希少な“革巻アート”を引き当てた、あるエンスージアストの執念
ポルシェファンが集うイベント「EXCITING PORSCHE」が2026年3月15日に横浜赤レンガ倉庫で開催された。数多くの名車が並ぶ中、鮮やかなカーマインロットのボディでひと際目を引いていたのが、鈴木克紀さんが所有する1992年式「ポルシェ911カレラRS N/GT」だ。しかもこれは、マカオのオーナーが特別注文した、世界にわずか21台しか存在しない超希少モデル。ショップに半年間も通い詰めて手に入れたという運命的な出会いと、再びサーキットを走らせたいという熱い思いに迫る。
【画像10枚】伝説の“革巻アート”。世界に21台の希少な「ポルシェ911カレラRS N/GT」を細部までチェック
大破の悲劇から一転。情熱で引き寄せた特別な「N/GT」との出会い
「17、8年くらい前にカレラ2に乗ってたんですけど、サーキットで大破させてしまったんです。そのタイミングで、N/GTっていう認識が広まる前の、RSレーシングと呼ばれていた911がクルマ屋さんの倉庫に入ってるっていう話を聞いて、見に行ったんですよ。そしたら通称“革巻アート”、アートスポーツが入れたものなのでそう呼ばれてたんですけど、これがあって内装とシリアルを見させてもらったら、間違いないなと。そこから半年ぐらい何十回か通って譲ってもらったんです」

カレラRSといえば、軽量化やエンジンなどにチューニングが施されレーストラックをそのまま走れるホモロゲーションモデルとして、911の中でも特別な存在のモデル。964型の911にも1992年にRSが追加され、その中でさらに290台のみの限定車として販売されたのが、ポルシェ911カレラRS N/GTだった。3.6L水平対向6気筒エンジンを搭載し、強化された駆動系やさらなるボディの軽量化、ロールケージの装着など、よりレーシーな装備が与えられたモデルとなっていた。
世界にわずか21台。マカオの富豪が特別注文した限定仕様の素性
鈴木克紀さんが所有する1992年式ポルシェ911カレラRS N/GTは、N/GTの中でもさらに特別な1台となっている。290台の限定販売だったN/GTだが、その中の21台をマカオのオーナーが、全てカラー違いで特別注文。カラーだけでなく、ステアリングやカーペット、トリミング加工されたレザー巻のロールケージなどが装備されたモデルとなっていた。鈴木さんによると、現在手元にあるN/GTは、大阪のアートスポーツが21台中20台を輸入して販売した中の1台なのだという。

購入時点ではホコリをかぶりタイヤにエアもなく、カーボンのボンネットやリアウィングが付いていた状態。そのため購入後にアルミ製のボンネットを手に入れ、カーマインロットのボディカラーをオールペンするなどの作業をしたそうだが、エンジン自体には手を入れていないという。変更された部分は基本的にポルシェの純正パーツが使用されており、ホイールに関しては3.6のターボ用(18インチ)を流用。このホイールはリアのみオフセットの関係でオイルの配管があたってしまうため、スペーサーをセットしているという。
「傷めばまた戻せばいい」希少車だからこそ、本来の居場所であるサーキットへ
鈴木さんにとって大破したカレラ2からの買い替えとなったわけだが、RS N/GTに乗り換えた当時の印象はどうだったのだろか。
「圧倒的な速さみたいなものはないとは思うんですけど、ボディ剛性が高いっていうのは、やっぱり違いますね。その恩恵で、サスペンションもよく動いてくれるんです。カレラのRSベーシックと同じサスペンションが装着されているんですけど、硬いって言われてるRSに対して、しなやかによく動く印象を受けるんで、たぶん剛性が出てる分、足がこう綺麗に動いてくれるんでしょうね」

購入してから15年以上となるが、ここ最近では燃料の配管を全てやりなおし、ミッションのオーバーホールなどを行ったため不安な場所はないとのこと。今後のアップデートの予定などはあるのだろうか。
「サーキットが志半ばで、チェッカーを跨いでいないので。サーキットっていう本来走るべき場所だったところで、動かしてみたいなっていうのはありますね。自分の腕を上げて、クルマと一体感が味わえるような。大事にされてきたオリジナルペイントのクルマだったら、相場も高くなってしまった今では気兼ねなく乗るのも難しかったと思うんですけど、ベースがボロだったんでそれをポジティブに考えて、距離が伸びるってことも気にせずに走っています。まあ、傷めばまた戻せばいいんで」
【画像10枚】伝説の“革巻アート”。世界に21台の希少な「ポルシェ911カレラRS N/GT」を細部までチェック