に対してオープンです。この態度は私たちの情熱のほんの一部に過ぎません。そして電気自動車のポルシェは、その論理的な結果なのです」

他のクラブでは、ロードトリップで良いタイムを出そうと急ぐことが多いが――「ここは違います。私たちは時間をかけ、のんびりとしたペースで走り、充電の休憩さえも楽しんでいます。今までとは違う新しいファストトラベルの形です」

その言葉通り、次の区間の出発は予定より2時間も遅れた。皆が食事と交流を楽しんだからである。この後に続くのはルートの中で最も美しい区間、南チロル北部のシュテルツィングへの旅である。標高1374mのブレンナー峠まで上り、イタリアからオーストリアへと続くアルプスの分水嶺に沿って進み、さらにドイツ国境へ。最終区間は、左にキーム湖、右にキームガウ・アルプスを望みながらドイツを短時間駆け抜ける。

トラウムヴェルクへの到着

先に述べたように、日曜日の朝の予定は、ザルツブルク近郊にあるインタラクティブな博物館、ハンス・ペーター・ポルシェ・トラウムヴェルクの訪問である。創設者フェルディナント・ポルシェの孫が、自身のプライベートコレクションを一般に公開。彼は自ら参加者を歓迎し、子供たちを抱きかかえ、喜んでセルフィーに応ずる。

ダニエレ・マッサチェーシさんは強い関心を持って周囲を見渡していた。ローマ出身のこの映画キャメラマンは、スティーブン・スピルバーグ(『ミュンヘン』)や、過去25年間で数回にわたりリドリー・スコット(『ナポレオン』『ハウス・オブ・グッチ』『ハンニバル』)などの有名監督と仕事をしてきた。彼はまた、『マトリックス レザレクションズ』『キング・アーサー』『イングリッシュ・ペイシェント』といった作品にも携わっている。

「以前はディーゼルのオフロード車に乗っていました」と彼は言う。「しかしある時、未来は電気自動車だと気付いたのです。ポルシェが変わる勇気を持ったことに感銘を受けました。そして私もその一部になりたいと思ったのです」

現在彼はマカンに乗っており、電動の718が発売されるのを待ちきれないでいる。彼は笑いながら、ある逸話を披露した。

「ローマのチネチッタ・スタジオにマカンを停めていた時のことです。リドリー・スコットがそこで『The Dog Stars』(2026年公開予定の新作、現在ポストプロダクション中)の撮影をしていました。彼は私の車を見て通り過ぎ、止まって窓から顔を出し、こう叫んだのです。『ヘイ、いい車だね!』」

ウーディネ出身のジュリオ・テデスコさん――YouTubeで120万人のフォロワーを持つゲーマー兼車系コンテンツクリエイターも同意見だ。28歳の彼は、クラブ最年少メンバーの1人であり、設立当初から参加している。彼はタイカン・ターボSを所有しているが、このロードトリップのためにポルシェ・イタリアから、ヴァイザッハ・パッケージ装着のタイカン・ターボGTを提供された。

この車はローンチコントロールを使えば2.2秒で時速0から100kmまで加速でき、最大760kW(1034ps)のオーバーブーストパワーと、時速305kmの最高速度を発揮する。「トラウムヴェルクは間違いなくハイライトでした」と彼は旅の終わりに語った。ターボGTについてはどうだろうか? 「もちろん、それもです」と彼は笑いながら付け加えた。

「しかし、ポルシェ・ファミリーの誰かに会うことほど素晴らしいことはありません。それで実感したのです。私は今までただ夢見ていただけのことを現実にしたのだということを」

【ル・ボラン編集部より】

タイカン・ターボGTがサーキットで見せる獰猛な加速や、新型電動マカンのしなやかなフットワーク。我々はついその圧倒的なスペックに目を奪われがちだ。しかし、このロードトリップにこそ新時代のポルシェの真価が宿っている。コンマ1秒を削るようなヒリヒリと感覚を求めるポルシェ使いには物足りなさを感じる道中かもしれなが、圧倒的なポテンシャルを内に秘めつつ、充電時間さえも豊かな交流の場に変える優雅さは、人生を謳歌する大人には最適だ。雑味がない電動化の系譜による、グランドツーリングの再定義である。

【画像12枚】内燃機関はもう時代遅れ? 131人が楽しんだロードトリップの様子を見る!

注目の記事
注目の記事

RANKING