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【先行試乗】「CVT嫌い」にこそ薦めたい。ホンダ新型「シビック e:HEV RS」が魅せる仮想有段の痛快スポーツ体験

ホンダ シビック e:HEV RS
ホンダ シビック e:HEV RS:アクセサリー装着車

「ハイブリッド=静粛・燃費」という固定観念を、ホンダが自ら打ち砕く

ホンダ・シビックに、ハイブリッドの新たな可能性を切り拓く「e:HEV RS」が加わった。2024年に登場し話題を呼んだMT仕様の「RS」に対し、本作は新技術「Honda S+Shift」を搭載した、AT派待望のスポーティモデルだ。仮想の有段変速がもたらす加速のリズムと、専用チューンの足まわりが生む盤石の接地感は、従来のCVTに対するネガティブな先入観を鮮やかに覆す。電動化時代のスポーツカーが提示する、新たな「操る喜び」の本質に迫る。

【画像51枚】ブラックアウトされた精悍な専用加飾と、走りを予感させる赤ステッチ。「シビック e:HEV RS」のスポーティなディテールをすべて見る

11代目シビックに加わった「ATで楽しむRS」という選択肢

デビューは1972年と、ホンダの乗用車のなかで最も長い歴史を重ねているのがシビック。2021年に発売された現行型で11代目を数える。2024年のマイナーチェンジのタイミングで追加されたのが、6速MTと足まわりに専用チューニングを施した「RS」。タイプRほどのパフォーマンスは必要としないが、デイリーユースに適したスポーティなモデルが欲しいというニーズに合致し、ヒットモデルとなっている。

いまの時代にあって、RSが欲しいけれどトランスミッションはATがいいというニーズがあるのも想像に難くなく、それに応えるかたちでこのたび追加されるのが「シビックe:HEV RS」だ。

エクステリアではヘッドライトリングやガーニッシュ、ホイールなどをブラック仕様とし精悍なイメージに。ボディの前後にはRSエンブレムが配されている。インテリアではプレリュード譲りのステアリングをはじめ、シートやドアに赤いステッチを用いるなどといった変更が加えられた。

プレリュード譲りの新兵器。「Honda S+Shift」は単なる擬似変速ではない

車名にあるようにベースはe:HEV、いわゆるハイブリッド。これにプレリュードに採用された「Honda S+Shift」にシビック専用のチューニングを施して組み合わせている。

あらためて「Honda S+Shift」とは、ハイブリッドシステムのなかに仮想の有段トランスミッションを構築するパワーユニット制御技術のこと。加速時のみならず減速時を含む全領域でエンジン回転数と駆動力を段階的に変化させ、本来は無段階変速のCVTに有段トランスミッションさながらの変速ショックとエンジン音を意図的につくりだすことでドライバーはリズミカルな操作感を味わえるというもの。ダウンシフト時にはブリッピングも行ってくれる。

またドライバーの操作、車両前後G、横G、勾配情報など走行状況に応じてダウンシフトの早期化やシフトホールドなどを自動的に判断。これらにより、旋回中の加速でもエンジン回転数を高く維持し、コーナー脱出時に優れた加速応答性を発揮するスポーツアクティブ制御なども行ってくれる。

新開発タイヤと剛性アップの相乗効果が生む、盤石の安定性

シャシーまわりでは、剛性を高めたスプリングやスタビライザー、トーションバー、そして新開発のタイヤ(グッドイヤーEAGLE F1 ASYMMETRIC 6)を組み合わせることでガソリン版RSと同等の操舵応答性を達成。また専用の高性能ダンパー、前後のコンプライアンスブッシュの剛性をあげることでガソリン版RSを凌ぐ接地感、安定感を実現している。

ドライブモードは「ECON」、「NORMAL」、「SPORT」、「INDIVIDUAL」の4種類。どのモードからでもセンターコンソールに配置された「Honda S+Shift」スイッチを押せば「SPORT」+「Honda S+Shift」オンの設定に切り替わる仕組みだ。ちなみに「INDIVIDUAL」ではパワートレイン、ステアリング、エンジンサウンド、メーターを個別にチョイスできるが、パワートレインを「SPORT」にしておけば、「INDIVIDUAL」モードでも「Honda S+Shift」の選択が可能となっている。

RSに乗る前にベースの「e:HEV」をチェック。日常ユースには十二分なスポーツ性能

今回はまだ発表前の先行試乗会ということもあり、クローズドコースでのテストドライブだった。まずはベースとなるe:HEVに試乗する。発電用の2L直列4気筒エンジンを搭載し、基本的にはモーターで走るシリーズハイブリッドだ。エンジンの最高出力は141ps、最大トルクは182Nm、駆動用モーターの最高出力は184ps、最大トルクは315Nm。商品説明の場でRSの詳細スペックについては言及されなかったが、おそらくこれを踏襲する。

実はこのベースモデルでもシャシー性能やスポーツ性能に大きな不満はない、というかシャシーの完成度は高く、バランスのよいモデルという印象だ。操舵フィールは軽快だけれど接地感もあって、コーナリング時もニュートラルな挙動で気持ちよく曲がる。「ECON」、「NORMAL」モードなら静かで快適。元気よく走りたいなら「SPORT」モードを選ぶと、エンジン音をスピーカーで増幅する「アクティブサウンドコントロール」が機能し、CVTもステップ変速してくれるし、パドル操作で減速セレクターを作動させると、まるでシフトダウンしたかのような感覚が味わえる。

急な登り坂をアクセル全開でというクローズドコースならではの意地悪なシチュエーションではさすがにCVTっぽいラバーバンドフィールを感じる場面もあったけれど、おそらく日常シーンで不満に感じることはないはずだ。

もはや「疑似」の域を超えた。e:HEV RSは極上のエンターテインメント

そして「e:HEV RS」に乗り換える。足まわりはベースモデルと比べるとより引き締まった印象を受ける。「ECON」や「NORMAL」モードの印象はそれほど変わらない。しかし、ひとたび「SPORT」+「Honda S+Shift」の設定にし、アクセルペダルに力を込めると状況は一変する。

聞けば「アクティブサウンドコントロール」は、ベースモデルが2スピーカーなのに対して、左右だけでなく前後に追加し4スピーカー仕様になっているという。エンジンの回転数に応じてダウンシフトを行うとブリッピングサウンドが鳴り響く。「Honda S+Shift」の切れ味の鋭い変速は、言われなければこれがCVTだと気づかないはずだ。これらが疑似体験だとわかっていてもドライブしていて気持ちがいいし楽しい。まさにエンターテインメントだ。

実はいまシビックの国内販売で半数以上を占めているのがタイプR。ガソリンRSと足すと約8割にもなるというから、いかにe:HEVが認知されていないかがよくわかる。「Honda S+Shift」を得て、e:HEVはさらに魅力的になった。CVT嫌いの人もとにかく論より証拠、試乗してみることをオススメする。

【画像51枚】ブラックアウトされた精悍な専用加飾と、走りを予感させる赤ステッチ。「シビック e:HEV RS」のスポーティなディテールをすべて見る

フォト=宮門秀行/H.Miyakado

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